約定力という言葉を聞くことはあってもトレーダーにとってどのようなメリットやデメリットがあるのか、どんな仕組みで約定力が決まるのか、約定力はどの程度FX会社選びのポイントになるのかなど、意外にわからないことも多いかもしれません。本記事ではトレーダー目線でFXトレードの約定力について詳しく解説します。
そもそも約定力とは?
トレーダーが注文した価格で取引を成立させる力。つまりオーダーを出してからそのオーダーが約定するまでの時間(約定スピード)や、そのオーダーがどのくらい正確に約定するか(約定率)ということです。
約定力が高ければ、クリックとほぼ同時にオーダーが約定されますが、約定力が低ければクリックしてから約定するまでに数秒から数十秒かかることもあるでしょう。実は約定力はFX会社によってさまざまで、トレーダーにとってストレスなく取引するためには約定力の高さが非常に重要です。
約定スピードとは?
約定スピードとは、トレーダーが決済のオーダーを出してから実際に決済が終わるまでの時間をいいます。約定スピードが早ければ早いほど、トレーダーがマウスをクリックした場所で決済が行われるためストレスなくトレードすることができます。また約定スピードにはFX会社側だけでなく、トレーダー側のトレード環境も重要な要素です。
特に複数のモニターでいくつものソフトを同時に立ち上げてトレードしているような環境ではコンピューターに十分なスペックと安定したネットワーク環境が必須です。
約定率とは?
オーダーの通りやすさやどのくらい正確に約定するのかを示す割合で、約定率が高ければ高いほどトレーダーは安心してトレードすることができます。例えばFX会社が100回のオーダーのうち90回を注文通りに約定した場合は、約定率が90%となります。高い約定率を提供するためにはFX会社は高いスペックと容量を持つサーバーなど十分な設備が必要です。
十分なリクイディティープロバイダー
FX会社が高い約定力を維持するためには、サーバーなどの設備のみならず、FX会社に為替レートを提供する金融機関が必要です。FX会社は複数のリクイディティープロバイダーから提供される為替レートからもっともスプレッドが小さくなるペアを選んで顧客に提供しています。
約定力と通貨ペア
約定力はすべての通貨ペアに対して一定ではありません。ドル円やユーロドル、ポンドドル、豪ドルドルのようなメジャーな通貨ペアで通常時であれば問題ありませんが、南アフリカランド円やトルコリラ円、ドルメキシコペソなどのマイナー通貨ペアの場合は通常時でも市場の流動性(取引量)が低いため、FX会社の約定能力に関わらず、約定に時間がかかったり、約定が拒否される場合があります。
特にスキャルピングのような極短時間のトレードはマイナー通貨ペアを避け、主要通貨同士の通貨ペアを選ぶことでストレスなくトレードすることができるでしょう。
約定力が変化する?
主要通貨同士の通貨ペアであっても約定しづらい場合があります。例えば月曜日の市場オープン直後や土曜日の朝の市場クローズ間近、クリスマス、年末年始などは市場に参加者が非常に少ないこともあり、いつもより約定に時間がかかることがあります。またアメリカの雇用統計やFOMCなどの重要な経済指標の発表直前や直後も一時的に約定力が下がることがあります。トレーダーは思った場所で約定しない可能性のある時間帯の前にポジションを決済するか、新しいポジションは建てないなどの対応が必要です。
FXにはなぜ約定力の高さが重要か?
約定力が高いということは、思った場所に新規や決済のオーダーが入るということです。エントリ―したのになかなかオーダーが入らず、約定した場所が想定した場所から10pipsも離れていたらトレーダーは大きなストレスを感じるでしょう。スキャルピングでは2pipsずれただけでも入った瞬間に損切りになってしまうことさえあり、ポジションの決済注文に時間がかかってしまう場合は、利益が減ってしまったり、損失が増えてしまうこともあるので、トレーダーの判断と同時にいかに早くそのオーダーが約定してくれるかがトレードの成績を左右することになります。
約定力が高いことのメリット
約定力が高いことのメリットは以下のようになります。
- ストレスが少ない
- スプレッドが狭くできる
- スリッページが少ない
ストレスが少ない
特にスキャルピングではサクサクとオーダーが通ることが絶対条件です。デイトレードでも約定に3秒かかったら、その3秒はとても長く感じるものです。トレーダーにとって思った通りの場所と瞬時にオーダーが約定することは冷静なメンタルを維持する上でも非常に重要な要素です。
スプレッドが狭くできる
約定力が高いということは、オーダーを処理するサーバーや環境に十分なパフォーマンスがあるということです。さまざまなオーダーを瞬時に処理できる約定力があることで、FX会社は顧客に狭いスプレッドを提供することが可能となり、トレーダーはその恩恵を受けられます。
スリッページが少ない
スリッページとはオーダーがトレーダーの意図したところからずれて(スリップ)約定することを言います。ポジションクローズの場合に利益が少なくなったり損失が大きくなる方向に約定がスリップするようでは安心してトレードはできません。トレーダーの思った場所で瞬時に約定するような環境を提供している会社を選ぶことが重要です。
約定力が高いFX業者を選ぶポイント
約定力が高いFX会社を選ぶポイントで重要な点は以下の二つです。
1 DD方式 or NDD方式?
FX会社にはDD方式とNDD方式の2種類があります。
DD方式とは?
DDとはDealing Desk(ディーリングデスク)の略で顧客のオーダーをFX会社が一旦受け取る方式。国内FX会社のほとんどがDD方式を採用しています。顧客から受け取ったオーダーを市場に流すか流さないかはFX会社が判断します。したがってDD方式では顧客とFX会社の相対取引になり、顧客のオーダーを市場に流さずFX会社が受け取ったまま顧客が損をすればFX会社の利益になります。
顧客からのオーダーを市場に通さずFX会社が受け取るだけなので、スプレッドはFX会社が自由に設定できるため非常に狭いスプレッドを顧客に提供できます。
顧客のオーダーを市場に通さなければ、顧客の利益はFX会社の損失、逆に顧客の損失はFX会社の利益となるため、FX会社が為替レートを操作して顧客のストップを取ったり(ストップ狩り)利益確定の約定が不利な方向にスリップするなど、顧客にとって不透明で不利な取引環境の心配があります。
NDD方式とは?
NDDとはNone Dealing Desk(ノンディーリングデスク)の略で顧客のオーダーはすべて市場に通す方式。多くの海外FX会社がNDD方式を採用しています。顧客と市場の間にFX会社の判断が一切介入しないので非常に透明度の高い取引が可能です。NDD方式の場合、FX会社はスプレッドや手数料で利益を得るシステムなので、顧客の損失がFX会社の利益になることはなく、顧客の取引量が多ければ多いほどFX会社は利益を得ることができます。
1 透明度の高い取引環境と高い約定力です。
2 顧客の利益とFX会社の利益が相反しないので安心して取引できます。
すべての顧客のオーダーを市場に通すため、その時のリクイディティープロバイダーから提供される為替レートのもっとも顧客に有利なレートを提供したとしても、DD方式のFX会社にくらべると多少スプレッドが広い傾向があります。
2 スキャルピングに制限があるか
DD方式の会社に多くはスキャルピングを制限している会社があります。短時間の大量のオーダーをDD方式では処理しきれないためと言われています。また、取引用のサーバーやシステムが弱い会社もスキャルピングを制限する傾向があります。十分なサーバーの処理能力やシステムの安定性があり、NDD方式を採用していれば、顧客の取引はスムーズに市場に流れるため、スキャルピングを制限する必要がなく、NDD方式なら顧客が多くの取引をすればするほどFX会社も利益が得られるという顧客とFX会社がWIN-WINの関係になります。したがってスキャルピングに制限のない会社は約定力に自信を持っている会社と言えます。
約定力の高さ=NDD方式
トレーダーにとって透明性のある取引環境と高い約定力は狭いスプレッドよりも重要です。プロトレーダーや大口トレーダーはNDD方式のFX会社を選ぶ傾向があることからもその重要性がわかります。
まとめ
FX会社を選ぶ基準はいくつもありますが、その中でも約定力の高さや取引の透明性の高さは重要なFX会社の選択基準であることが分かったと思います。約定力の高い安定した取引環境を提供している会社はそれだけでトレーダーにとって十分なサービスを提供してくれています。ストレスのない取引環境で安心してトレードできるFX会社を選ぶことは、FXで良い成績を安定して出すことへの必須条件です。