日銀が長期金利を引き上げ、米PCEコア価格指数は減速継続

FXマーケットニュース2022年12月26日
目次

概要

  • 日銀が長期金利の上限と下限を従来の0.25%程度から0.5%程度に拡大
  • 黒田日銀総裁「市場機能を改善し、緩和効果をより円滑に波及させることが狙い」、「利上げや金融引き締めではない」
  • 日銀の決定を受け、ドル円は137円台前半から133円台前半まで急落
  • 市場関係者「市場のボラティリティーはますます高まるだろう」
  • FRBが物価動向の目安とするコアPCE価格指数は11月も減速
  • パウエルFRB議長「インフレ率が持続的な形で鈍化していると確信するまで利下げを検討することはない」
  • デギンドスECB副総裁「ECBは0.5ポイントずつの利上げを継続する」
  • 11月のインフレ率はECBの目標である2%の5倍となる約10%

日銀が長期金利の許容上限を0.5%に引き上げ

日銀がイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)で0%程度に誘導している長期金利(10年国債金利)の上限と下限を従来の0.25%程度から0.5%程度に拡大しました。長短金利の誘導水準や上場投資信託(ETF)などの資産買い入れ方針は維持したものの、市場にとって非常に大きなサプライズとなりました。

黒田総裁は記者会見で、今回の決定について「市場機能を改善し、緩和効果をより円滑に波及させることが狙い」と説明しています。さらに、「利上げや金融引き締めではない」と繰り返し述べました。とはいえ、これまでは「変動許容幅の拡大は事実上の利上げであり、緩和効果を阻害する」と発言していただけに、矛盾した発言ともとらえられそうです。

市場関係者は「日銀が何と呼ぼうとこれは出口への一歩だ」との見解を示しました。加えて、「2023年の利上げの可能性も出てくる」と指摘しています。さらに、「今日の決定は大きなサプライズであり、改めて日銀の市場とのコミュニケーションの改善の必要性を感じさせる」との見方を示しました。

日銀の決定を受けて円買いが活発になり、ドル円は137円台前半から133円台前半まで一気に4円程度急落して4カ月ぶりの安値を付けています。市場関係者は「長期金利の変動幅拡大が日銀の正常化の手法だとすれば、YCCは実質的な撤廃に近づいていることになる」と指摘しました。加えて、「市場のボラティリティーはますます高まるだろう」との見解を示しています。

米PCEコア価格指数は11月も減速継続

FRBが物価動向の目安とする、食品とエネルギーを除くコアPCE(個人消費支出)価格指数は、11月も減速を見せました。さらに支出も伸び悩んでいます。今回の結果は、これまでの利上げが物価上昇圧力と需要の両方を抑制するのに寄与していると言えそうです。

コアPCE価格指数の市場予想は前月比0.2%上昇、結果も0.2%上昇となり、市場予想と結果は同じになっています。ただし、3カ月連続で減速しています。11月の食品とエネルギーを除いたコアCPIも前月比ベースで見て、過去1年余りで最も低い伸びにとどまっており、コアPCEと共に物価圧力の緩和とインフレの頭打ちを示唆していると言えるでしょう。

とはいえ、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は連邦公開市場委員会(FOMC)会合後の記者会見で、「インフレ率が持続的な形で鈍化していると確信するまで利下げを検討することはない」と述べています。加えて、「それにはしばらくかかる」との見解を示しました。

FRBはインフレ率を最終的に2%まで低下させることを目指していて、パウエル議長の発言を考慮すると、インフレが収まっているように見えたとしても、利下げを期待することは時期尚早なのかもしれません。コアPCE価格指数は前年同月比では4.7%上昇しており、FRBは来年末までに3.5%前後に低下すると予想しています。

市場関係者は「力強い賃金収入と実質所得は、労働市場がまだ意味ある形で落ち着いていないことを示唆する。この統計を受けて、フェデラルファンド(FF)金利が最終的に5%を超えるとの見解を金融当局が撤回する可能性は低い」との見方を示しました。

デギンドスECB副総裁「0.5ポイントずつの利上げ続ける」

欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁が「ECBは0.5ポイントずつの利上げを継続する」とのタカ派的な見通しを示しました。デギンドス副総裁は「ECBはユーロ圏のインフレ率が2%の目標に向け低下していることを予測が示すまで利上げを続ける」とし、「これまでに取った措置はこの目標達成に十分ではない」との見解を示しています。

ECBは12月の利上げ幅を0.5ポイントとし、2回連続の0.75ポイントからペースを緩めましたが、ラガルド総裁も「0.5ポイントのペースが一定期間続くことを見込むべきだ」としており、タカ派的な姿勢を見せていました。インフレ率は11月に1年半ぶりに低下したものの、ECBの目標である2%の5倍となる約10%となっています。

FXマーケットニュース2022年12月26日

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