FX用語でコツコツドカンという言葉を聞いたことのある人は多いでしょう。そしてコツコツドカンを何度も体験した人もいると思います。本記事ではコツコツドカンとはなぜ起こるのか、その真実の姿と根本的な対策について詳しく解説します。
コツコツドカンのメカニズム
まずはコツコツドカンのメカニズムから見ていきましょう。
コツコツドカンとは?
初心者に多く見られますが、上級者も気を抜くといつでもドカン負けをしてしまう可能性があります。
コツコツドカンが起きる原因とは?
コツコツドカンが起きる原因はいくつか考えられます。
- トレードルールを守らない
- エントリーの根拠があいまい
- 損切りが遅い、損切りをしない
- 含み損が大きくなりすぎて損切りできずに放置
確かにこれらは大きな損失を出す原因です。ほとんどのトレーダーはそれを自覚しているにもかかわらず、それでもドカン負けをしてしまうのはなぜでしょう?
上に書かれたような原因はドカン負けの根本的な原因ではなく、ドカン負けの本当の原因、根本的な原因は別にあるからです。
コツコツ利食いはなぜ起きる?
コツコツドカンはコツコツとドカン、つまり、小さな利食いと大きな損切りから成り立っています。ドカンの前に、まずコツコツを見ていきましょう。
小さな利食いを積み重ねることは悪いことではありません。もしそれをずっと積み重ねられるなら、十分に効果的なコツコツと言えるでしょう。しかし、コツコツ利食いの根拠がなく、せっかくの含み益を減らしたくない、という感情によって小さな利食いを繰り返しているとしたら、それは大きな問題です。
なぜなら、ただ損をしたくない、含み益を減らしたくないというだけの理由で利益を確定させているトレーダーは、含み損になったときに含み損は受け入れられない、少しでもプラスになったところで逃げたいと考え損切りに躊躇したり無計画にナンピンをする傾向があります。これが結果的に大きなドカン負けに繋がる一つの原因です。
したがって、コツコツ利食いを根拠なく感情的にするトレーダーは、どこかで必ずドカン損切りをする潜在的な要因をすでに持っていることになります。それは「損をしたくない」という強い感情とも言えます。
よくあるドカン負けパターン
ドカン負けにはいくつかのパターンがあります。それぞれ見ていきましょう。
連勝中
今週は一度も負けていない、今月は1日も負けていないなどの連勝記録を意識しているときは損切りに躊躇しがちです。なぜなら、1回でも損切りすることでその連勝記録が途絶えてしまうからです。ついつい損切りオーダーを入れないでトレードしたり、損切位置を非常に遠くに置いてエントリーしたりすることでドカン負けに繋がります。
無計画なトレードをする
レンジ相場や値幅のない閑散相場をずっと見ていると、今日は1回もトレードしていないから・・・と、まったくトレードチャンスがないにもかかわらずトレードしてみたくなってエントリ―したりします。もし、そういうポジションが含み損になったりすると、それほど真剣にトレードしているわけでもないので、軽い気持ちでナンピンしたり、他の通貨ペアにエントリ―して相殺しようとしたりと、普段はしないようなトレードをすることで、どんどん深みにはまって知らないうちにブレーキが効かなくなり、気が付いたら大きな含み損になっていた、というパターンです。
ナンピンで難を逃れたことがある
大きな含み損を抱えた時に無計画にナンピンして、そのナンピンのおかげでなんとか含み損から逃げることができた、という経験がある人は、また同じことをやる可能性があります。次もナンピンで逃げられるかもしれませんが、逃げられないかもしれません。そして逃げられない時は大損失を出す時です。
経済指標トレードで大儲けしたことがある
米国の雇用統計やFOMC、主要国の政策金利の発表など、相場が大きく速く動くときに飛び乗って大きな利益を出した経験のある人も、また次の重要な経済指標で同じ飛び乗りトレードをしがちです。また大きな利益になるかもしれませんが、大きな損失を出す可能性も十分あります。事前に計画していない反射的なトレードは損切りができず、大損失を出す可能性が大いにあります。
ドカン負けの本当の姿
ドカン負けはルールを破った時に起きます。そしてほとんどのトレーダーはそれを自覚しています。それでも損切りができなくなってしまう精神状態になるのです。そしてその根本的な原因は「自分はこのトレードで勝てる」という強い感情と思考です。
エントリ―をしたときに、「自分は勝てる」と思ってエントリ―をするトレーダーほど、損切りができなくなります。損切りとは自分の否定に繋がるからです。この「勝てると思ってエントリ―する」気持ちが、ドカン負けに直結しています。ルールの無視や損切りが遅れるのは結果であり、根本的な原因ではありません。
コツコツドカンを回避するトレーダーのメンタルとは?
ではコツコツドカンを克服したトレーダーはどのようなメンタルや思考でエントリ―しているのでしょうか?
具体例をあげてみましょう。
- このトレードは勝つかもしれないし、負けるかもしれない
- 勝つ確率は6割~7割程度はありそうだ
- 長期的な資金計画から外れないように資金管理を第一優先
- この1回のトレードに勝っても負けても、この先ずっと勝ったり負けたりが続くので、感情移入しないでルールにしたがって淡々とトレードすることを心がける
- 損切りは「負け」ではなく、適切な資金管理上の正しい判断と行動だ
いかがでしょうか。
勝てると思ってエントリ―したトレーダーは勝てると思っているばかりに、その1回のトレードに勝つまで損切りができないメンタルになってしまうのに比べて、コツコツドカンを克服したトレーダーは、1回1回のトレードに対して感情移入していません。
またどれだけ優位な位置でエントリ―したとしても、そのトレードで100%勝てるとは思っていなく、損切りになる可能性を必ず考えています。
コツコツドカンの対策とは?
コツコツドカンの対策はルール面とメンタル面の2つがあります。
コツコツドカン対策ルール
コツコツドカン対策として以下のようなルールを作ります。
- リスクリワードの見直し(1回のトレードでリスクリワードが1:1よりも悪い場合はエントリ―しない)
- エントリーと同時にストップを入れ、絶対に動かさない
- 飛び乗りエントリーはしない
- 無計画なナンピンはしない
- 2回連続で損切りしたら1時間は休む
- ロスリミット*を決める
- 根拠の薄いエントリ―をしない
- 資金計画を作り、長期的な視点を忘れない
*ロスリミットとは1回のトレードで許容できる損失額や1日に許容できる損失額などを事前に決めておくこと。損失額が決めた額に達したら一旦トレードを止めます。
このようなルールを作り、守ることでドカン負けを回避できます。ただし、次のような心の声が誘惑してくることがよくあります。
・すごいチャンスだから今回だけは特別にルールは無視しよう
・誰に叱られるわけでもないから、今回だけはルールよりも自分の直感を信じてみよう
・ロスリミットに到達したけどもう1回だけトレードして少しでも挽回しよう
・あと1回、もう1回・・・
トレーダーはこの誘惑に勝てなければいくらルールを作っても無駄なことで、お金が無くなるまで損切りトレードを繰り返すことになります。ではどうしたら誘惑に負けずルールを守れるメンタルになれるのでしょうか?
コツコツドカンを回避するメンタル
コツコツドカンに繋がるメンタルは「勝ちたい」とか「勝てる」という強い感情と思い込みです。したがってエントリ―の際はこういう感情や思い込みを最初から排除することが有効です。
損切りを受け入れる
勝率90%のトレーダーでも、10回に1回は損切りします。そしてその1回の損切りが9回の利食いを上回ってしまわないようにコントロールすれば、利益は残り資金は増えていきます。この単純な理論を理解し、エントリ―する度に自分に言い聞かせましょう。勝率9割のトレーダーでも10回に1回は損切りするので、勝率6割や7割のトレーダーは10回トレードすれば3回や4回の損切りは当たり前です。そしてその当たり前の損切りをどれだけ小さくできるかが、資金を増やすキーポイントだということを忘れないようにしましょう。
「勝てる!」と思ってエントリ―するのではなく、このトレードは「損切りになる確率がいくらかはある」と考え、そしてそれは「当たり前だ」と受け入れてからエントリ―することです。
長期的視野を忘れない
コツコツドカンは目の前の損得に一喜一憂して長期的な視点を見失ってしまうことも原因の一つなので、長期的な資金計画を立てて、いつでも見えるところに貼っておくのも良いでしょう。
ポジションを保有している間はついつい感情移入して熱くなってしまい、そのトレードに執着してしまいがちです。FXで利益を出すためにトレードは何か月も何年も続き、その間は勝ったり負けたりしながら、資金を増やしていく、という視点を忘れないようにしましょう。そのためには今の自分の勝率やリスクリワードを維持すれば、1年後には資金がいくらに増えているか、という計算をしておき、いつもそれを意識することで長期的な視点を保つことができるでしょう。
まとめ
コツコツドカンのメカニズムにはトレーダーのメンタルが大きく関わっていて、その根本的な思考を変えなければ克服することは難しいということが分かったと思います。自分の過去トレードを振り返り、コツコツドカンの対策を自分のものとして活用し、コツコツドカンを根絶しましょう。