概要
- 6月の米CPIは前年同月比で9.1%と約40年半ぶりの水準となった
- FRBは需要抑制に向けた積極的な政策方針を維持する可能性が高い
- 6月の米PPIは予想10.7%、結果11.3%と市場予想を上回る伸びをみせた
- コアPPIは前月比で0.4%上昇、前年同月比では8.2%上昇となり、昨年11月以降で最も低い伸びとなった。全体的なインフレ圧力はピークを過ぎた可能性がある
- 中国の4〜6月の経済成長率は、2020年1〜3月以来の低い伸び
- 国家統計局は「中国経済への下押し圧力は4〜6月以降、著しく強まっている」、「持続的な景気回復の基盤は安定していない」との認識を示した
米CPIが前年同月比9.1%上昇、1981年以来の水準へ
6月の米消費者物価指数（CPI）は前年同月比で予想8.8%、結果9.1%と1981年11月以来約40年半ぶりの水準になりました。加えて、総合CPIの前年同月比の伸びが市場予想を上回るのは、これで4カ月連続となります。
要因としては、ガソリン価格や住居費、食品コストなどの上昇があり、これらが今回の結果につながりました。物価上昇の勢いが弱まっておらず、かつ経済全般に広がっており、実質賃金に一段と影響を与えていることが見て取れます。
米連邦準備制度理事会（FRB）はこの結果を受け、需要抑制に向けた積極的な政策方針を維持すると思われます。また、中間選挙を控えて支持率が低下しているバイデン大統領や民主党にもさらに圧力がかかるでしょう。
市場関係者は「インフレは鈍化しているどころか、加速している」との認識を示しました。6月は生活必需品の価格が引き続き大幅に伸び、特に食品価格は前月比で1%上昇、前年同月比では10.4%上昇と、1981年以来の大きな伸びになっています。
今後はFRBの積極的な利上げでインフレが弱まるか、そして景気が腰折れしないかに注目が集まりそうです。
米生産者物価が前年同月比11.3%上昇、インフレ緩和の兆しも
6月の米生産者物価指数（PPI）は予想10.7%、結果11.3%と市場予想を上回る伸びを示しました。6月は上昇分に対してエネルギーの占める割合が大きく、特にガソリンは前月比で18.5%もの上昇をみせています。
ただし、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアPPIは前月比で0.4%上昇、前年同月比では8.2%上昇となり、昨年11月以降で最も低い伸びになりました。さらに、食品とエネルギー、貿易サービスを除くPPIは前月比0.3%上昇、前年同月比では6.4%上昇と、昨年10月以来の低い伸びでした。これはサプライチェーンのボトルネック緩和が背景になっています。
市場関係者は「総合PPIの数字は大幅な上昇だが、中身を見ると川上から川下へのインフレ圧力が極めて緩慢にではあるが、明確に緩和していることが示されている」と語りました。
また、別の市場関係者は「生産者物価の圧力が低下すれば、新たな供給面での問題が起きない限り、違いが出始める」と述べています。
エネルギー価格の上昇を背景にPPIの上昇率が予想を上回った一方で、全体的なインフレ圧力はピークを過ぎた可能性があると言えるでしょう。
中国の4～6月のGDPは前年同期比0.4%増、低成長明確に
中国の4〜6月の（第2四半期）経済成長率は、2020年1〜3月（第1四半期）以来の低い伸びとなりました。つまり、武漢で最初に新型コロナウイルスが流行した時期以来の水準です。
要因としては、新型コロナウイルス感染を徹底的に抑制する「ゼロコロナ政策」による経済成長へのダメージが考えられ、中国政府の通期目標達成の難しさが鮮明になりました。
国家統計局が発表した4〜6月の国内総生産（GDP）は前年同期比で予想1.2%増に対して結果0.4%増となり、予想を大きく下回りました。さらに、前期比では2.6%減少しています。
政府は通期成長率目標を5.5%前後としていますが、大幅に下回る可能性が高いことが今回の結果から分かります。そして、リセッション懸念が浮上する世界経済には、この中国経済の失速は大きな打撃と言えるでしょう。
市場関係者は、今回の結果は年5.5%には届かないことを基本的に意味しており、「4%でもかなり厳しく」そのために「年後半に極めて力強い成長が必要だろう」と語りました。
また、国家統計局は声明で、「中国経済への下押し圧力は4〜6月以降、著しく強まっている」とし、想定外の要因による深刻な影響があると分析しています。加えて、世界経済のスタグフレーションリスクの高まりや主要国の金融引き締め、中国国内の新型コロナウイルス感染拡大の影響が重くのしかかり、「持続的な景気回復の基盤は安定していない」との認識も示しています。
