概要
- FOMCが政策金利を0.25ポイント利上げ
- パウエルFRB議長「インフレの鈍化にしばらくかかるという予想がおおむね正しければ、利下げは適切でなく、FRBは利下げしない」
- 4月の非農業部門雇用者数が市場予想を大きく上回る結果に
- セントルイス連銀ブラード総裁「インフレ率が下がるには政策金利がさらに引き上げられなくてはならないだろう」
- ECBが政策金利を0.25ポイント利上げ、前回からはペースが減速
- ラガルドECB総裁「利上げは停止しない。それは極めて明白だ」
FOMCが0.25ポイントの利上げを決定、今後停止の可能性も
米連邦公開市場委員会(FOMC)は定例会合で、政策金利を0.25ポイント引き上げることを決定しました。今回の利上げで米国の政策金利は、5〜5.25%となり、これは2007年以来16年振りの高水準です。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は声明発表後の記者会見で、「今回の声明は6月の政策金利据え置きを示唆しているのか」との質問に対し、「追加利上げを見込むという文言を削除したことは意義のある変化だ」と回答しました。加えて、「政策は入手するデータに左右され、会合ごとに判断する。その質問には6月の会合時に取り組む」と語っています。
0.25ポイント利上げへの支持に関しては、「全面的に非常に強かった」とパウエル議長は説明しました。今会合での政策決定は全会一致であったことから、ハト派のメンバーも0.25ポイントを支持したということになります。
破綻が相次いでいる銀行セクターの状況については、「3月初旬よりおおむね改善してきた」との見解を示しました。しかし、「与信環境のタイト化は経済活動と雇用、インフレに重しとなる可能性が高い」とも述べています。
懸念されるリセッション(景気後退)入りについては、「おちいる可能性はある」としましたが、「回避できる可能性の方が高いというのが私自身の見解だ」と語りました。市場関係者は、「データが当局の予想に沿ったものとなると想定した場合、これで利上げ打ち止めということになるだろう」との見方を示しています。
また、インフレの鈍化については、「しばらくかかるだろう」とし、「そうした予想がおおむね正しければ、利下げは適切でなく、FRBは利下げしない」と説明しました。ただし、現在市場は9月に0.25ポイントの利下げを予想しており、FRBと市場の認識のズレはいまだに続いています。
米雇用者数が予想を上回る伸び、賃金の伸びも加速
4月の非農業部門雇用者数は市場予想が前月比18万5000人増、結果が25万3000人増となり、結果が市場予想を大きく上回りました。平均時給は市場予想が前月比0.3%増、結果が0.5%増となり、こちらも結果が市場予想を上回っています。
高金利やインフレ、地銀4行の破綻などが景気に及ぼす影響を巡り、懸念が強まりつつありますが、今回の結果は労働需要の相変わらずの底堅さを浮き彫りにしていると言えます。市場関係者は「予想外に堅調な4月の雇用統計は、シリコンバレー銀行破綻以降の銀行セクターの緊張が、労働市場にまだ影響していないことを示している」と説明しました。さらに、「とはいえ、与信環境のタイト化の影響が実体経済に広がるには時間がかかる。FRBはそれを考慮に入れるだろう」との見解を示しています。
セントルイス連銀のブラード総裁は、「インフレ率が下がるには政策金利がさらに引き上げられなくてはならないだろう」と指摘しました。6月のFOMCの会合で実際に政策金利が引き上げられるかは、10日に発表される4月の米消費者物価指数(CPI)や11日の4月の米生産者物価指数(PPI)がヒントになりそうです。
雇用統計の発表後、ドル円は134円台前半から135円台まで急騰し、その後は下げに転じて134円台後半で取引を終えています。
ECBが0.25ポイント利上げ、前回からはペース減速
欧州中央銀行(ECB)が0.25ポイントの利上げをおこない、ユーロ圏の政策金利はこれで3.75%になりました。0.25ポイントは今回の利上げサイクルで最小の利上げ幅であり、市場予想と一致しています。
ECBは、「インフレ率を目標の2%に戻すのに、十分に景気抑制的な水準まで政策金利を引き上げる」とし、「そこへ向けた将来の決定はデータ次第だ」と以前からの見解を繰り返しました。また、ECBのラガルド総裁は政策金利発表後の記者会見で、「我々にはまだすべきことがある」とし、「利上げは停止しない。それは極めて明白だ」と語っています。
現在市場では0.25ポイントの利上げをあと2回実施すると予想されており、予想通りだった場合の政策金利は4.25%となります。