概要
- FOMCは政策金利の据え置きを決定
- パウエル議長「2023年中に幾分かの追加利上げが適切になると、ほぼ全ての政策当局者が予想」
- ECBは政策金利を0.25%引き上げ
- ラガルド総裁「7月も利上げを継続する可能性が極めて高い」
- 日銀はYCCを軸とした現行の大規模な金融緩和政策を継続
- 植田総裁「(物価の)見通しが大きく変わるということであれば、政策の変更にはつながってくる」
FOMCは金利据え置きも、ほぼ全員が利上げ再開予想
米連邦公開市場委員会(FOMC)は6月の会合で、政策金利を据え置くことを決定しました。過去1年余り続けてきた利上げですが、ようやく一旦停止ということになりました。ただし、インフレ沈静化に向けて、引き締めを再開する可能性が高いことが示唆されています。
同時に発表された、FOMC参加者による最新の金利予測(ドットプロット)では、中央値で政策金利が年末までに5.6%に上昇すると予想されていることが示されました。FOMC参加者18人のうち、12人が5.5〜5.75%の中央値レンジ、またはそれを上回る予想になっています。現在の政策金利は5〜5.25%であり、0.5ポイント以上の追加引き締めが必要との考えで、多くの当局者の意見が一致していることが示されました。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、会合終了後の記者会見で、「インフレを鈍化させるためには、2023年中に幾分かの追加利上げが適切になると、ほぼ全ての政策当局者が予想している」と指摘しました。ただし、7月にも追加利上げがあり得るかについては、明言を避けています。
利下げについては、「インフレが顕著に鈍化してからのことであるため、2年ほど先になる可能性が高い」との見解を示しました。年内の利下げを予想していた市場とは、大きな意見の相違となり、市場は現在、利下げ時期の予想を来年1月に変更しています。
元FRB副議長のリチャード・クラリダ氏は、「データ次第の姿勢に入ったFRBが来月に最後の利上げを決定する可能性がある」との見方を示しました。「経済指標がFRBではなく、市場予想に近い内容となれば、7月で利上げ打ち止めとなり得る」と語っています。
市場は7月の利上げ打ち止めを予想しており、FRBよりインフレに対して楽観的な意見であると言えます。FOMC参加者による最新の金利予測や、パウエル議長の発言がタカ派的だったことにより、ドル円は上昇しやすくなりそうですが、鈴木財務相の口先介入ともとらえられる発言があったことから、口先介入やレートチェックなどの報道には注意した方がよさそうです。
ECBが0.25%利上げ、7月の利上げも示唆
欧州中央銀行(ECB)は理事会で、政策金利を市場予想通り0.25%引き上げました。利上げは8会合連続となり、政策金利はこれで4%に達しました。
しかしながら、ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、「まだやるべきことはあるため、7月も利上げを継続する可能性が極めて高い」と語り、相変わらずタカ派的な姿勢を見せています。さらに、「(利上げを)一時停止するべきか、もしくは(利上げを)見送るかという点については、全く議論しなかった。やるべきことはまだあるため、(利上げ停止を)検討し始めてもいない。」とも述べました。
ラガルド総裁以外にも、ECB政策委員会のタカ派の要人が、「秋まで利上げを続けなければならないかもしれない」として警告しています。ドイツ連邦銀行のナーゲル総裁は、「夏休み後も利上げを続ける必要があるかもしれない」と語りました。
オーストリアやスロベニア、リトアニアの中銀総裁も同様の見方を示し、ベルギー中銀のウンシュ総裁は9月より後まで利上げ継続が必要な可能性についても示唆しています。
現在市場は9月の追加利上げを、ほぼ完全に織り込んでいます。
日銀が大規模金融緩和の継続を決定、円売りの流れに
日本銀行は金融政策決定会合で、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を軸とした現行の大規模な金融緩和政策の継続を決めました。景気・物価の認識にも大きな変化は無く、特にサプライズはありませんでした。
市場では、日銀が7月の会合時に示す新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しが上方修正されるとの見方が多くなっています。政策修正を予想するエコノミストもいることから、7月の会合は注目度が高くなりそうです。
日銀の植田総裁は、「(物価の)見通しが大きく変わるということであれば、政策の変更にはつながってくる」と述べました。ただし、「速やかな政策正常化によって目標実現前にインフレ率が下がるリスクもあり、その対応は難しい」との見方を示しています。
日銀が大規模緩和の維持を決めたことを受け、円が売られてドル円は140円台後半まで上昇しました。