概要
- パウエル議長が「年内に2回追加利上げが必要となる可能性がある」との認識を示した
- 市場は7月に0.25ポイントの利上げを行い、来年1月には利下げを行うと予想
- イングランド銀行が予想外となる0.5ポイントの利上げを発表
- ハント財務相「物価圧力がさらに持続する証拠があれば、一段の金融政策引き締めが必要となる」
- 5月の全国消費者物価指数は総合とコアの伸びが鈍化するも、基調的なインフレの強さが示唆された
パウエル議長が年内2回の追加利上げを示唆
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が上院と下院で証言を行い、「年内に2回追加利上げが必要となる可能性がある」との認識を示しました。また、「インフレ率を2%に回帰させることが、米経済の長期的な健全性を支援する上で不可欠だ」ともしています。
パウエル議長は「政策金利が適切に景気抑制的な水準に既に引き上げられていたとしても、経済がほぼ予想通りに推移するならば、FRBは年内に再び、恐らく2回の利上げを行うことが適切になると感じている」というタカ派的な発言を行いました。さらに、「我々はインフレ抑制にコミットしている。連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の大多数は、そこに近づいているが、もう少し利上げの余地が残っていると感じている」とも語っています。
民主党議員から信用引き締めによる失業率上昇の懸念も提起されている中、パウエル議長は「インフレを当局目標に戻すことに全力を注いでいる」との考えをあらためて示し、雇用よりインフレ退治を重視していることを感じさせました。リッチモンド連銀のバーキン総裁も同様の考えを示しており、「物価上昇圧力が予想通りに緩和されなければ、政策金利に関して、さらに行動することに強く賛成する」と述べています。ただし、アトランタ連銀のボスティック総裁が、「追加利上げのハードルは高くなっている」と語ったことにも注目しておくべきでしょう。
市場は7月に0.25ポイントの利上げを行い、来年1月には早くも利下げを行うと予想しており、年内2回の追加利上げを実施する方向にあることを示唆したパウエル議長の見解との間には溝があります。日銀の緩和的な政策とFRBのタカ派的な政策との相違が鮮明となったことで円が売られやすい環境になっていますが、日本の要人の口先介入が相次いでおり、口先介入やレートチェックの報道には注意した方がよさそうです。
英中銀が予想外の0.5ポイント利上げ
イングランド銀行(BOE、英中銀)が金利発表を行い、市場予想が0.25ポイント利上げ、結果は0.5ポイント利上げとなり、結果が市場予想を上回りました。4.5%から0.5ポイント引き上げられたことで、政策金利は5%の大台に到達しています。
金融政策委員会(MPC)は7対2で5%への利上げを決定し、これは2月以来となる大幅な引き上げです。MPCは「金利がさらに高水準へ向かう」との従来のガイダンスを維持し、金利が来年序盤に6%前後でピークを付けるとの市場予想を否定しませんでした。
イングランド銀行のベイリー総裁は、「住宅ローンやその他のローンを抱えた人が不安になるのは理解できる」としつつ、「金利を今引き上げなければ、将来さらに悪い結果になり得る」との認識を示しました。また、ハント財務相は「物価圧力がさらに持続する証拠があれば、一段の金融政策引き締めが必要となる」とのタカ派的な見解を示しています。
6月会合の議事録は「国内の物価と賃金動向の二次的影響の解消には、出現した時よりも時間がかかる公算が大きい」、「最近のデータにはインフレのプロセスが、より長期間持続することを示す重要な上振れ要因が見られる」としており、利上げが今後も数か月は継続しそうなことを感じさせます。さらに、英国のインフレ率は主要国の中でも特に高く、ピークの11%台からは下落したものの、5月も8.7%となっています。米国は4%であり、英国のインフレ率は米国の倍以上です。
次回の会合は8月となりますが、利上げがあるかないかではなく、どの程度の利上げになるのかが注目されそうです。
5月全国消費者物価指数は伸びが鈍化も基調の強さ示す
5月の全国消費者物価指数は総合が市場予想3.2%上昇、結果も3.2上昇となり、結果と市場予想が同じになりました。前月の3.5%上昇からは伸びが鈍化しています。
生鮮食品を除くコアCPIは市場予想が3.1%上昇、結果は3.2上昇となり、結果が市場予想を上回りました。ただし、こちらも前月の3.4%上昇からは伸びが鈍化しています。
コアCPIのプラス幅縮小は4カ月ぶりであり、エネルギーが8.2%下落したことが大きな要因になりました。とはいえ、伸びは鈍化したもののコアCPIの結果は基調的なインフレ圧力の強さを示しており、日銀が政策の見直しなどの緩和修正に動くとの見方が抑えられることにつながるかもしれません。