概要
- 6月の全国消費者物価指数は、コアの伸びが2カ月ぶりのプラス幅拡大に
- YCC政策の修正観測がくすぶっているが、「今月の会合で修正される可能性は低い」との見方が主流
- 6月の英国の CPIは、22年3月以来で最も低い伸びとなった
- CPIの結果を受け、政策金利のピークは6%を下回る見通しに
- 6月の米小売売上高は、コアが前月の0.3%増の倍となる0.6%増となった
- 「FRBは過度な引き締めを実施していない」との考えにつながる可能性
全国消費者物価指数の伸びが2カ月ぶりに加速
6月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除くコアが市場予想前年同月比3.3%上昇、結果も前年同月比3.3%上昇となり、結果と市場予想が一致しました。前月の3.2%上昇から伸びが拡大し、2カ月ぶりのプラス幅拡大となっています。
電気料金や食料品の値上げが主な要因となりました。電気代は6.6%減と前月から下落幅が縮小し、生鮮食品を除く食料は9.2%上昇と、前月と同じ高い伸びとなりました。
また、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは、市場予想前年同月比4.2%上昇、結果も前年同月比4.2%上昇となり、こちらも結果と市場予想が一致しました。前月の4.3%上昇から伸びが鈍化しており、伸び率が前月を下回るのは2022年1月以来約1年半振りです。
今月27日と28日に開かれる日銀の金融政策決定会合を前に、市場ではイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の修正観測がくすぶっています。ただし、植田総裁のハト派的な発言で修正観測はやや後退しており、今回のCPIの結果を受けて「今月の会合で修正される可能性は低い」との見方が主流です。
市場関係者は今回の結果について、「イールドカーブをゆがめるほどに、マーケットの期待を高めるインパクトはなかった」と説明しました。しかし、元日銀理事の早川氏が「7月会合でYCC修正の可能性がある」との見解を示していることもあり、修正観測は根強そうです。
英国CPIが1年余りで最も低い伸びに、金利予想に影響
英国の6月の消費者物価指数( CPI)は総合が市場予想前年同月比8.2%上昇、結果が7.9%上昇となり、結果が市場予想を下回りました。今回の数値は、22年3月以来で最も低い伸びです。
また、変動の激しい食料品やエネルギーを除くコアCPIは市場予想が前年同月比7.1%上昇、結果が6.9%上昇となり、こちらも結果が市場予想を下回りました。米国やユーロ圏と比べて中々インフレ率が下がらなかった英国ですが、今回の結果はイングランド銀行(英中銀)の予想通りの低下になっています。
市場関係者は「英国のインフレ率は当面他地域と比較して最も高い水準にとどまるだろうが、少なくとも世界的な傾向に沿っている」との見方を示しました。また、別の市場関係者は「予想外の6月のコアインフレ率の鈍化は、イングランド銀行が8月の会合で25ポイントの利上げを選好する十分な理由になる可能性が高いが、微妙なバランスの決定になりそうだ。基調的な物価圧力は年内はゆっくりしたペースでの緩和が見込まれ、9月と11月も利上げを継続する方向と我々は考えている」と語っています。
政策金利のピークは今月初めには6.5%に達するとまで見込まれていましたが、 CPIの結果を受けて現在では6%を下回る見通しとなりました。次回8月の利上げが0.25ポイントになるのか、0.5ポイントになるのかが注目されます。
米小売売上高は消費の基調の堅調さを示唆
6月の米小売売上高は市場予想が前月比0.5%増、結果が前月比0.2%増となり、結果が市場予想を下回りました。一方、飲食店と自動車ディーラー、建材店、ガソリンスタンドを除いたコアは市場予想が前月比0.3%増、結果が前月比0.6%増となり、結果が市場予想を上回りました。
コア小売売上高が前月の0.3%増の倍となる0.6%増となったことは、米国の消費の基調が堅調さを増したことを示唆しています。力強い労働市場に加え、インフレ率がしっかりと下がってきていることが消費を支えている要因です。
市場関係者は「需要に対する逆風は強まりつつあるとみている。金融面の厳しい状況が比較的所得の低い層に偏った形で影響を及ぼす。それが向こう数カ月、小売売上高への重しとなるだろう」との見解を示しました。また、別の市場関係者は「現在のインフレが本当に落ち着き始めれば、所得層にかかわらず消費者の懐は全般的にもっと温かくなる」との認識を示しています。
米国は個人消費がGDPの約7割を占めており、他の先進国より高い傾向にあります。その個人消費の動向を表すコア小売売上高が堅調さを見せたことは、米国経済にとって非常にポジティブであると共に、「FRB(米連邦準備制度理事会)は過度な引き締めを実施していない」との考えにつながるかもしれません。