日銀がYCC政策の柔軟化で実質的な緩和修正、FRBは0.25ポイント利上げ

FXマーケットニュース。2023年7月31日。
目次

概要

  • 日銀が金融政策決定会合でYCCの運用の柔軟化を決定
  • 許容変動幅は維持し、指し値オペの水準を従来の0.5%から1%に引き上げる
  • FRBが0.25ポイントの利上げを実施、政策金利は22年ぶりの高水準に
  • 次回となる9月の会合での利上げについては「今後のデータ次第」
  • ECBが0.25ポイントの利上げを実施、次回となる9月の会合での追加利上げの可能性は残す
  • ギリシャ中銀ストゥルナラス総裁「9月に政策金利が引き上げられれば、今回の引き締めサイクルで最後の利上げになるだろう」

日銀がYCC政策を柔軟化、実質的な緩和修正

日銀は金融政策決定会合で、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の運用の柔軟化を決定しました。長期金利の許容変動幅は上下0.5%程度に維持しつつ、金利上昇の抑制を目的に国債を無制限に買い入れる指し値オペの水準を従来の0.5%から1%に引き上げています。

消費者物価指数(CPI)が日銀の想定を上回って推移する中、実質的な緩和修正に出たと言えます。日銀がYCCの修正または撤廃を決めると予想していた市場関係者は少数だったため、今回の日銀の発表は市場にとってサプライズとなりました。

植田総裁は柔軟化について、上振れリスクを繰り返し強調し、「経済・物価情勢が上振れた場合、それを反映する形で長期金利が0.5%と1%の間に上昇していくことを容認しようという姿だ」と述べています。市場関係者は植田総裁の発言について、「相当に物価の上振れリスクを気にしている。だからこそ今回の措置をとったことを示唆している」と指摘しました。

具体的な運用について植田総裁は、「1%を超えて長期金利が上昇しないように、1%の水準では連続指し値オペで金利上昇を抑制する」と説明しました。さらに、今後0.5%を超える動きに対しては、「長期金利の水準や変化のスピード等に応じて、機動的に対応することになる」としています。

日銀の会合の結果を受けてドル円は大きく上昇したものの、その後は大きな下落を見せました。日銀の「柔軟化」はやや分かりづらさがあり、海外勢が上手く解釈できなかった可能性もありそうです。


FRBが0.25ポイント利上げ、政策金利は22年ぶりの高水準に

米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合が開催され、政策金利を0.25ポイント引き上げることが決定されました。「今後のデータ次第」としながらも、さらなる利上げの可能性も残しています。

今回の利上げで米国の政策金利は5.25〜5.5%となり、22年ぶりの高水準となりました。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は記者会見で、「この先、適切と考えられる追加政策引き締めの程度を決定する上では、引き続きデータ重視のアプローチで臨む」と説明しています。

また、次回となる9月の会合については、「データが正当化すれば、9月会合で再び利上げする可能性は当然あると言えよう。そして、同会合で金利据え置きを選択する可能性もあると言っておく」と述べました。米経済については、「スタッフは現在、成長の顕著な減速が年内に始まると予想しているが、最近の経済に見られる強靱(きょうじん)性から、もはやリセッションは見込んでいない」としています。

パウエル議長の発言が今までよりタカ派的なトーンではなかったため、「現行の引き締めサイクルが終わりに近づいている」との見方が強まり、強気派のトレーダーには不満が残るものになったかもしれません。現在、市場は今回で利上げサイクルが終了し、来年5月には利下げに転じると予想しています。

ECBが0.25ポイント利上げ、9月会合のガイダンスは無し

欧州中央銀行(ECB)が0.25ポイントの利上げを実施し、政策金利は4.25%となりました。次回となる9月の会合についてのガイダンスは無く、追加利上げの可能性は残した形になっています。

ラガルド総裁は記者会見で「決定は全会一致だった。」とし、「インフレ率の低下は続いているが、長すぎる期間にわたり、高すぎる水準にとどまる公算が大きい。」との認識を示しました。また、「インフレの外部要因が緩和しつつある一方で、賃金の上昇や堅調な利益率などによる域内の価格圧力がインフレの重要な要因になりつつある。」と指摘しています。
政策金利の見通しについては、ECBの政策委員会メンバーであるギリシャ銀行(中銀)のストゥルナラス総裁が、「9月に政策金利が引き上げられれば、今回の引き締めサイクルで最後の利上げになるだろう」との見解を示しました。さらに、同じく政策委員会メンバーであるエストニア中銀のミュラー総裁は、「ユーロ圏のインフレはなお根強いが、今後の金利決定については、もはや明白ではない」とし、「ユーロ圏の短期的な成長見通しは、数カ月前と比べてより悲観的となっているようだ」と述べています。

FXマーケットニュース。2023年7月31日。

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