概要
- ドル円が150円を上抜けた後に急落し、為替介入を実施したとの観測があった
- 日銀当座預金残高は事前予想通りの結果となり、介入が無かったことを示唆
- 米非農業部門雇用者数は、結果が市場予想を大きく上回った
- 労働市場の堅調ぶりがあらためて示され、追加利上げ観測が強まっている
- 日銀短観で非製造業景況感が6期連続の改善、約32年ぶりの高水準
- 「企業の物価見通し」では平均で1年後や3年後、5年後のそれぞれで日銀が目標とする2%を超える水準を維持
ドル円急落で介入観測、日銀当座預金は介入無しを示唆
ドル円が心理的節目かつ昨年に為替介入があった水準である150円を上抜けた後に急落し、日本政府と日銀がドル円の上昇に歯止めをかけようと介入を実施したとの観測がありました。ドル円は150円を上抜けた後に一時147円台前半まで急落し、約3円もの下落となりました。
ただし、その後に日銀が公表した当座預金残高の数字は、事前予想通りの結果となり、介入は無かったことが示唆されています。昨年の大規模な円買い介入では、日銀の当座預金の数字と政府の資金フローに関する民間短資会社の推計の間には、大きな乖離がありました。
急落の背景には介入への警戒感で市場が神経質になっていたことや、アルゴリズムによって売りが売りを呼ぶ状態になったことなどが考えられます。市場関係者は「介入じゃなかったとしても150円前後でこういう動きがあったということは、逆に言えば市場も疑心暗鬼、150円は怖いというのがあったと思う。市場が勝手に150円が上限だと考えたのだと思う。疑心暗鬼の払拭には時間がかかるだろう」との見解を示しました。
日本の要人は介入の有無について名言を避けており、市場の警戒は今後も高いレベルで続きそうです。介入の有無について、神田財務官は「歴史的にむしろ言わない方が普通」と述べ、鈴木財務相も「介入の有無はコメントを控える」と語っています。
一方で日米の金利差は依然として大きく、米国は年内に利上げする可能性もあるため、上値が重く下値も堅い展開になるかもしれません。市場関係者は「これは円安ではなく、強い米国経済や金利高止まりの見方の強まりが背景にあるドル高。日本当局にとっては非常に難しい攻防であり、いつ終わるか予想するのも難しい」との見方を示しています。
具体的な介入の水準については、榊原元財務官が「その時の状況にもよるが、155円程度が政府当局者が懸念し始めるであろう水準だ」と語っています。ただ、鈴木財務相が「水準そのものは判断基準にならない。あくまでボラティリティーの問題だ」との見解を繰り返して示したこともあり、不透明感から神経質な展開がしばらく続く可能性がありそうです。
ユーロ圏コアCPIが1年ぶりの水準まで低下
9月の米国の非農業部門雇用者数は市場予想が前月比17万人増、結果が33万6000人増となり、結果が市場予想を大きく上回りました。雇用統計の先行指標として注目されるADP雇用統計が逆の結果であったことから、市場には大きな驚きとなりました。
今年1月以来の大幅増で、労働市場の堅調ぶりがあらためて示されたことにより、米連邦準備制度理事会(FRB)による年内での0.25ポイントの追加利上げ観測が強まっています。労働市場の強さは経済の強さを示すだけでなく、物価上昇圧力の持続にもつながるという側面もあります。
一方、失業率は市場予想3.7%、結果が3.8%となり、雇用者数のような強さは見られませんでした。さらに、平均時給は市場予想が前月比0.3%上昇、結果が0.2%上昇となり、前年同月比では4.2%上昇と、2021年半ば以来の低い伸びとなっています。 10月31日 から11月 1日にかけて開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で追加利上げがあるかどうかは、消費者物価指数(CPI)などのインフレ指標の結果が大きな影響を与えるかもしれません。
日銀会合議事要旨「YCC柔軟化は現在が適切」
日銀が発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)で、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が2四半期連続で改善となりました。特に、非製造業は6期連続の改善となり、1991年11月の調査以来約32年ぶりの高水準です。
「企業の物価見通し」では、企業が想定するCPIの前年比上昇率が、平均で1年後が2.5%、3年後が2.2%、5年後が2.1%と日銀が目標とする2%を超える水準を維持しています。市場関係者は「少なくとも5年後見通しが2%近傍に定着するようであれば、日銀は正常化開始に向けて歩み出しやすいだろう」との見解を示しており、今後も物価見通しが高止まりすれば、市場が予想する政策修正の時期が早まりそうです。