概要
- ECBが1年余りの利上げサイクルの中で、初の政策金利の据え置きを決定
- ラガルド総裁「利下げについて議論することは全く時期尚早だ」
- 9月の米PCEはコア指数の伸びが前月比で加速し、ここ4カ月で最大の伸びに
- 市場関係者「年末を前にしてコアインフレがやや上昇しており、FRBとしては注意を続ける必要があることを示唆している」
- 9月の米新築住宅販売件数は結果が市場予想を大きく上回り、1年7カ月ぶりの高水準に
- 住宅ローン金利が急騰している中でも、消費者の住宅購入意欲は強いことが示された
ECBがついに利上げを一時停止
欧州中央銀行(ECB)は市場の予想通り、ユーロ圏の政策金利を4.5%で据え置くことを決定しました。ここ1年余りの利上げサイクルの中で、初めての金利据え置きとなります。
これは前例のない連続利上げによって、すでにインフレ抑制に十分な金利となっているかどうかを見極める期間を設けたということです。ECBは声明で、「金利をこの水準で十分に長く維持すれば、インフレ率を目標の2%に戻すことに大きく貢献するだろう」とあらためて強調しました。
ただし、ECBはインフレ率が十分に鈍化しない場合、利上げを再開する可能性があります。ECBのラガルド総裁は「物価上昇圧力は依然として強く、中東紛争でエネルギーコストが上昇すれば、追い打ちがかけられる可能性がある」との認識を示しています。
しかし、市場では2022年7月からの10回連続の利上げによって、ユーロ圏の政策金利がピークに達しているとの見方が主流です。また、ECBは「インフレ率は高過ぎる状態が長く続くとなお予想され、域内の物価上昇圧力は依然として強い」との見解を示しており、利上げが無くても政策金利は高止まりすることになりそうです。
市場の予想通り政策金利がピークに達しているのであれば、次は利下げの時期が焦点になりますが、ラガルド総裁は「利下げについて議論することは全く時期尚早だ」としています。市場は来年6月に0.25ポイントの利下げを予想しており、高水準の金利が長く続くことを見越しています。
米コアPCEがここ4カ月で最大の伸びに
9月の米個人消費支出(PCE)は、食品とエネルギーを除くコア指数が市場予想前月比0.3%上昇、結果も0.3%上昇となり、市場予想と結果が一致しました。ただ、8月の0.1%上昇から伸びが加速し、ここ4カ月で最大の伸びを見せています。
総合は市場予想前月比0.3%上昇、結果が0.4%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。エネルギーコストの上昇が主な要因となっています。
市場関係者は「年末を前にしてコアインフレがやや上昇しており、FRBとしては注意を続ける必要があることを示唆している」と説明しました。また、別の市場関係者は「個人消費支出の伸びは所得の伸びをはるかに上回っており、消費者が9月も自らの収入を超える支出を続けていたことが分かる。そうしたダイナミズムはあまり長く続き得ないと考えられる」と述べています。
今回のPCEの結果は追加利上げの可能性を感じさせるものであり、PCEの後に発表された米ミシガン大学の10月の消費者調査でも、1年先のインフレ期待が5カ月ぶりの高水準に上昇しました。ただし、市場の多数派は金利がすでにピークに達しており、来年6月には0.25ポイントの利下げがあると予想しています。
英CPIが予想を上回る高水準に
9月の米新築住宅販売件数は市場予想が68万戸、結果が75万9000戸となり、結果が市場予想を大きく上回りました。これは2022年2月以来となる1年7カ月ぶりの高水準であり、住宅ローン金利が急騰している中でも、消費者の住宅購入意欲は強いことが示された形になりました。
住宅ローン金利は8%に近づき、購入能力が圧迫されてはいるものの、中古住宅市場の在庫不足がこれまでのところ新築物件への需要を下支えしています。加えて、購入促進のための価格引き下げも追い風となりました。
新築住宅販売件数は景気に対して1〜2カ月先行性があると言われており、今年の米経済の見通しにおいてポジティブな結果だと言えます。7~9月(第3四半期)の実質国内総生産(GDP)速報値も、市場予想が前期比で年率4.5%増、結果が4.9%増と結果が市場予想を上回っており、約2年ぶりとなる急速なペースでの成長が見られました。
米経済について強気の見方が広がれば、日米の大幅な金利差もあることから、ドル買い円売りの流れが続く可能性が高まりそうです。ただし、ドル円が節目の150円を再び突破して年初来高値を更新したことで、政府・日銀による円買い介入に警戒感が高まっており、神経質な展開になることも予想されます。