日本のCPIは予想を下回る伸びに、ECB議事要旨「必要に応じて金利引き上げる」

目次

概要

  • 日本の10月のCPIは総合、コア共に予想を下回る伸びとなった
  • 市場関係者の間では「正常化は来春になる」との見方が多い
  • ECB政策委員会会合の議事要旨が公開、「当局者は必要に応じて金利を再び引き上げるべきだ」との見解で一致
  • FOM議事要旨が公開、今後の政策金利の動向に関して「慎重に進む」戦略を取るとの見解で一致

日本のCPIは総合、コア共に予想を下回る伸びに

10月の全国消費者物価指数(CPI)は、総合が市場予想前年同月比3.4%上昇、結果が3.3%となり、結果が市場予想を下回りました。また、生鮮食料品を除くコア指数は市場予想前年同月比3.0%上昇、結果が2.9%上昇となり、こちらも結果が市場予想を下回っています。

コアCPIの前年同月比での伸び率が、4カ月ぶりに前の月を上回ったものの、市場予想を下回ったことで、金融政策の正常化にはまだ時間がかかるのではないかとの観測が強まりました。日銀はコアCPIについて、23年度と24年度は2.8%、25年度は1.7%になると予想しており、今回の結果も踏まえて市場関係者の間では、「正常化は来春になる」との見方が多くなっています。

ある市場関係者は「一時的な要因を除けば、物価上昇は落ち着くという日銀のシナリオは変わらない」とし、「12月は現状維持。26年度の物価見通しが示される来年4月が政策変更するかどうかの大きな転換点になる」との見解を示しました。別の市場関係者は、「賃金は所定内給与などでプラス幅が拡大し、来年の春闘の伸びも悪くない」としつつ、「日銀のマイナス金利解除は、来年4月が恐らくメインシナリオ」との見方を示しています。

賃金動向が反映されるサービス価格は2.1%上昇と、前月の2.0%上昇から伸びが拡大し、消費税率引き上げの影響を除いて1993年10月以来となる、30年ぶりの高水準となりました。原材料価格に加え人件費の転嫁が進んでいますが、人件費の価格転嫁は当面続くとの見方が専門家からは出ています。

ECB議事要旨「必要に応じて金利を再び引き上げるべき」

10月に開かれた欧州中央銀行(ECB)政策委員会会合の議事要旨が公開され、「ECB当局者は必要に応じて金利を再び引き上げるべきだ」との見解で一致していたことが分かりました。昨年半ばから開始した急ピッチの利上げサイクルにおいて初めて金利は据え置きとなっていました。

ただし、ラガルドECB総裁は「いまや手を休め、引き締めの効果を見極めることができる立場にある」としており、今後利上げが再開されるかは不透明です。さらに、デギンドス副総裁も「現在の金利水準が十分に長く維持されれば、インフレ率を2%の目標に下げることができる」との見解を示しています。

加えて、ミュラー・エストニア中銀総裁も「おそらくECBは、もはや利上げの必要がない」との認識を示しています。ビルロワドガロー・フランス銀行(中銀)総裁に至っては、「サプライズを除けば、ECBは追加利上げしないと考えている」と語っています。

マクルーフ・アイルランド中銀総裁は、「もう一段上がる必要を現時点で排除しようと思わないが、われわれの位置はおおむねはしごの最上部に近い」としてややタカ派的な発言をしているものの、総じて「利上げは終了した」という雰囲気が高まっていることは確かです。

現在、市場は早ければ来年4月にも利下げがあると予想していますが、利下げを考えるのは時期尚早という見解はECBの要人達の中で一致しており、ラガルド総裁は「そうした動きは向こう2、3四半期は見込めない」と指摘しています。

FOMC議事要旨「慎重に進む」

米連邦公開市場委員会(FOMC)が、10月31日から11月1日にかけて開いた会合の議事要旨が公開され、今後の政策金利の動向に関して「慎重に進む」戦略を取り、追加利上げについてはインフレ目標に向けた進展度合いに基づいて判断することで、政策当局者の見解が一致していたことが分かりました。FOMCの会合では、米経済の力強さを示唆するデータが継続していたものの、政策金利は5.25から5.5%に据え置かれました。

現在、FOMCは2つのリスクに対処しようと努めています。一つは、過度な利上げでリセッション(景気後退)を招くリスクです。もう一つは、消費を冷やしてインフレ率を目標の2%に戻すための引き締めが、不十分なものに終ってしまうリスクです。

両方の回避には、政策金利を適切な水準にコントロールしなければなりません。議事要旨は、「参加者はインフレが2%目標への道筋を明確にたどっていると確信するためには、さらなる証拠が必要になるとも強調した」ともしており、今後はデータを慎重に見極めていくことになりそうです。

現在、市場は政策金利がすでにピークを迎えていて、来年6月には0.25ポイントの利下げがあると予想しています。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次