概要
- 昨年12月の米CPIは、総合とコアが共に予想を上回り、総合に関しては前月から伸びが加速
- FRBが今年の早い段階で利下げを開始するとの観測が後退
- 昨年12月の東京都区部のコアCPIは前月から伸びが鈍化
- 早期の政策正常化観測の後退を後押しする内容に
- 英国の11月のGDPは10月から大きく回復
- ただし、テクニカル・リセッションに陥った可能性が高まっている
米CPIの伸び加速で早期利下げ観測が後退
昨年12月の米消費者物価指数(CPI)は、総合が市場予想前年同月比3.2%上昇、結果が前年同月比3.4%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。3.4%上昇という数値は、3カ月ぶりの大きな伸びとなります。
また、価格の変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア指数は、市場予想が前年同月比3.8%上昇、結果が3.9%上昇となり、こちらも結果が市場予想を上回りました。ただ、11月の4.0%上昇からは伸びが低下しています。
総合とコアが共に予想を上回り、総合に関しては前月から伸びが加速したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)が今年の早い段階で利下げを開始するとの観測が後退しました。しかし、それでも市場は3月から利下げが開始されると見込んでおり、まだ楽観的な姿勢自体は崩していません。
ある市場関係者は、「12月のCPIが驚くほど強かったことは、FRBの目標であるインフレ率2%への持続的回帰が一筋縄ではいかず、最後の1マイルが困難となり得ることを示す」と述べました。また、別の市場関係者は「全体として、今回のインフレデータを踏まえると3月の利下げは可能性の低いシナリオのように思われる」との見解を示しています。
クリーブランド連銀のメスター総裁も、「私の見通しでは、3月は利下げ時期としておそらく早過ぎる。さらなる証拠を見る必要があるためだ」とし、「12月のCPIは、なおやるべき仕事があることを示した。それには景気抑制的な金融政策が必要になる」との認識を示しました。今後の経済指標によって、さらに早期利下げ観測が後退した場合、ドルが買われて円が売られやすくなり、ドル円が一時的に上昇する展開もあり得そうです。
東京都区部CPIの伸びが縮小で早期政策修正観測が後退
全国の物価の先行指標とされる昨年12月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、市場予想が前年同月比2.1%上昇、結果も2.1%上昇となり、結果と市場予想が一致しました。ただし、前月の2.3%上昇からは伸びが鈍化しています。
電気・ガス代を中心にエネルギーが過去最大の下落率となり、生鮮食品を除く食料も6.0%上昇と、伸び率は5カ月連続で前の月を下回りました。輸入物価の上昇など、コストプッシュ圧力の低下を反映してコアCPIは鈍化傾向にあります。
日銀は2%を目標としており、その2%に迫る数値となった今回の結果は、能登半島地震などを背景に表面化している早期の政策正常化観測の後退を後押しする内容となりました。ある市場関係者は「震災の影響もあり、景気にマイナスの影響もたらすマイナス金利解除を含む政策修正は行いにくくなった」と説明しています。 日銀が今月の金融政策決定会合で議論する、新たな2024年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)も原油価格の下落などを反映させるため、下方修正となる公算が大きくなっています。関係者によると、従来の2.8%から2.5%前後に引き下げることが見込まれるようであり、少なくとも今月の金融政策決定会合では政策正常化が見送られる可能性は高そうです。
英GDPが0.3%増に回復も、高まる景気後退リスク
英国の11月の国内総生産(GDP)は、市場予想が前月比0.2%増、結果が0.3%増となり、結果が市場予想を上回りました。加えて、10月の0.3%減から大きな回復を見せています。
ただし、英国がテクニカル・リセッションに陥った可能性が高まっています。テクニカル・リセッションとは、欧米においては、実質GDP成長率が2四半期連続でマイナスになると、速報的な景気の転換点として広く認識されるというものです。
英国は昨年7〜9月(第3四半期)の実質GDP成長率がマイナスであったため、昨年10〜12月(第4四半期)もマイナス成長になれば、テクニカル・リセッション入りということになります。これを回避するには、12月のGDPが少なくとも横ばいになる必要がありますが、12月は悪天候に見舞われたほか、医師らによるストライキなどもあったことから厳しいとする見方があります。
ある市場関係者は「長期的に見ると、経済は過去1年間ほとんど成長していない」としつつ、「ただ11月のGDPはサービス業主導で回復した。小売り、自動車リース、コンピューターゲーム会社が好調だった」と説明しました。