概要
- 昨年12月の米小売売上高は3カ月ぶりの大幅な増加
- 個人消費の底堅さが続いていることが示唆された
- 昨年12月の日本のコアCPIは1年半ぶりの低水準に
- 電気代と都市ガス代が押し下げ要因、生鮮食品を除く食料についても4カ月連続で伸びが鈍化
- 昨年12月に実施されたECBの金融政策決定会合の議事要旨が公開「投資家がインフレ抑制の妨げになる」との懸念
- 市場はECBが春から急速な利下げを開始すると予想、年央の緩和開始を目指しているとされるECBと温度差
米小売売上高が3カ月ぶりの大きな伸びに
昨年12月の米小売売上高は、市場予想が前月比0.4%増、結果が0.6%増となり、結果が市場予想を上回りました。3カ月ぶりの大幅な増加であり、個人消費の底堅さが続いていることが示唆されました。
リセッション(景気後退)を予想する市場関係者は少なくなってきましたが、長引くインフレや借り入れコストの高止まり、貯蓄減少に消費者が直面する中、勢いは2024年に鈍るとの声があります。ある市場関係者は「雇用や賃金の伸び鈍化が広がり、金利上昇の遅行効果が一定の打撃を追加的にもたらすのに伴い、さらなる減速がこの先待ち受けていると当社ではなお考えている。だが、より急激な下降が訪れることを示唆する要素はまだほとんどない」と語りました。
小売売上高が経済の強さを示したことで、市場は今年の急速な利下げ予想に対して修正してきています。いまだ計5回1.25ポイントの利下げを見込んではいるものの、3月に利下げをする確率は5割弱としています。
ある市場関係者は「金融環境は劇的に緩和した。利下げ期待を当局者は押し戻そうとし、市場は耳を傾けつつある」との認識を示しました。このまま利下げ期待が後退し続けるようなことがあれば、ドル円の一時的な上昇に警戒した方がよいかもしれません。
日本のコアCPIが1年半ぶりの低い伸びに
12月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は市場予想が前年同月比2.3%上昇、結果も2.3%上昇となり、結果と市場予想が一致しました。2カ月連続で伸び率が縮小し、1年半ぶりの低水準となっています。
政府による価格激変緩和対策の影響で、電気代と都市ガス代が押し下げ要因となりました。加えて、生鮮食品を除く食料についても、6.2%上昇と4カ月連続で伸びが鈍化しています。
CPIのプラス幅が縮小していくのは、日銀の想定通りです。ただし、能登半島地震もあったことから、来週の金融政策決定会合では政策変更が見送られるとの見方が主流になっています。
年前半にマイナス金利が解除されるとの観測は根強いものがありますが、こちらも肩透かしに終わる可能性がありそうです。ある市場関係者は「コストプッシュ型インフレは少し落ち着いたが、デマンド(需要)プル型に転じるかはまだ確認できない」との見解を示しています。
日銀がマイナス金利を解除するタイミングは、4月の金融政策決定会合になると予想するエコノミストが多く、これは日銀が2%物価目標の実現に向けて賃上げと価格への波及を重視しているからです。春闘では、3月中旬ごろ大企業からの回答が集中し、3月末までに中小企業からの回答があるのが一般的な流れになっています。
昨年の春闘でのベアと定期昇給を合わせた賃上げ率は平均3.58%と、実に30年ぶりの高水準を記録しており、今年も順調に上昇するかがキーポイントになっています。ある市場関係者は、中小企業の賃上げ率について不確実性が高いと日銀が評価していることから、「大企業の春闘集中回答日直後に開催される3月会合ではなく、より多くの企業の春闘の着地情報が蓄積する4月会合を待って、展望リポートで今後の2%達成への見通し改定とともにマイナス金利を解除する」との見方を示しました。
ECB議事要旨「投資家がインフレ抑制の妨げになる」
昨年12月に実施された欧州中央銀行(ECB)の金融政策決定会合の議事要旨が公開され、「市場の急激なリプライシングが金融環境を過度に緩める恐れがあり、インフレ抑制のプロセスを頓挫させかねない」との懸念が出ていたことが分かりました。市場はECBが春から急速な利下げを開始すると予想しており、年央の緩和開始を目指しているとされるECBとは温度差があります。
ECBは「市場の期待はかなりの楽観を反映しており、専門的な仮定に採用されている金利軌道およびインフレ見通しの両方に関して、ECBのスタッフ予測とは食い違っているとの感触を多くの当局者が持っている」と指摘しています。市場が利下げ見通しの後退を余儀なくされるようであれば、一時的にユーロが買われやすくなってユーロ円が上昇する可能性もありそうです。