日銀総裁「物価目標の実現確度少しずつ高まっている」、ECB「金利長く維持する」

FXマーケットニュース。2024年1月29日
目次

概要

  • 植田日銀総裁「物価目標の実現確度が少しずつ高まっていると判断した」
  • 展望リポート「(コアCPIは)見通し期間終盤にかけて物価安定の目標に向けて徐々に高まっていく」
  • ECB「金利をこの水準で十分に長く維持することが、消費者物価上昇の抑制に大きく貢献する」
  • ラガルドECB総裁が年半ばごろからの利下げ開始を肯定
  • コアPCEの伸びが鈍化し、市場では早期利下げ観測が高まった

日銀総裁「物価目標の実現確度が少しずつ高まっている」

日銀が金融政策決定会合を開き、イールドカーブコントロール(YCC)を中心とした大規模な金融緩和政策の現状維持を全員一致で決定しましたが、植田日銀総裁の「物価目標の実現確度が少しずつ高まっていると判断した」との発言などから円が買われることになりました。

また植田総裁は、「春闘に向けて労働組合側から昨年を上回る賃上げ要求方針が示され、大企業を中心に賃上げに前向きな発言も見られる」と説明しつつ、「各社のデータ情報を丹念に分析し、賃金と物価の好循環が強まっていくか確認していきたい」と述べています。

春闘では3月中旬ごろ大企業からの回答が集中し、3月末までに中小企業からの回答があるのが一般的な流れになっており、植田総裁の発言によって「より多くの企業の春闘の結果が蓄積する4月会合を待ってマイナス金利を解除する」との観測が強まりそうです。

その他にも植田総裁は、賃金のサービス価格への転嫁がどのくらい進んでいくかを今後の注目点に挙げました。昨年12月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、前年同月比2.3%上昇と、2022年6月以来となる低い伸びになりましたが、サービス価格は2.3%上昇と、消費税率引き上げの影響を除いて1993年10月以来の伸びとなった前月と同じとなりました。

会合後に公表した新たな「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、コアCPIの先行きについて、「見通し期間終盤にかけて物価安定の目標に向けて徐々に高まっていく」としています。加えて、先行きの不確実性は高いとしつつ、「こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている」との表現が追加されました。

植田総裁の発言や展望リポートの内容を受け、円が買われてドル円は下落を見せましたが、このまま日銀が早期に金融政策を修正するとの見方が強まれば、ドル円のさらなる下落につながりそうです。

ECB「金利を十分に長く維持する」

欧州中央銀行(ECB)が金融政策決定会合を開催し、利下げがまだ当分先になることを示唆しました。ユーロ圏の政策金利は4.5%に据え置かれましたが、ECBは「金利をこの水準で十分に長く維持することが、消費者物価上昇の抑制に大きく貢献する」という従来の主張を繰り返しました。

ラガルドECB総裁は政策発表後の記者会見で、「利下げはまだ議論されていない」としつつ、「前に自分が言ったことに変わりはない」と述べ、利下げ開始時期について「夏の可能性が高い」と発言したことに言及しました。

ラガルド総裁は年半ばごろからの利下げ開始を肯定しましたが、市場は楽観的で4月から利下げが開始される確率が高いと見込んでいます。ユーロ圏経済の苦境やインフレ見通しの改善も総裁は強調しており、ある市場関係者は「夏に利下げの公算が大きいという自身の見解に変わりはないとラガルド総裁は述べたが、それ以外の論調は早期利下げを支持しているようだった」と述べました。

ユーロ圏が早期に利下げをするとの観測が高まれば、ユーロが売られてユーロドルやユーロ円の下落要因になりそうです。

米コアPCEの伸び鈍化で早期利下げ観測強まる

米個人消費支出(PCE)は変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCEが市場予想前年同月比3%上昇、結果は2.9%上昇となり、結果が市場予想を下回りました。総合は市場予想前年同月比2.6%上昇、結果も2.6%上昇となり、結果と市場予想が一致しています。

コアPCEは米連邦準備制度理事会(FRB)が基調的なインフレを判断する上で重視している経済指標であり、前年同月比の伸びがほぼ21年3月以来の鈍いペースとなったことで、市場では早期利下げ観測が高まりました。パウエルFRB議長も利下げについての議論が始まっていることを認めており、市場は3月に利下げが開始される可能性を約50%と見込んでいます。

ただし、FRB当局者はインフレとの闘いで勝利を宣言することには依然慎重であり、沈静化の持続的な兆候を確認してから利下げを始めたいという考えを示していることから、今月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では政策金利を据え置くとの予想が主流です。ある市場関係者は「FRBがインフレ目標を達成したとの証拠は次々と積み上がってきている」とし、「これで利下げ見合わせを年央まで引き延ばすのはさらに難しくなる」との見方を示しました。

FXマーケットニュース。2024年1月29日

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次