米国が2四半期連続マイナス成長、ユーロ圏CPIは過去最高更新

目次

キーポイント

  • 米国の実質GDP速報値が2四半期連続のマイナスとなり、リセッションのリスクが高まった
  • 実質GDP速報値は市場予想が前期比年率0.4%増、結果は0.9%減
  • 数十年ぶりの高いインフレ率による消費支出抑制やFRBの利上げで企業の投資や住宅需要に影響が及んだことなどが要因
  • ドル/円が一時132円台半ばまで大きく下落。米国のGDPの結果を受け、FRBが積極的な利上げを続けるという観測が後退したことが主な要因
  • 米雇用統計などが予想を下回れば、ドル/円への下落圧力はさらに強まる可能性
  • オーストラリアやイギリスの政策金利発表が近日に控えており、金利差に注目が集まればドル/円は137円台半ばまで戻す余地も
  • ユーロ圏のインフレ率は7月にまたも過去最高を更新
  • ユーロ圏CPIは前年同月比8.9%上昇と、6月の8.6%上昇から伸びが加速。市場予想の8.7%上昇も上回った
  • ECBは21日に0.5ポイントの大幅利上げをおこなったが、大幅利上げの圧力はまだ続く見通し

米国が2四半期連続マイナス成長、4~6月のGDP0.9%減

米国の商務省が28日に発表した4から6月(第2四半期)の実質国内総生産(GDP)速報値は2四半期連続のマイナスとなり、リセッション(景気後退)のリスクが高まりました。なお、市場予想は前期比年率0.4%増でしたが、結果は0.9%減となっています。

今回の理由としては、数十年ぶりの高いインフレ率によって消費支出が抑制されたことやFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げで企業の投資や住宅需要に影響が及んだことなどが挙げられます。また、米国の経済において3分の2以上を占める個人消費は1.0%増と、前四半期(1から3月)に比べて減速し、こちらも市場予想である1.2%増を下回ってしまいました。

市場関係者は今回のGDPの結果について、「より重要なのは、40年ぶりの高いインフレ率と借り入れコストの急上昇、金融環境の全般的な引き締まりに直面し、米経済が急速に勢いを失っていることだ」との見解を示しました。さらに、「米経済は非常にリセッションに陥りやすい状態にある」と分析しています。

国際的には実質GDPのマイナス成長が2四半期続くと「テクニカルリセッション」と呼ばれ、機械的に「リセッション入り」とみなされます。しかし、米国で景気循環の始まりと終わりを正式に認定するのは全米経済研究所(NBER)です。

とはいえ、2四半期以上続いたマイナス成長は第2次世界大戦後の1949年以降で計10回あり、すべてが正式にリセッションであったと認定されています。今回はリセッションの認定で重要視される失業率が歴史的な低水準になっている点が異例であり、NBERがリセッションであったと認定するかに注目が集まるでしょう。

ドル/円が急落、一時132円台半ば

29日はドル/円が一時132円台半ばまで大きな下落を見せました。その後134円台半ばまで上昇する場面もありましたが、133円台前半で取引を終えています。米国のGDPが2四半期連続でマイナスとなったことを受け、FRBが積極的な利上げを続けるという観測が後退したことが主な要因となりました。

5日に発表される米雇用統計などの経済指標が予想を下回る展開になれば、ドル/円への下落圧力はさらに強まることになりそうです。そのため、ここから先のドル/円の買いは慎重におこなったほうがよいかもしれません。

ただし、2日にはオーストラリア、4日にはイギリスの中央銀行による政策金利発表が控えており、「いずれも利上げ方向で円の弱さが目立ちやすい。ドル/円は137円台半ばまで戻す余地もあるだろう」と指摘する市場関係者もいることから、難しい展開になることもあり得そうです。

ユーロ圏CPIが過去最高をまたも更新、7月は8.9%

ユーロ圏のインフレ率は7月にまたも過去最高を更新しました。欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が29日に発表した7月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.9%上昇となり、6月の8.6%上昇から伸びが加速しました。また、市場予想は8.7%上昇であり、今回の結果はこの数値も上回っています。

現状、食料品やエネルギーの値上がりが続いていますが、食料品とエネルギーを除くコアCPIも7月は前年同月比4.0%上昇と、こちらも過去最高の伸び率を記録しました。強まる物価上昇圧力への対応として、ECBは21日に0.5ポイントの大幅利上げをおこないましたが、大幅利上げの圧力はまだ続きそうです。

なお、ECBのラガルド総裁は、「インフレ期待が定着しつつあることを示すあらゆる兆候に対応することが重要だ」との見解を示しています。

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