概要
- 4月の米CPIは、総合・コア共に前月から伸びが鈍化
- 早期利下げへの期待はやや高まったが、6月に利下げをする可能性は低い
- 日本の1~3月期四半期実質GDP速報値は、2四半期ぶりのマイナス成長に
- GDPの低迷で、次の利上げ実施が遅れる可能性
- 4月の米小売売上高は、結果が市場予想を下回った
米CPIが総合・コア共に前月から伸び鈍化
4月の米消費者物価指数(CPI)は、総合が市場予想前年同月比3.4%上昇、結果3.4%上昇となり、市場予想と結果が一致しました。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は、市場予想が前年同月比3.6%上昇、結果も3.6%上昇となり、こちらも市場予想と結果が一致しました。
ただし、総合は前月の3.5%上昇、コア指数は3.8%上昇から伸びが鈍化しています。今回のCPIの結果によって、早期利下げへの期待はやや高まったと言えます。
ある市場関係者は「年内利下げの可能性が出てきた」としつつ、「FRB(米連邦準備制度理事会)が行動を起こすには、インフレ率低下を示す数値がもう少し必要だろう」と語りました。パウエルFRB議長は、「FRBは忍耐強くあるべきで、インフレが継続的に鈍化している証拠を待つ必要がある」との見解を示しています。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁も「現在の金利水準をもう少し長く維持する必要がある」としており、シカゴ連銀のグールズビー総裁からも今回のCPIの結果について、「利下げを支持する前にこうした報告をさらに目にしたい」との考えが示されたことから、少なくとも6月に利下げをすることはなさそうです。
現在、市場は9月に利下げが開始され、年間で計2回0.5ポイントの利下げが実施されると予想しています。実際に利下げが実施されるとの観測が強まれば、ドル売りにつながってドル円の下落要因になりそうです。
今月31日にはFRBがCPIよりも重視するインフレ指標である個人消費支出(PCE)が発表されることから、利下げ時期を予想する上でこちらにも大きな注目が集まることになるでしょう。
日本のGDPが2期ぶりのマイナスに
日本の1~3月期四半期実質国内総生産(GDP)速報値は、市場予想が前期比マイナス0.4%、結果がマイナス0.5%となり、結果が市場予想を下回りました。ダイハツ工業や豊田自動織機の認証不正の影響による自動車の大幅な減産や、個人消費や設備投資、輸出の停滞が主な要因となって、2四半期ぶりのマイナス成長となりました。
自動車生産の減産によるGDPへの影響は一時的なものになりそうですが、賃金上昇が物価高に追いつかずに個人消費が低迷していることは継続的な問題になりそうです。ある市場関係者は「一時的要因(自動車や能登半島地震など)によるところも多いので、先行きはそんなに悲観してみていない」とし、「インバウンドも好調で、4~6月期はプラス成長になっていく」との見方を示しました。
インバウンド消費は前期比11.6%増となり、消費額が過去最高を更新しています。政府は来年の外国人旅行者数について、コロナ禍前のピークを上回る水準を目指すとしており、岸田首相は先月、「このペースで進めば今年は2025年の目標を前倒しし、訪日客数、消費額ともに過去最高を達成できる見通しだ」との見方を示していました。
ただ、GDPが低迷している状況で利上げをすれば経済に悪影響を及ぼすことが想定され、日銀の次の利上げ実施は遅れる可能性がありそうです。
米小売売上高が市場予想を下回る結果に
4月の米小売売上高は市場予想が0.4%増、結果が0.0%増となり、結果が市場予想を下回りました。高金利と債務の増加が消費者を苦しめており、これらの影響で消費が控えられていると考えられます。
米経済は底堅い消費者需要に支えられてきましたが、これが軟調になってきたことが示唆されました。雇用統計も結果を下回る結果となったことから、家計が圧迫されて支出が減少し、経済に悪影響を与えるリスクが出てきました。
米国の家計債務は過去最高を更新しており、消費者が苦しんでいることはデータから明らかです。クレジットカード利用者の約6人に1人は、信用枠の90%余りを利用しています。
ある市場関係者は、「CPIと小売売上高の伸び鈍化は、年内1、2回の米利下げに対する投資家の期待を強めるだろう」との見方を示しました。別の市場関係者は「小売売上高が市場予想を下回ったことは注意が必要だ。個人消費の過熱感が薄れるのは良いことだが、一段と深刻な減速につながれば、市場が歓迎できないような経済悪化の前触れになりかねない。」と指摘しています。
ただ、4月の小売売上高が横ばいだった背景には、 アマゾンの春のプロモーションが3月の売上高を押し上げた反動もあります。個人消費が軟化を続ければ利下げ期待が高まり、ドル売りにつながってドル円の下落要因になりそうです。