米雇用者数が予想を大きく上回る伸びに、ユーロ圏が米英に先行して利下げ開始

FXマーケット分析2024年6月11日。
目次

概要

  • 5月の米国の雇用者数は、結果が市場予想を大きく上回った
  • 平均時給の伸びも加速し、市場の利下げ時期についての予想が後退
  • ECBが政策理事会の会合を行い、米英に先行して政策金利を引き下げることを決定
  • ただし、今後の道筋について具体的な言及は無く、政策委員会内で意見の相違があることが浮き彫りに
  • ISMが発表した5月の非製造業総合景況指数は、結果が市場予想を上回った
  • 減速が心配されていた米国経済に、一定の安心感をもたらした

米雇用者数が予想を大きく上回る伸びに、利下げ観測後退

5月の米国の雇用統計が発表され、雇用者数は市場予想が前月比18万人増、結果は27万2000人増となり、結果が市場予想を大きく上回りました。また、平均時給は市場予想が前年同月比3.9%増、結果は4.1%増となり、こちらも結果が市場予想を上回りました。

雇用者数と平均時給が市場予想を上回り、かつ賃金の伸びが前月から加速したため、市場の予想する利下げ時期が後退しています。米個人消費支出(PCE)が前月から横ばいとなっていたことから、インフレが鈍化するとの期待によって市場で早期利下げ観測が高まっていましたが、今回の結果で冷や水を浴びせられる形になりました。

ただし、失業率は市場予想が3.9%、結果も4.0%となり、結果が市場予想を上回りました。失業率が4%となるのは約2年ぶりです。予想を上回る雇用者数の方が注目されることになりましたが、完全に強い雇用統計であったわけではないことには注意しておきましょう。

労働市場の堅調さからインフレ圧力が継続するリスクがあり、米連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げに関して慎重な対応をする可能性が高まっています。ある市場関係者は「このデータだけ見れば、FOMCは今後数カ月、金利を据え置く可能性が高いといえる」と指摘しました。

今月12日に開催されるFOMCの会合では、政策金利の据え置きが見込まれており、今年のいつ利下げが開始されるかという予想に、ドル円やユーロドルなどは大きな影響を受けることになりそうです。今回の雇用統計の発表を受け、シティグループは7月から9月、JPモルガンは7月から11月にそれぞれ利下げ開始時期の予想を先送りしています。

現在、市場は11月に利下げが開始され、年間では計1回0.25ポイントの利下げ実施を予想しています。先週の時点では9月と予想されていましたが、11月に後退しました。

雇用統計の結果から日米金利差の拡大を意識した円売り・ドル買いが強まっており、イエレン米財務長官から為替介入に否定的な発言もあったことから、さらなる円買い介入は難しいとの見方もあり、ドル円の上昇が続く可能性もありそうです。

ユーロ圏が米英に先行して利下げ開始

欧州中央銀行(ECB)は政策理事会の会合を行い、米英に先行して政策金利を引き下げることを決定しました。これで政策金利は、4.50%から4.25%に引き下げられることになります。政策金利の引き下げは4年9カ月ぶりです。

ユーロ圏はインフレの見通しが改善されており、これが利下げ実施につながりました。ただし、今後の道筋について具体的な言及は無く、政策委員会内で意見の相違があることが浮き彫りになっています。

実際、オーストリア中銀のホルツマン総裁は今回の利下げに反対しました。ラガルド総裁も会合後の記者会見で、利下げについて「どれくらいの時間がかかるのかに関しては、先にも行った通り、現時点で話すことはできない」と語りました。 ある市場関係者は「6日の初回利下げは持続的な緩和サイクル開始を示唆するものではないかもしれない。それどころか、新たなガイダンスは引き続き慎重で、将来の動きについて明確な方向性を避けている」と述べています。今後の利下げ時期について、投資家の予想は難しいものになりそうです。

米ISM非製造業景況指数が9カ月ぶりの高水準に

米供給管理協会(ISM)が発表した5月の非製造業総合景況指数は、市場予想が51、結果が53.8となり、結果が市場予想を上回りました。9カ月ぶりの高水準であり、減速が心配されていた米国経済に、一定の安心感をもたらしています。

ISM製造業指数は活動の拡大と縮小の境目である50を下回る48.7、1~3月(第1四半期)の実質国内総生産(GDP)改定値は、前期比年率1.3%増と22年以来の鈍いペースとなっていました。ただ、経済が堅調であればインフレ圧力が継続し、利下げ開始が遅れる可能性があります。

サービスセクターは現状ある程度明るさが感じられますが、製造業の低迷やインフレ、金利といった課題もあり、米国経済全体の軌道については今後も経済指標を注視していく必要があるでしょう。

FXマーケット分析2024年6月11日。

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