米雇用統計は強弱入り混じるも利下げ観測強まる、ユーロ圏CPIが目標への低下を示唆

FXマーケット分析2024年7月8日。
目次

概要

  • 6月の米雇用統計は強弱入り混じる結果となったが、早ければ9月にも利下げを開始するとの観測が市場で強まった
  • 為替介入への警戒感は高く、ドル円は神経質な展開が続く可能性
  • 6月のユーロ圏CPIは前月から総合の伸びが鈍化、コア価格指数は同じ数値となり、目標とする2%へ向かっていることを示唆
  • ECB要人は利下げに慎重な姿勢
  • 6月の短観は大企業製造業景況感が市場予想を上回り、2四半期ぶりの改善に
  • 7月の利上げ観測が維持される見込み

米雇用統計は強弱入り混じる結果も利下げ観測強まる

6月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予想前月比19万人増、結果が20万6000人増加となり、結果が市場予想を上回りました。一方、失業率は市場予想が4%、結果は4.1%となり、こちらは市場予想より悪い数値となっています。

非農業部門雇用者数は市場予想を上回ったものの、過去3カ月平均では2021年初め以来のペースまで伸びが鈍化しています。失業率も2021年11月以来の高さにまで上昇し、米連邦準備制度理事会(FRB)が早ければ9月にも利下げを開始するとの観測が市場で強まりました。

ある市場関係者は、「失業率は年末までに4.5%まで上昇すると我々はみている。7月もしくは8月の雇用統計で4.2%に達すれば、連邦公開市場委員会(FOMC)は9月の会合で利下げに踏み切るだろう」と語っています。別の市場関係者は、「今回はFOMCが待ち望んでいた類いの雇用統計だ。軟化してはいるが適度に強いデータであり、今年2回の利下げを正当化する可能性がある」との見解を示しました

現在、市場は9月に利下げが開始され、年間では計2回0.5ポイントの利下げが実施されると予想しています。利下げ期待が高まれば、日米の金利差が縮小するとの思惑からドル円は下落しやすくなりますが、円安に歯止めがかかるかは不透明です。

ドル円が約38年ぶりの高値圏で推移する中で為替介入への警戒感は高く、神経質な展開が今後も続きそうです。

ユーロ圏CPIが2%目標への低下傾向を示唆

6月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は、総合が市場予想前年同月比2.5%上昇、結果も2.5%上昇となり、市場予想と結果が一致しました。価格の変動の激しい食品やエネルギーなどを除くコア価格指数は市場予想が前年同月比2.8%上昇、結果は2.9%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。

総合は前月の2.6%上昇から伸びが鈍化、コア価格指数は同じ数値となったことで、欧州中央銀行(ECB)が目標とする2%へインフレ率が向かっていることが示唆されました。

ただし、ラガルドECB総裁は「十分なデータを収集し、インフレが目標値を上回るリスクは過ぎたと確信できるには時間がかかるだろう」との認識を示しています。また、ECB政策委員会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁も、「私の感覚では、早過ぎる動きは遅過ぎる動きよりも大きなリスクを生む」と述べています。

現在、市場は年2回0.5ポイントの利下げを予想していますが、追加利下げが実施されたとしても年末になる可能性がありそうです。政策委員会メンバーのシムカス・リトアニア中銀総裁は、「7月利下げの可能性は消えたと思う」としており、少なくとも7月に利下げが実施される見込みは薄いです。

インフレ率は2%台まで低下してきましたが、まだインフレとの闘いは終わっておらず、利下げ実施の具体的な時期は今後のデータ次第となるでしょう。

大企業製造業景況感が市場を上回る、7月利上げ観測維持へ

日銀が発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が市場予想プラス11、結果はプラス13となり、結果が市場予想を上回りました。2四半期ぶりの改善となり、先行きもプラス14と改善が見込まれていることで、日銀の7月の利上げ観測が維持されそうです。

企業のインフレ期待を示す「企業の物価見通し」は、企業が想定する消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率が、平均で1年後2.4%、3年後2.3%、5年後2.2%となり、日銀が目標とする2%を上回る数値となっています。インフレ率が2%を上回る見込みであれば、日銀は利上げをしやすくなります。

足元の円安加速もあり、市場では7月の金融政策決定会合で日銀が国債買い入れの減額計画と同時に追加利上げを決めるとの思惑が根強いです。日銀は追加利上げについて「経済・ 物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになる」としています。

ただし、7月の利上げを予想する市場関係者はまだ少数派です。1〜3月期の実質国内総生産(GDP)が前期比0.5%減から0.7%減に引き下げられたこともあり、ある市場関係者は「経済の下押し材料が出てくる中での利上げは難しい」との見方を示しました。

FXマーケット分析2024年7月8日。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次