政府・日銀の為替介入でドル円急落、米CPIが総合・コア共に鈍化で利下げ期待高まる

FXマーケット分析2024年7月15日。
目次

概要

  • ドル円が161円台半ばから一時157円台半ばまで急落を見せ、日本政府・日銀による為替介入が実施されたとの見方が市場で流れた
  • 日銀の当座預金増減要因の予想値と市場の推計値との差から、円買い介入で使われた金額は約3兆5000億円と想定される
  • 6月の米CPIは、総合・コア共に予想を下回った
  • どちらも前月から伸びが鈍化しており、総合CPIは前月比で0.1%低下と新型コロナ禍の初期以来の数値に
  • 6月の米PPIは、結果が市場予想を上回った

政府・日銀の為替介入でドル円急落、神田財務官は明言避ける

ドル円が161円台半ばから一時157円台半ばまで急落を見せ、日本政府・日銀による為替介入が実施されたとの見方が市場で流れました。日銀の当座預金増減要因の予想値と市場の推計値との差は約3兆5000億円となっており、これが円買い介入で使われた金額だと考えられます。

神田財務官は、「足元の為替の動きはファンダメンタルズに沿った合理的な動きとは言えない」とし、「投機が支配しているマーケットになっていると言われている」と述べつつも、「為替介入の有無についてはコメントする立場にない」として、介入に実施について明言を避けました。

ある市場関係者は、「変動の大きさは確かに介入が入った可能性を示唆する。かなり迫力がありトレーディングデスクには波紋が広がった」と説明しました。ドル円が約4円も急落することは非常に珍しいことから、介入が疑われるのは当然のことだと言えます。

ただし、ドル円の上昇は米国と日本の金利差によるものが大きく、日米の金融政策に変化が無い限り円売りの根本的な解決にはなりません。市場参加者に円の対ユーロ相場について水準を尋ねる「レートチェック」を実施したとの報道もありましたが、クロス円に関しても各国の金融政策が変化しない限り、一時的な影響で終わりそうです。

日銀は市場参加者の意見も確認するという慎重な姿勢を見せており、7月に利上げがある可能性は低いかもしれません。ある市場関係者は「7月末開催の次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合までに、ドル円が161円台まで戻ってしまう可能性は十分にあろう」との見解を示しています。

米CPIが総合・コア共に鈍化で利下げ期待高まる

6月の米消費者物価指数(CPI)は、総合が市場予想を前年同月比3.1%上昇、結果は3%上昇となり、結果が市場予想を下回りました。また、価格の変動の激しい食品とエネルギーを除くコア価格指数は、市場予想前年同月比3.4%上昇、結果は3.3%上昇となり、こちらも結果が市場予想を下回っています。

どちらも前月から伸びが鈍化しており、総合CPIは前月比で0.1%低下と新型コロナ禍の初期以来の数値です。米国のインフレは第1四半期に再燃を見せていましたが、再び鈍化傾向に入ったことが示唆されました。

失業率が3カ月連続で上昇しており、経済が鈍化しつつあるように見えることも考えると、米国が年内に利下げする可能性は高そうです。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、「雇用やインフレに関する最近のデータを踏まえると、金利の調整が正当化される可能性が高い」との考えを示しました。

加えて、セントルイス連銀のムサレム総裁は、「6月CPIを含む最近のデータは、金融当局が2%の物価目標に向けてさらに前進していることを示唆する」としています。また、ある市場関係者は「9月利下げ開始のお膳立てをしただけでなく、7月利下げのリスクさえ警戒させる内容だった」との見方を示しました。

現在、市場は9月に利下げが開始され、年間では計3回0.75ポイントの利下げが実施されると予想しています。今のところ、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げサイクルが開始される可能性は高そうです。

利下げ期待が高まれば、日米の金利差が縮小するとの思惑からドル円は下落しやすくなりますが、円安に歯止めがかかるかは不透明です。ドル円が約38年ぶりの高値圏で推移する中で為替介入と見られる動きがあったことから、今週は急騰や急落が起きやすい非常に神経質な展開になるかもしれません。

米PPIが市場予想を上回る伸びに

6月の米生産者物価指数(PPI)は、市場予想が前年同月比2.3%上昇、結果は2.6%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。財のコスト低下を、サービス業の利幅拡大が上回ったことが要因となっています。

一般的にCPIよりもPPIの方が景気を反映させるのが早いと言われており、先行指標として非常に注目されます。通常、PPIの強い数値はインフレの強さを示唆することから利下げ期待の後退につながりますが、6月のCPIが総合・コア共に鈍化したことで、今回のケースでは利下げ期待が後退することはなさそうです。

FXマーケット分析2024年7月15日。

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