相場の世界では損切りとロスカットという言葉をよく聞くと思いますが、その違いは何?と聞かれると、意外に明確に答えられない人が多いかもしれません。本記事では損切りとロスカットの違いと、FXトレーダーとして絶対に知っておかなければならない損切りの重要性について詳しく解説します。
損切りとロスカットとは何が違うの?
損切りとは読んで字のごとく、損失を切る、つまり損失を確定させることを言います。損切りは普通、トレーダーが自らの判断で行いますが、損切りをしないでそのままにしておくと、含み損がどんどん大きくなってしまうことがあります。そしてそのままにしておくと、証拠金維持率がFX会社の設定した水準に達してしまいます。
損切りとロスカットの違いって?
- 損切り
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含み損のあるポジションを決済することによって損失を確定させること。
- ロスカット
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証拠金維持率がFX会社の設定した値に達した場合、つまり含み損がほぼ証拠金と同じくらいの金額になったら、それ以上はポジションを維持できないため、FX会社が強制的にポジションを決済すること。
ロスカットは損切りの一部となりますが、FX会社が決められたルールに則って強制的に行うことを特別にロスカットと呼びます。
損切りができなければ遅かれ早かれ全損する!?

FXトレードの魅力の一つはレバレッジがかけられる取引です。手持ち資金である証拠金の何倍、何十倍、何百倍という資金量の取引ができるので資金効率が良く、証拠金の何倍もの利益を短期間で出すことも可能です。ただし、トレーダーの予想に反して相場が逆に動いた場合は損失も証拠金に対して大きなものになり、口座残高である証拠金よりも大きな含み損を抱えることはできないため、その前にロスカットされてしまいます。
海外FX会社の最低証拠金維持率は会社によってさまざまですが、だいたい20%~100%の範囲で設定されていますので、ロスカットによってポジションが強制的に決済された時点で証拠金はほとんど残っていないと考えましょう。したがってロスカットされた後は証拠金が少なすぎるので継続してトレードすることはほぼ不可能です。
トレーダーは損切りをロスカットまで待つのではなく、自ら決めたルールに従って適切な位置で損切りすることで損を小さく抑え、ロスカットまで含み損のあるポジションを放置して証拠金のほとんどを失ってしまうという事態を避けなければなりません。
では、次にロスカットになる前にトレーダーが自ら適切な損切りを行うためにはどのような方法や考え方があるか、また、ロスカットになるまで損切りができない人の思考や行動にはどのようなパターンがあるのかを見ていきましょう。
損切りできない人の特徴やパターンとは?

トレーダーであれば誰でもエントリーした瞬間から、そのポジションで利益が出ることを想定しています。そして利益を出したいという感情が強ければ強いほど、また自分の判断は正しいという思い込みが強ければ強いほど、損切りができなくなる傾向があります。
例えばドル円相場が上がると思ってドル円を買ったのに、相場が下がり始めた場合のトレーダーの心理を考えてみましょう。含み損を抱えた時の損切りのできないトレーダーは以下のようなことを考えるでしょう。
- この下落は一時的なものだ。相場は上がるはずだからこの下落に耐えれば必ず上昇する。
- 自分の判断は絶対に正しい、なぜなら株価は上昇しているからだ、米国の金利も上昇している、だから待っていれば相場は必ず上がって来る。今下がっているのは相場が間違っているからだ。
- 5分足チャートの分析でエントリーして相場は下がり始めてしまったが、日足でみれば絶対に上昇パターンだ、だから損切りしないで耐えていれば、いつか相場は上昇してきて必ずプラスで決済できる。
- たのむ、上がってくれ、お願いだ!とお祈りする。
いかがでしょうか?同じように考えたり「あるある」と共感できる人は多いのではないでしょうか?
特に5分足チャートを分析してエントリーしたのに、含み損になってから上位足のチャートを持ち出してきて、自分を正当化しようとする行為は非常に危険です。なぜなら、5分足で20pipsを取りに行っているのに、含み損になって日足でチャートを分析したら3円も下にしかサポートが無かった場合、3円の含み損に耐えなければなりません。
多くの場合、その前にロスカットがやってきますし、ロスカットにならないとしても、3円の含み損に耐えて20pipsを取りに行くトレードがトレード手法として決定的に間違っています。また、別の視点から見た場合、3円も下がることが予想されるのであれば、買いポジションの3円の含み損に耐えるのではなく、下がると判断した時点で早めに買いポジションを損切りして売りポジションを取り直せば、大きな利益を得ることもできるでしょう。
ではどうすれば損切りができるようになるのでしょうか?
損切りを正しく行うための対処法とは?

損切りルールを決める
損切りができない人には以下の方法で損切りルールを決めることをおすすめします。
例えば1回の損切りは証拠金の1%とする、など。
例えば1日の損失の総額は証拠金の5%まで、など。
例えば1週間の損失の総額は証拠金の10%まで、など。
このルールを守ることができれば、損失は小さく抑えることができます。また、感情的になって損失を取り返そうとやっきになっているような場合でも、このルールを守っている限り壊滅的な損失を出すことはありません。ただし、ルールは自分で作り、自分で守らなければなりません。ここに大きなハードルがあります。トレードをしている現場では、誰も注意を促してくれたり、ルールを守るためにトレードを止めてくれる人はいませんので、ルールを守るのも破るのも自分次第です。
もし、自分をコントロールすることができなければ、そのトレーダーは衝動と感情によって根拠のないエントリーを繰り返したり、含み損のあるポジションをストップオーダーも出さずに放置したりして、結局いつかはロスカットを経験することになります。
デモトレードで損切りに慣れる
何度やっても自分の作ったルールを自分で破ってしまい、適切な損切りを実行できないトレーダーは、もう一つの対処方法として「デモトレードで損切りに慣れる」ことをおすすめします。デモならいくら勝っても負けてもリアルトレードのように金銭感覚によって感情が動かされることはありません。デモトレードで決められた位置で損切りすることを何度も繰り返せば、損切りは悪いことではなく、資金を守る正しい行為だということを経験によって学ぶことができます。同時に損切りとは「負け」を意味するものではないことも理解できるでしょう。

プロスペクト理論を知る
損切りができない理由の一つにプロスペクト理論があります。プロスペクト理論を知らないといつまでたっても損切りできないトレーダーを卒業できません。
プロスペクト理論は簡単にいうと、人間は損失を回避するためには大きなリスクを取る傾向がある、ということです。この心理的な傾向はすべての人が生まれながらにして持っているものなので、何も考えないでトレードすれば、当然損切りはしたくない、つまり損失を確定させたくない、という心理が働き、少しでも含み損が少なくなるまで待とうと考えたり、プラスになるまでは我慢だ、と考えたりします。

例えば、1000円の損切りを回避するために、1万円の含み損に耐えることを選択するようなことです。これは人間の持っている自然な感情の動きです。誰でも損切りはしたくないし、損切りをすることに抵抗があるのは自然なことだということを理解しましょう。だからといってその自然な人間の感情に従ってトレードを繰り返すと、トレードのリスクリワードが悪くなります。つまり、利益は早々に確定し、損失は長く引っ張ってしまうトレードが多くなり、利益1に対して損失1以上になってしまう場合がリスクリワードの悪いトレードです。例えば利益を1取るために損を5出すことを繰り返していれば、口座の残高はどんどん減っていくのはわかるでしょう。
これを防ぐためには、適切な損切りによって損を小さくコントロールする必要があります。少なくとも、利益1に対して損失1、できれば利益1に対して損失は1以下を維持することができれば、勝率が50%であれば資金は減りませんし、50%以上の勝率があれば資金は確実に増えていきます。正しく損切りができないトレーダーは、今一度自分の勝率とリスクリワードを確認しましょう。
損切りのできないトレーダーは、以下のことを肝に銘じておきましょう。
- FXトレードは利益確定と損切りを繰り返しながら資金を増やしていく資産運用なので、損切りを恐れないことが大切です。
- FXトレードで勝率100%はあり得ないので、いかに損失を小さく抑えるかを常に意識してトレードしましょう。
- 適切に損切りをしなければ、たった1回のトレードで全証拠金を無くしてしまう可能性があります。
- 損切りは悪いことではなく、資金を守るための正しい手段です。
- 決められた位置で損切りできたら、トレーダーとして正しい判断と行動ができた自分を褒めましょう。
まとめ
トレーダーはトレードしている限り損切りと付き合って行かなければなりません。しかし、損切りは悪いことではなく、むしろ資金を守ってくれる手段だということをしっかりと認識しましょう。勝ったり負けたりしながら資金が増えていくことがFXトレーダーの正しい姿なので、1回の損切りができないために全てを失うことのないよう、損切りに対する正しくポジティブな認識を心がけましょう。