概要
- ECBのシュナーベル理事が、0.5ポイントの利上げを9月もおこなう可能性について示唆
- 「ECBが7月に0.5ポイントの利上げをおこなって以来、ユーロ圏のインフレ見通しが根本的に変わったとは思わない」との認識を示した
- シュナーベル理事は「ややタカ派的」な人物
- ゴールドマンと野村が、中国の2022年のGDP成長率予想をさらに引き下げ
- ゴールドマンは3.3%から3%に、野村は3.3%から2.8%への引き下げ
- ゴールドマンと野村は共に、「ゼロコロナ政策」を要因の一つにあげている
- 10日の米CPIの発表直後に2円以上の急落を見せたドル/円だが、この一週間は打って変わって堅調に上昇し、一時137円台前半を付けた
- 9月のFOMCの注目度を考えると、7月につけた139円台付近は上値が重くなる可能性も
ECBのシュナーベル理事が大幅利上げを示唆
欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル理事が、7月と同程度の利上げを9月もおこなう可能性について示唆しました。シュナーベル理事は「ECBが7月に0.5ポイントの利上げをおこなって以来、ユーロ圏のインフレ見通しが根本的に変わったとは思わない」との認識を示しています。
また、「価格上昇圧力が速やかに消えることはない」とし、「短期的にインフレがさらに加速する可能性を排除しない」と明言しました。加えて、インフレ予想を示す大半の指標は引き続き抑制されているものの、「抑制が利かなくなるリスクが高まっていることを示唆する指標は多い」と指摘しています。なお、9月のECB理事会における政策判断(政策金利決定)については、「今後のデータをもとに決定が下される」とし、「自分が直近のデータを見るなら、7月に抱いた懸念は和らいでいない」とも述べました。
ECBが9月に0.5ポイントの利上げをおこなうことは市場もすでに織り込んでいるため、0.5ポイントの利上げであれば市場に大きな混乱は起きないと思われます。
しかしながら、シュナーベル理事は有力派ではあるものの、あくまでも「やや有力派的」といった人物です。そのため、今回のシュナーベル理事より、さらに有カ派的な理事達の発言にも注意が必要でしょう。
中国経済の見通し下方修正、過度なコロナ対策と猛暑
ゴールドマン・サックス・グループと野村ホールディングスは、中国の2022年の国内総生産(GDP)成長率予想をさらに引き下げました。ゴールドマンは今年のGDP成長率見通しを3.3%から3%に、野村は3.3%から2.8%への引き下げをおこないました。
今回の引き下げの要因としては、ゴールドマンのエコノミストチームは、「7月の統計や抑制されたインフレ、与信の伸び悩みが内需不足を裏付けた」と指摘しています。さらに、「新型コロナウイルス感染が拡大しているほか、猛暑で電力供給も圧迫され、新たな大型刺激策が講じられる公算も小さい」と分析しました。
野村のエコノミストらは「コロナ感染状況が最近悪化しているほか、ロックダウン(都市封鎖)の拡大で8月の活動データは前月をさらに下回る恐れがある」との認識を示しています。加えて、「現在の猛暑も景気に打撃となる可能性がある」としました。
ゴールドマンと野村は共に、新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む中国の「ゼロコロナ政策」を要因の一つにあげていますが、現在は海の魚でさえその対象になっています。というのも、福建省の沿岸都市、アモイ(厦門)の当局は漁師への毎日の検査だけでなく漁獲物についても検査を実施しているからです。
水揚げされた魚の口に検査用のスワブを挿入する様子はSNS上で話題となり、「ゼロコロナ」の行き過ぎた姿を象徴していると言えます。もし中国政府が大規模な景気刺激策に踏み切ったとしても、現在の「ゼロコロナ政策」を続けるのであれば景気への効果は限定的になりそうです。
ドルが全面高、ドル/円は一時137円台前半まで上昇
10日の米CPIの発表直後に2円以上の急落を見せたドル/円ですが、この一週間は打って変わって堅調に上昇し、一時137円台前半を付けました。理由としては、米リッチモンド連銀のバーキン総裁が、「金融当局は高インフレを抑制させる決意だ」とし、「その取り組みの過程で米国のリセッション(景気後退)を引き起こすリスクもある」との認識を示したことが挙げられます。
ドル指数は約1カ月ぶりの高値を付け、ドルは主要10通貨に対して全面高となりました。また、ジャクソンホール会合でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を26日に控え、タカ派姿勢が示されるとの見方からドルが買われやすくなりそうです。ただし、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の注目度を考えると、7月につけた139円台付近は上値が重くなるかもしれません。