概要
- ドル円が32年ぶりの水準へ上昇し、148円台後半で取引を終えた
- ドル円の次のターゲットは心理的な節目となる150円
- 150円というドル円の心理的な節目をブレイクすれば、政府や日銀に再度の行動を求める圧力が国内的に高まる可能性
- 米コアCPIが6.6%上昇となり、40年ぶりの大幅な伸びを見せた
- 11月と12月のFOMCでは0.75ポイントの利上げがおこなわれる公算が大きい
- 利上げが続けば、ドルはさらなる上昇を見せることになる可能性
- 英国のトラス首相が、法人税の引き上げ凍結を撤回すると発表
- トラス首相の発言後、ポンドは下げを拡大し、英10年債は上昇から下落へと転じている
ドル円が32年ぶりの水準へ上昇、148円台後半に
14日にドル円が32年ぶりの水準へ上昇し、148円台後半で取引を終えました。ドル円の次のターゲットは心理的な節目となる150円になります。また、150円に近づいたことで日銀が週明けの17日に、再度円買い介入を実施する可能性に備える必要があるでしょう。
15日に鈴木俊一財務相は、「市場での急激なボラティリティの高まりに日本として極めて憂慮している」との認識を示しました。さらに、神田真人財務官は具体的な措置についてはコメントを控えたものの、「断固たる行動を取る用意がある」と語っています。
市場関係者は日本の金融当局について、「再び介入に動くような譲れない一線が必ずしもあるわけでなく、円下落の速度に重点を置いている公算が大きい」とみています。とはいえ、「日本の国民にとって150円が心理的な節目の水準で、これをブレイクすれば政府や日銀に再度の行動を求める圧力が国内的に高まる」との考えもあるようです。
また、別の市場関係者は「市場は150円に向けてバーを引き上げる可能性があり、そこが現時点で日本の金融当局にとって円安の最大限の許容水準ではないかというのが多くの投資家の観測だ」と述べました。加えて、「ボラティリティの高まりから、市場の神経質な状態は続きそうだ」と指摘しています。
米コアCPIが40年ぶりの大幅な伸び
9月の米消費者物価指数(CPI)は、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数が前年同月比の市場予想が6.5%上昇、結果が6.6%上昇と結果が市場予想を上回り、かつ40年ぶりの高水準となりました。高いインフレ率の定着を防ぐため、米金融当局には一段と利上げ圧力が強まりそうです。
さらに、総合CPIでの前年同月比の市場予想が8.1%上昇、結果が8.2%上昇と結果が市場予想を上回ることになりました。
9月の米雇用統計が堅調な内容だったことに加え、CPIも予想を上回ったことを受け、次回11月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で4会合連続の0.75ポイントの利上げがおこなわれる公算が大きくなりました。さらに、12月の会合でも同じ幅での利上げが実施されるとの観測も広がっています。そして、政策金利の来年のピーク水準に関する市場予想も5%に近づいています。
市場関係者は「CPIが予想を上回ったことで、FOMCは12月会合で利上げ幅を0.5ポイントに減速させるのが困難になるだろう。最新の金利予測分布図(ドット・プロット)では、金融当局は年内最後の会合でのペース減速を示唆していた」と語りました。
利上げが続けばドルは他の国の通貨に対して強くなりやすいため、トレードでは注意が必要になるでしょう。
英首相、法人税引き上げ凍結撤回
14日に英国のトラス首相は、法人税の引き上げ凍結を撤回すると発表しました。財務相の交代を明らかにした直後、急激な方針転換を打ちだしています。法人税率は来年に現在の19%から25%に引き上げられることになりました。
首相は記者会見で、先月発表した大型減税を含む経済対策案について「一部は市場が想定していたよりも過度で、急速だったことは明らか」だと述べました。加えて、「したがって、現時点で目標を実現する方法を変更する必要がある」と語っています。
会見がおこなわれる前に新財務相にはハント元外相が指名されたと、首相府がTwitterで発表しました。さらに、クワーテング財務相はトラス首相から辞任を求められたことを認めています。クワーテング財務相は先月、財源の裏付けのない大型減税案を発表し、市場の混乱を招きました。
トラス首相はハント新財務相が今月末に財政計画を公表するとし、支出の伸びは従来の計画に比べ緩やかになると語りました。この方針転換で財政には年180億ポンド(約3兆円)のプラスになるとのことですが、ポンドは下げを拡大し、英10年債は上昇から下落へと転じています。ポンドの乱高下はまだ続くことになるかもしれません。