概要
- 米コアPCEの伸びが加速し、11月の会合も大幅利上げの見方が強まった
- コアCPIも大きな伸びを見せており、PCEと共にインフレの強さを示している
- 日銀は金融政策決定会合で現状維持を決めた
- 2022~24年度までのコアCPIの見通しを上方修正
- 実質GDPの見通しは22~23年度を下方修正する一方、24年度は上方修正
- 黒田総裁の「今すぐ利上げ、出口が来るとは考えていない」との発言に反応してドル円は上昇
- ECBが0.75ポイントの利上げを発表し、政策金利は0.75%から1.50%へ
- リセッションの可能性が高まる中で、記録的なインフレの抑制を優先
- 利上げは「さらに」継続するとし、これまでの「数回の会合にわたり」という文言は使わなかったため、市場ではタカ派的なスタンスが弱まったと受け止められた
米PCEが伸びを加速、大幅利上げの見方強まる
9月の食品とエネルギーを除く米個人消費支出(PCE)コア価格指数は、前年同月比で市場予想が5.2%上昇、結果が5.1%上昇と市場予想を下回りました。しかしながら前月の結果は4.9%上昇であり、伸びが加速しています。
今回の結果は、物価上昇圧力の広がりと需要の底堅さが示されたと言えます。それにより米連邦公開市場委員会(FOMC)が、11月の会合で再び大幅利上げをおこなうとの見方が強まりました。
また、今月発表された9月の消費者物価指数(CPI)もコア指数が40年ぶりの大きな伸びを見せており、特に住居費や医療で伸びが目立ちました。 PCEと共に米国のインフレの強さと広がりを浮き彫りにしていると言えるでしょう。
FRBはインフレ率を目標の2%に引き下げるため、11月の会合でも0.75ポイントの利上げをおこなう可能性が高いとみられていますが、これらの統計は市場の見方を強めることになりました。足元ではドル安が進んでいるものの、大幅利上げの見方が強まったことはドルの底堅さにつながるかもしれません。
日銀は金融政策維持、コアCPIの見通しを上方修正
日銀は28日におこなわれた金融政策決定会合で、長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策の現状維持を決めました。また、新たに公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、2022年度の消費者物価指数(CPI)の生鮮食品を除くコア指数における見通しを前年度比2.9%上昇と、7月時点の2.3%上昇から上方修正しています。
さらに、23、24年度のコア指数における見通しも、それぞれ1.4から1.6%、1.3から1.6%に上方修正されました。とはいえ、1%台にとどまっていることから日銀が目指す持続的・安定的な2%のインフレ目標の実現は難しそうです。
日銀はコア指数の上方修正について「輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響」とし、見通しは「上振れリスクの方が大きい」としています。実質国内総生産(GDP)の見通しは、今夏の新型コロナウイルスの感染拡大や海外経済の減速を踏まえて22、23年度をそれぞれ2.4から2.0%、2.0から1.9%へ下方修正する一方、24年度は1.3から1.5%へ上方修正しました。GDPに関しては「下振れリスクの方が大きい」としています。
黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の記者会見で「現在の物価見通しは持続的で安定的な物価2%が展望できる状況にはない」とし、「今すぐ利上げ、出口が来るとは考えていない」と述べています。ただし、物価目標の実現に「近づいている」との認識は示しました。
黒田総裁の「今すぐ利上げ、出口が来るとは考えていない」との発言に反応してドル円は上昇しましたが、151円台後半では円買い介入とみられる動きがおこったことから、警戒されて上値は重たくなりそうです。
ECBが0.75ポイントの利上げ、インフレ抑制を優先
欧州中央銀行(ECB)が27日に0.75ポイントの利上げを発表しました。政策金利は今までの0.75%から1.50%となり、ここ10年余りで最高です。今回の大幅利上げはリセッション(景気後退)の可能性が高まる中で、記録的なインフレを抑制することを優先したと言えるでしょう。
2会合連続の0.75ポイントの利上げは市場予想通りであり、7月の利上げ前まではマイナスだった政策金利は1.5%まで大きく引き上げられることになりました。ECBは声明で「インフレ率は引き続きあまりにも高く、長期にわたって目標を上回り続ける見込みだ」との見解を示しました。加えて、政策委員会は「一段の利上げを想定している」と表明しています。
しかし、利上げは「さらに」継続するとし、これまでの「数回の会合にわたり」という文言は使いませんでした。そのため、市場ではECBのタカ派的なスタンスが弱まったと受け止められています。