概要
- 日本のコアCPIが前年同月比3.5%上昇と、約40年ぶりの高水準に
- 日銀が重視するコアコアCPIも消費増税の影響を除くと1992年12月以来の2%台
- CPIの加重中央値も大きく伸びており、価格転嫁が進んでいることが分かる
- 黒田総裁「輸入物価の上昇にともなう価格転嫁の影響は減衰し、物価上昇率は年明け以降に徐々に低下していく」
- FOMC議事要旨「参加者の大部分は、引き上げペースの減速が近く適切となる可能性が高いと判断した」
- ユーロ圏総合PMIが予想外の伸び
- ユーロ圏は予想よりも景気の悪化がひどくならない可能性
日本のコアCPI、約40年ぶりの高水準に
日本の10月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は市場予想が前年同月比3.5%上昇、結果は3.6%上昇となり市場予想を上回りました。さらに、前月の3.0%上昇から伸びが加速しています。
コアCPIが3.6%上昇したのは1982年2月以来であり、実に40年8カ月ぶりの高水準となりました。日銀が物価安定目標に掲げる2%を7カ月連続で上回っています。
日銀が重視する生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIも市場予想が前年同月比2.4%上昇、結果が2.5%上昇と市場予想を上回りました。加えて、消費増税の影響を除くと1992年12月以来の2%台に乗せています。
総合CPIも前年同月比3.7%上昇と前月の3.0%上昇から大きく伸びており、価格変動の小さい品目のみを取り出したCPIの加重中央値は前年同月比1.1%上昇と、前月の0.5%から倍以上となりました。値上げに消極的な品目でも価格転嫁が進み、公共料金も今後値上げが見込まれます。30年続くデフレからの脱却がやっと見えてきたと言えるかもしれません。
原材料費などの価格転嫁が進む中、生鮮食品を除く食料は前年同月比5.9%上昇と1981年3月以来の高い伸びを見せました。上昇寄与度は1.33ポイントで、エネルギーの1.18ポイントを上回っています。食料品が物価を大きく押し上げていることが分かります。
サービスについても0.8%上昇となり、消費増税の影響を除くと1998年8月以来の高水準となりました。全国旅行支援の効果に加え、外食の上昇、昨年値下げされた携帯電話通信料の押し下げ効果が無くなってきたことでプラス幅が拡大しています。
最近の急激な円安進行も輸入物価の上昇を通じ、消費者物価を押し上げています。日米の金融政策の方向性の違いを材料としてドル円は10月に152円付近まで上昇し、32年ぶりの水準となりました。その後は政府による円買い介入や米CPIの伸び鈍化などを受け、足元では下落を見せています。
しかしながら、日銀の黒田東彦総裁は「輸入物価の上昇にともなう価格転嫁の影響は減衰し、物価上昇率は年明け以降に徐々に低下していく」との見方を示しています。さらに、「今後の企業の価格設定行動や賃金の動向を丁寧に点検していく」との方針も述べました。
市場関係者も「コアCPIの伸び率はピークアウトに近い。エネルギーの伸びが落ちると時差をともなってコアの伸びも落ちる」との見解を示しています。
FOMC議事要旨、利上げペースの減速が近く適切に
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表され、「参加者の大部分は、引き上げペースの減速が近く適切となる可能性が高いと判断した」と記されていたことが分かりました。12月会合での利上げ幅を0.5ポイントに減速する方向に傾いていることが示唆されています。
加えて、様々な当局者が「委員会の目標達成に必要なフェデラルファンド(FF)金利の最終的な水準は、従来の見通しを幾分か上回る」と結論付けていました。市場関係者は「委員会の中で利上げペース減速に対する幅広い見解の一致が見られる。そうした見解はブレイナード連邦準備制度理事会(FRB)副議長が擁護してきたとわれわれはみている。一方で金利がどこまで上昇すべきかについては、ほとんど確信が見られない」と語っています。
今回のFOMC議事要旨を受けて米利上げ減速観測が強まり、ドルが売られることでドル円は大きく下落することになりました。
ユーロ圏PMIが予想外の伸び
11月のユーロ圏総合購買担当者指数(PMI)は市場予想が47.0、結果が47.8と市場予想を上回りました。加えて、前月の47.3からも上昇しており、予想外の伸びとなっています。
PMIは50が景気の拡大と縮小の境目を示すため、ユーロ圏の景気低迷が継続中であることを今回の数字は明示しているものの、これまでの予想よりも景気の悪化がひどくならない可能性が出てきました。市場関係者は「リセッション(景気後退)の可能性が高いだろうが、最新のデータはこれまで懸念されていたほど深刻な落ち込みにはならないかもしれないとの希望を与える」と語っています。