FXトレードでついつい熱くなってしまい、1回負けたらその負けを早く取り返そうと無理なトレードをしてさらに大きな損失を出してしまったりすることが初心者にはよくあることでしょう。本記事ではFXトレーダーが一時的な感情や衝動によって大きな損失を出してしまわないための資金管理とその方法について具体的にわかりやすく解説します。
そもそも資金管理って何?
FXトレーダーにとっての資金管理は大きく分けて二つあります。一つは資金計画上の資金管理と、もう一つは日々のトレード管理です。それぞれ説明しましょう。
資金計画上の資金管理とは?
例えば、FXトレードで1年間に100%の利益を目指すことを資金計画といいます。その資金計画に基づいてどのくらいのリスクを取ることができるのか、そしてどのくらいの損失は許容できるのかを計算し、それを実行することが資金管理です。
具体的に資金計画を作ってみましょう。
例えば証拠金を100万円とします。この100万円を1年間で200万円にする計画を立てます。FXのデイトレードで1日何パーセントの利益を出せば、1年後に200万円になるのかを計算してみましょう。
単利運用で考えよう
単利運用とは証拠金の増減に関わらず、1年間いつも同じ量のポジションでトレードする資金の運用方法です。1年間のトレード可能日数を250日とした場合、100万円の利益を上げるためには単純に100万円を250日で割れば、1日当たりいくら稼げばよいのかがわかります。
100万円÷250日=4,000円
4,000円は100万円の0.4%ですから利益率は毎日コンスタントに0.4%、4,000円の利益を出し続ければ、1年で100万円が200万円になる計算です。100万円の証拠金に対して4,000円を稼げばよいので一見簡単そうに思えます。そして4,000円はMT4の1ロットで4pips 、0.5ロットで8pipsです。(わかりやすくするためにドル円が1ドル100円と想定)ただし、当然負ける日もありますから、毎日0.4%、4,000円を狙ってトレードすれば良いわけではなく、勝ったり負けたりした結果の平均利益が毎日0.4%、4,000円になるようにトレードする必要があります。
目標利益は平均で考える
毎日欠かさずに目標利益を達成することを目指すのではなく、ある一定期間のトレード結果をまとめて、一日当たりの平均が目標利益を達成できているか考えます。
具体例で見ていきましょう。まず勝率を60%と仮定し、トレードのリスクリワード(損切り対利益確定)は1:1で考えましょう。その場合、10日間分の成績が下記となります。
10日間トレードをした結果、合計利益が¥40,000となり、一日当たりの平均利益が¥4,000を達成できていることになります。
上図のように、リスクリワードが1:1の比率の場合、勝率60%で平均4,000円の利益を得るためには、1回のトレードで20,000円(利益率2%)の利益を狙ってトレードする必要があります。20,000円の利益は1ロットなら20pips、0.5ロットなら40pipsで20,000円です。(スプレッドは考慮しないこととします)
このように考えていくと、ポジションサイズと目標pips、目標利益金額が明確にわかります。

資金計画ができたら次はトレード管理です
1年で100万円を200万円にするためには、1日の利益目標は20,000円にすると良いことがわかりました。では1日20,000円の利益をどのようにして出せばよいのかを考えます。
ドル円(1ドル100円とします)の場合、1ロット(10万通貨単位)であれば20pipsで20,000円(スプレッドは考慮しない)になりますから、毎日1ロットで20pipsを狙ってトレードすれば良いことがわかります。ドル円のデイトレードで1日20pipsの利益は無理のない達成可能な目標です。ここでもう一度思い出してほしいのが、資金計画ではリスクリワードが1:1で勝率が60%が想定だということです。
つまり、利益を20pipsで確定するのと同じく、損切りも20pipsできちんと行う必要があります。このルールをしっかり守ることによって、トレードを継続していけば資金が順調に増えていくことがわかるでしょう。この決められた値できちんと損切りをするということが、資金計画に織り込まれていることをトレーダーは明確に認識していなければなりません。
そうすれば1回の損切りを躊躇して40pipsになってしまった、ということを防ぐことができます。FXの初心者の多くが1回のトレードに感情移入しすぎてしまい、損切りができないとか、ストップの位置をずらしてしまうとか、ナンピンで何とか逃げようとして安易なナンピンをするなどして1回のトレードで大きな損失をだしがちです。そうなってしまう大きな原因の一つに資金計画がきちんと立てられていないという背景があります。
自分のトレードレコードを正しく分析して、今の成績のままトレードを続けると、将来どうなるのかという展望が見えていない場合、目先の勝ち負けに囚われてしまい、大きな視野を見失うのです。したがって、資金計画をきちんと立て、そのためにトレードルールをきちんと守ることが必須条件で、そうすれば資金は確実に増えていくということを知ることが重要です。

トレードルールを決めよう
資金計画に基づいた資金管理を行う上で、非常に重要なことが安定したトレードです。時には大きく勝つけど時には大きく負ける、というジェットコースターのようなトレードではなく、勝つときは20pips、負けるときも20pipsというように、決められたルールに従って淡々とトレードを繰り返すことで安定した資金管理ができます。そして、安定したトレードをするためには具体的なトレードルールを決めることが大切です。資金管理を行う上で決めると良いトレードルールをご紹介します。
損切りの位置が決められないトレードはしないようにしましょう。
1回のトレードの損失額と1日のトレードの損失額に制限を資金計画に基づいて設定してそれを守りましょう。今回紹介した例では1日の損失制限は2%、20,000円です。したがって、損切りの合計が2万円になった時点でその日のトレードは終了します。
少しでもその日のうちに取り返したいという気持ちが強く働くため、このルールを守ることは意外と難しくなります。さらにトレードをして上手く行けば良いのですが、失敗した場合は損失が想定額を超えることになります。損失は必ず想定内に納めておくことで資金計画に基づいた資金管理ができることを覚えておきましょう。
トレードに熱が入ってしまうと、ついつい感情的なトレードになりがちです。そういうトレードは絶対にしないようにしましょう。それでたまたま勝ったとしても、再現性のないトレードは意味がありません。何よりも大切なことは再現性のある安定したトレードです。安定したトレードとは勝ち続けることではなく、エントリーのルールに従ってエントリーしたら損切りルールに従って損切りし、利益確定ルールに従って利益を確定するということです。まぐれで勝って喜ぶのではなく、いつもと同じことを繰り返すこととそれを継続することに喜びを見出しましょう。
熱くなるタイプのトレーダーは2連敗したら少し休む、というルールを作ると良いでしょう。負けを早く取り返したいという衝動を抑え、冷静さを取り戻し、資金計画を思い出すことが大切です。そして1年後を目指す視点に立ち返り、自分を律することが資金管理にはとても重要です。
複利運用の場合を考えてみよう
FXは複利でも運用が可能です。そして、複利で運用することで資産は指数関数的に増えていきます。ここでは複利運用で100万円を1年で200万円にするためのシミュレーションをしてみましょう。
複利で1年間に100%の利益を得るには?
複利計算は複雑ですが、ネット上にたくさん複利運用を自動で計算できるサイトがあります。複利運用では、元本に対して0.3%の利益を積み重ねることで1年で資金は2倍になります。単利では0.4%でしたが、複利ではそれよりも少ない利益率で資金を2倍にすることができます。
ただし、複利運用の場合は、ポジションサイズを資金が増えるごとに増やしていかなければなりません。例えば証拠金が10%増えたらポジションも10%増やすという具合です。福利運用は最初はゆっくりに思えますが、だんだん資金の増える率が増えていき、ある地点を超えると急上昇します。
下図は10万円の証拠金を1日平均1.5%の利益率で1年間複利運用したときの資産曲線で、資産が大きくなればなるほど資産の増加率も大きくなっていくことがわかります。

安定してトレードできる方は複利運用の方が資金が増える率が単利運用よりもはるかに大きいのでおすすめです。
資金管理上絶対にやってはいけないNGトレード
よくやりがちなNGトレードを例に上げておきますので、自分のトレードを振り返ってみてください。
- 損切りをどこでするかを決める前にエントリーする
- 損切りを入れないでポジションを保有する
- 損切り位置を損が増える方に移動させる
- 含み損を解消したいという気持ちからナンピンする
- 利益確定位置まで待たずに利益を確定させる
- チャンスがないのになんとなくエントリーする
- お酒を飲んでトレードする
このような資金計画を台無しにしてしまう可能性のあるトレードは絶対にしないようにしましょう。
まとめ
FXトレーダーが行う資金管理は、資金計画に基づいてトレードを行う上で非常に重要です。また、資金計画を立てることで資金管理がしやすくなると同時に、資金管理をしっかりすることで資金が増えていくという好循環に繋がります。まずは自分のトレード成績をもとに自分なりの資金計画を作り、資金管理のためのルール作りからはじめて、1年後が楽しみになるようなトレードと管理を目指しましょう。