ECBが歴史的大幅利上げ、FRBはタカ派姿勢を維持

目次

概要

  • ECBが歴史的な0.75ポイントの利上げを実施
  • 利上げの想定回数について、ラガルド総裁は「恐らく今回を含めて2回を上回るが、5回は下回るだろう」との見解を示した
  • FRBのパウエル議長が「インフレ抑制の任務が完了するまで金融当局が尻込みすることはない」と発言
  • ドル/円は145円付近まで急騰を見せた後、一時141円台半ばまで下落、日銀の黒田総裁の円安に関する発言がきっかけとなった

ECBが歴史的な0.75ポイントの利上げを実施

欧州中央銀行(ECB)が歴史的な0.75ポイントの利上げを実施しました。ただ、今回の利上げ幅は市場予想と一致しており、歴史的ではあるもののサプライズではないと言えます。

また、ECBは成長見通しの悪化の中でもインフレとの闘いを加速させ、今後数回の追加利上げを実施する方針も示しました。関係者によると10月に再び0.75ポイントの利上げを実施する用意もあるそうです。ユーロ圏のインフレはエネルギー以外にも広がる動きを見せており、さらにユーロ安への懸念の強まりもあります。

ラガルド総裁は記者会見で「利上げが想定される今後数回とは何回を指すのか」と問われ、「おそらく今回を含めて2回を上回るが、5回は下回るだろう」との見解を示しました。これはFXのトレードにおいて大きなヒントになりそうです。

インフレ率予想については今年と来年分を上方修正しており、2024年の予想も2.3%と、従来の2.1%から引き上げました。23年の成長率予想は0.9%と従来の2.1%から下方修正しましたが、市場予想の0.7%よりも楽観的な見通しになっています。

今回の0.75ポイントの利上げから、ECB政策委員会内のタカ派メンバーが主導権を維持していることが想像できます。8月のインフレ率は9.1%と再び過去最高を更新しており、エネルギー価格の高騰を利上げによって抑えることが難しいとしても、積極的な利上げをしなければインフレ期待が上昇する恐れがありました。

利上げはユーロのレートをいくらか支える可能性があり、ユーロ安によって輸入物価を通じてインフレ率が上昇するという流れを抑えられるかもしれません。ECBは7月にもユーロ安に触れましたが、ラガルド総裁は「ECBは特定の為替レートを目標にはしない」としながらも、「ユーロを巡る状況を非常に注意深く見守っている」とも語りました。

FRBのパウエル議長はタカ派姿勢を維持

ワシントンで開かれた金融政策関連会議で、FRBのパウエル議長は「インフレ抑制の任務が完了するまで金融当局が尻込みすることはない」と述べました。今月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で3会合連続となる大幅利上げを決定する可能性は高いと言えるでしょう。

また、「われわれはこれまでと同様、直ちに、真っすぐに、力強く行動する必要がある」と語りました。加えて、「同僚と私は、このプロジェクトに強くコミットしており、根気強く続けていく」とも述べています。

さらに、「金融当局には物価安定という責務があり、それを引き受けている」と説明し、「歴史は時期尚早な金融緩和を戒めている」との見解も示しており、金利は高い水準でしばらく維持されることになりそうです。しかし、米国の著名な経済学者であるジョンズ・ホプキンズ大学のローレンス・ボール教授らがまとめた論文では、「2%の物価目標を実現するには失業率の大幅悪化を招くことが求められるだろう」とされており、米国経済や世界経済にとって大きなダメージになることも考えておいた方がよいかもしれません。

ドル/円が一時141円台半ばまで急落

今週のドル/円は145円付近まで急騰を見せた後、一時141円台半ばまで急落して142円台半ばで取引を終えました。首相と会談した日銀の黒田総裁の円安に関する発言をきっかけとし、今週に入り円安が急速に進んだことやECBや豪準備銀行、カナダ銀行といった主要な海外中銀の政策決定が一巡したことが主な要因となりました。

市場関係者は「ドル/円相場もさることながら、米国の金利低下を受けたドル全面安の色合いが強い」と説明しています。加えて、「他通貨でドル売りが進む中、クロス円が上昇し円相場の買い戻しを阻んでいたが、黒田総裁が急激な円相場の動きに対してけん制をしたこともあり、ドル/円相場もドル全面安の流れに追いついてきた」との見方を示しました。

日銀の黒田総裁は9日に「為替相場が1日に2円も3円も動くのは急激な変化と認識している」、「急激な為替変動は企業の不確実性を高め好ましくない」と述べています。別の市場関係者は「立て続けに政策当局者がけん制する形で会合を持ってきたことで、海外勢を中心に為替介入と日銀の政策修正への警戒感が広がっていると思う」と語りました。

とはいえ、他の中央銀行が金利を引き上げれば上げるほど円は売られやすくなるため、この流れが長期間続くかは不透明であると言えるでしょう。

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