ユーロ圏のインフレ率が過去最高を更新、大幅利上げ圧力に

目次

概要

  • ユーロ圏のインフレ率が過去最高を更新し、ECBに大幅な利上げを求める圧力がかかることが予想される
  • ECBが大幅な利上げをおこなった場合、ユーロの上昇につながる可能性がある
  • S&P500種株価指数が、上半期としては1970年以来の大幅安を記録した。ただし、歴史的には上半期と下半期のパフォーマンスに相関関係はほとんどない
  • 5月の米PCEはインフレ調整後ベースで今年初の減少となった。景気の足取りが従来の想定よりも弱いことが示唆されている
  • インフレ調整後の実質PCEは今年初の減少である前月比0.4%減となり、エコノミスト予想中央値の0.3%減を下回った
  • 米個人消費支出はインフレ調整後の財の支出が1.6%減少と、今年に入って最大の落ち込みとなった

 

ユーロ圏のインフレ率が過去最高を更新、大幅利上げ圧力に

ユーロ圏のインフレ率が市場の予想以上に上昇しています。欧州中央銀行(ECB)に他国の中央銀行が実施したような、大幅な利上げを求める声が強まりそうな状況です。

欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が発表した6月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比8.6%と、5月の8.1%からさらに上昇しました。ブルームバーグが調査したエコノミストらは8.5%を予想していたため、市場の予想を上回りました。加えて、ユーロ圏のインフレ率は過去12カ月のうち11回で予測中央値を上回っています。

フランスやイタリア、スペインでは過去最高のインフレ率を記録しており、ドイツはインフレ率が低下したものの、一時的な燃料税引き下げや公共交通機関の料金割引がその理由となっています。そして、バルト3国(エストニア・ラトヴィア・リトアニア)ではインフレ率が20%前後に上るという状態です。

そのため、ECBには大幅な利上げを求める圧力がかかることが予想され、ユーロの上昇につながる可能性もあるでしょう。また、円は上半期に対ドルで約15%下落し、上半期としては2013年以来の大幅な落ち込みとなりました が、今後はユーロに対しても大幅に落ち込む可能性がありそうです。

S&P500が上半期としては1970年以来最大の下げ

米国株の代表的な指標であるS&P500種株価指数が、上半期としては1970年以来の大幅安を記録しました。しかし散々な結果に終わったものの、今後の展開はまだ不透明なようです。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの分析によると、歴史的にはS&P500種の上半期と下半期のパフォーマンスに相関関係はほとんどないそうです。

例えば、S&P500種は1970年の上半期に21%下落しましたが、下半期には27%上昇しています。当時は現在の環境に匹敵する高いインフレ率でした。また、2020年には上半期に4%下落しましたが、下半期には21%の大幅高になっています。

1957年以降、S&P500種が上半期にマイナスのリターンとなった年で、下半期も同様にマイナスだった割合は約50%であり、過去のパフォーマンスを基に今後の展開を知ることや予測することは極めて難しいようです。

市場関係者は「需要が減少してもインフレ率は下がらなかった1970年代のような時期になると懸念されていると思う」と述べ、さらに「FRBが利上げ継続を余儀なくされて深刻なリセッションを招くという不安を意味しているのだろうが、それは今起きていることではない」と指摘しています。今回はインフレ率が需要と共に鈍化し、好調な株式市場の背景になると予想しました。

米個人消費支出がインフレ調整後ベースで今年初の減少に

5月の米個人消費支出(PCE)はインフレ調整後ベースで今年初の減少となり、4月分も下方修正されました。インフレの上昇や米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを背景に、景気の足取りが従来の想定よりも弱いことが示唆されています。

FRBがインフレ目標の基準値としているPCE総合価格指数は、前月比0.6%上昇となりました。前年同月比では6.3%の上昇、市場予想は6.4%上昇でした。コア価格指数は前月比0.3%の上昇で伸びは市場予想を下回り、前年比では4.7%上昇と昨年11月以来の小幅な伸びにとどまっています。

そして、インフレ調整後の実質PCEは前月比0.4%減となり、ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は0.3%減であったため、市場予想を下回ってしまいました。

市場関係者は「この日発表された月間ベースの消費に関する詳細は、今年1月から5月の消費の状況がかなり弱く、第2四半期である4月から6月の成長が弱くなることを示している」と指摘しています。

今回の要因としては、インフレ調整後の財の支出が1.6%減少と、今年に入って最大の落ち込みとなったことが大きいようです。特に自動車への支出が減っています。一方、サービス支出は0.3%増となり、住宅関連や公益、ヘルスケアの分野は伸びています。

 

Bloomberg.com
ユーロ圏のインフレ率が過去最高更新、ECBに大幅利上げ求める圧力 ユーロ圏のインフレ率が予想以上に上昇した。欧州中央銀行(ECB)には世界他地域の中銀が実施したような大幅な利上げを求める声が強まりそうだ。

 

 

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