FXトレードではときどきダマシに会い、苦い思いをすることがあると思います。今回は誰でも遭遇するトレード中のダマシに焦点を当て、そのメカニズムと回避方法についてわかりやすく解説します。
ダマシのメカニズム
まずはダマシの基本的な情報と、なぜそういう動きになるのかというメカニズムを見ていきましょう。
ダマシとは?
ダマシとは、本来動くであろうセオリーとは逆の方向にチャートが動くことです。例えばレジスタンスラインのブレイクで買いなど、相場のセオリー通りにポジションを取った時に、相場が一旦はセオリー通りに動くものの、その後そのセオリーとは逆方向に向きを変える動きなどもダマシの典型的なパターンです。
ダマシの起こる場所
ダマシは以下のような場所で発生します。
- レジスタンスラインやサポートラインをブレイクした場所
- インジケーターの売買サインがでた場所レジスタンス
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移動平均線がゴールデンクロスしたら買い、デッドクロスしたら売りなど
- チャートフォーメーションの売買サインの出る場所
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三尊天井のネックラインを下抜けたら売り、三角持ち合いを上抜けたら買い、ダブルボトムのネックラインを上抜けたら買い、など
ダマシのパターン
ダマシには以下のようなパターンがあります。実際のチャートでダマシのパターンを見てきましょう。
- レジスタンスラインやサポートラインブレイクのダマシ
- トレンドラインのブレイクのダマシ
- チャートフォーメーション(チャートパターン)のダマシ
- 欧州序盤でのダマシ
レジスタンスラインやサポートラインブレイクのダマシ
前回高値に引いた水平線などのレジスタンスラインや、前回安値に引いた水平線などのサポートラインをブレイクしたものの、再度戻って来てレジスタンスラインやサポートラインを逆向きに再ブレイクするパターンです。
トレンドラインのブレイクのダマシ
トレンドラインをブレイクしてトレンドが終了したように見せかけて、再度トレンドラインの内側に相場が戻っていくパターンです。
チャートフォーメーション(チャートパターン)のダマシ
ダブルトップやダブルボトム、三尊天井や三尊底のようなチャートフォーメーションを形成した後、そのフォーメーションのセオリーの逆向きに相場が動くパターンのダマシです。
欧州序盤でのダマシ
欧州序盤には東京で作った値動きの逆向きに一度動き、まるで東京時間のポジションのストップを狙ったような動きの後に、再度元のトレンド方向に動き出すような動きをすることがあります。これもダマシの一種です。
ダマシが起こるワケ
レジスタンスやサポートラインをブレイクした場合、多くのトレーダーがブレイク方向にエントリ―します。そのあと相場が伸びていけば良いのですが、そこで伸び悩んでしまうと、エントリーしたトレーダーの心理は徐々に不安になるため、ポジションをクローズする動きが出始めます。
レジスタンスをブレイクして上がっていくはずの相場が上がらないでずるずると下がって来る、サポートをブレイクしたのに下がるはずの相場が下がらないで徐々に上がって来るというような動きが現れると、我も我もと多くのトレーダーがポジションをクローズ(損切り)し始めるため、相場はブレイクした方向とは逆向きに動き出します。そしてこの時の動きはブレイクした時よりも大きく早いことが多く、含み益があったポジションがあっという間に含み損になってしまうこともあります。
大口トレーダーの中にはこのような動きを誘発したり、ダマシの損切りを狙ってトレンドとは逆方向に大きなポジションを取ることもあるようですが、私たちには誰がどのくらい売ったり買ったりしているかを知る術はありません。したがって、トレード中にチャートの動きがおかしいな、と感じたら早いタイミングでダマシを疑うことが早い判断と対処に繋がります。
ダマシにあったときの対処法は?
実際にダマシにあった時、どう対処すればいいのでしょうか?ダマされた!とわかったらできるだけ早く判断して行動することが資金を守る唯一の方法です。
できるだけ早く逃げる!
ダマシにあったとわかったら、少しでも早くポジションをクローズすることが被害を最小限に抑える方法です。例えば、上昇トレンド中のレジスタンスを上抜け、買いでエントリ―した場合、そのレジスタンスのすぐ下に損切りオーダーを置くことが定石です。そしてそのような定番の損切位置には大量の売りオーダーが入り、ダマシによってその大量の損切りオーダーが約定されると相場は大きく下がることが予想されます。
上昇トレンド中であれば、ダマシであっても一旦はレジスタンスラインをブレイクしたことは間違いなく、まだ相場は上昇する可能性は残っていますが、そのダマシがどの程度の押しを作るかはまったく予想できません。上昇トレンドを信じて損切りしないで耐えていると、非常に高いところの買いオーダーによって大きな含み損を長時間抱えることになることも考えられるため、ダマシとわかった時点で一旦ポジションはクローズし、様子を見るのがもっとも安全です。
そしてダマシで買ったトレーダーの損切りが終わり、相場が再度上昇を始めたと確認できればそこからまた買えば良いでしょう。
ドテン
ダマシが起きると、含み損を抱えたトレーダーが同じような場所で損切りし始めるため、。この逆方向に強く動く流れに乗れば、損切り分を短時間に回収できることがあります。
例えば上昇トレンド中にレジスタンスをブレイクしたが、買いが続かず相場がレジスタンスラインを再度下抜けてきたような場合は、レジスタンスを下抜けと同時に損切りし、同時にドテンの売りを仕掛けます。
ダマシにあった後のドテンは長期トレンド方向とは逆向きポジションの場合が多いため、利益は早めに確定させる方が安全です。逆張りで利益を伸ばそうと欲張っていつまでもポジションを持っていると、相場に反転されて往復ビンタになる可能性があります。
ダマシの回避方法は?
実はダマシを完全に回避する方法はありません。ただし、ダマシの可能性を事前に察知したり、できるだけダマシに合わないようにする回避方法を紹介します。
- マルチタイム環境認識でダマシを予測
- 売りなら戻り、買いなら押しを待つ
- 関連通貨の動きをチェック
- 分割エントリ―
マルチタイムフレーム分析の環境認識でダマシを予測
マルチタイム分析で環境認識をすることでダマシを予測することは可能です。
例えば、4時間足で上昇トレンドが発生していてレジスタンスをブレイクしたらエントリ―したい場面で週足を確認します。すると週足では下降トレンド中で、ちょうどその下降トレンドの半値まで戻ってきているのが現在位置だとします。
この場合、4時間足トレーダーは上昇を見て買いエントリ―を仕掛けたとしても、週足トレーダーは売り目線で戻り売りを仕掛けてくることが予想できます。
すると、そのような場所では売りと買いが交錯し、レジスタンスを超えたからといって簡単には伸びていかない可能性が高く、ダマシが起こることがあらかじめ予想できます。
このようにトレードしている時間軸のチャートだけでなく、長い時間軸のチャートで相場環境を事前に認識しておくことでダマシを予想できます。
売りなら戻り、買いなら押しを待つ
レジスタンスをブレイクしたら買いでエントリーを仕掛けようという場合、ブレイクしてすぐに買いエントリーをするのではなく、その後の動きをしばらく様子見します。レジスタンスをブレイクした後、一旦下がってきてブレイクしたレジスタンス手前で再度上昇するような動き(押し)になった時に、買いでエントリーします。
こうすることでそのレジスタンスラインを多くのトレーダーが意識していることが確認でき、さらにレジスタンスラインがサポートラインになったことでそのラインはより信頼できるため、ダマシが起きにくくなります。
ただし、非常に強い上昇モーメントがあるような場合は、ブレイク後の押しが一切なくそのまま上がって行ってしまうこともあるため、押しや戻りを待つ手法はある程度の裁量を必要とします。もしくは、勢いが強くそのまま行ってしまうような相場は最初からエントリ―しないと決めておけば、高い確率でダマシを回避できます。
関連通貨の動きをチェック
エントリーしようとしている通貨ペアと関連する通貨の動きをチェックすることでダマシを回避できる場合があります。
例えばユーロ円が上昇トレンド中で、レジスタンスラインを超えたら買いでエントリ―しようと考えているとします。この場合、ドル円とユーロドルや他のクロス円の動きを確認すると参考になる場合があります。
ユーロ円が他のクロス円に対して一番最初にレジスタンスラインをブレイクしそうだ、という場合は、そのブレイクはダマシになる可能性があります。他のクロス円が全部同じような動きをしていて、さらに他のクロス円のすべてがレジスタンスラインをブレイクして伸びているような場合は、ユーロ円も同じような動きになる可能性が高く、したがってダマされにくいと考えられます。
分割エントリ―
上昇トレンド中にレジスタンスラインの上抜けで買いでエントリーを仕掛けたいと考えている場合、何回かに分けて予定しているポジション数をエントリーさせる方法です。例えば、レジスタンスラインを上抜けたら1/3、押しが入って戻ってきた時に1/3、ブレイクした足の高値更新で1/3というように分割してエントリ―すれば、途中でダマシの動きになったときに、被害が少なくて済むメリットがあります。
この方法も相場が非常に強く上昇しているような場合は、予定しているポジション数が入れられない可能性もあるので、ある程度の裁量判断が必要です。ただし、ダマシを回避することを第一優先と考えてトレードする場合はとても有効な方法です。
まとめ
トレードでダマシを100%回避することはできませんが、環境認識をマルチタイムで行うとダマシが起きやすい場所が予想できたり、欧州序盤などダマシが起きやすい時間はじっくりと値動きを見るなど、いくつかの方法で、ダマシをある程度回避できることがわかったと思います。
そして、もしダマシに遭遇したらできるだけ早く逃げることが最善です。損切りに躊躇して逃げ遅れるとどんどん損失が大きくなる可能性があります。ダマシは逃げ足の速い人が損失を一番少なくできるということを覚えておきましょう。