概要
- 8月の米CPIは予想を上回る伸びを見せた
- FRBが9月に0.75ポイントの利上げを決めることは確実になったとみられる
- インフレの加速は、生活費や賃金などの高騰が続いていることが要因
- ECBのデギンドス副総裁が「今後数カ月は追加利上げが続く」との見通しを示した
- 「ユーロの下落基調が近く反転することを望む」とも語った
- ECB政策委員会メンバーのナーゲル・ドイツ連銀総裁も、「インフレを抑制するためにECBは利上げを継続する」との見方を示した
- 日銀がレートチェックを実施したとの報道を受け、ドル/円が下落
- ドル/円は145円の心理的節目に近づいていたが、一時142円台半ばまで下落
- 翌日以降は目立った上昇や下落は見られず、円高の流れがこのまま続くかは不透明
米CPI、8月は予想を上回る伸びで大幅利上げ確実か
8月の米消費者物価指数(CPI)は市場予想が前月比0.1%低下、結果は0.1%上昇となり、伸びが加速しました。また、前年同月比では市場予想が8.1%上昇、結果は8.3%上昇となっています。
CPIが予想を上回る伸びを見せたことで、FRBが今月20から21日の連邦公開市場委員会(FOMC)で3会合連続となる0.75ポイントの利上げを決めることは確実になったとみられています。ガソリン代の負担は原油価格の下落により軽減されたものの、インフレの加速は、生活費や賃金などの高騰が続いていることが要因です。
ガソリン価格は前月比で10.6%低下し、過去2年余りで最大の下げとなりました。しかしながら、食品コストは前年同月比で11.4%上昇と、1979年以来の大きな伸びを見せています。そして、電気代は前年同月比で15.8%上昇し、1981年以来の高い伸び率となりました。
生活費の高騰は、低所得者層や中所得者層には大きな経済的負担となるでしょう。また、今回のCPIの結果を受けた株式の下落などの影響で、米国の最富裕層の資産は13日に1日当たりで過去9番目の損失額となる930億ドル(約13兆4000億円)消失することになりました。
連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週、「インフレ抑制の任務が完了するまで金融当局が尻込みすることはないと」語りました。さらに、複数の金融当局者が0.75ポイント利上げへの支持を表明している状態です。
8月のCPI発表後、米国債の利回りは急上昇し、米ドルも上昇しました。短期金融市場は来週のFOMC会合での0.75ポイントの利上げを完全に織り込んだと言えるでしょう。市場関係者は「次回のFOMC会合では間違いなく0.75ポイントの利上げとなるだろう」と述べました。加えて、「11月の会合では0.5ポイントに戻すのではないかと考えていた。現時点では、11月も0.75ポイントが確実と言っていいだろう」との認識を示しています。
ECB副総裁、今後数カ月は追加利上げが続く可能性
欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁は、利上げについて「今後数カ月は追加利上げが続く」との見通しを示しました。加えて、その頻度や度合いについては「根本的にデータ次第だ」との認識を示しています。
また、「景気減速が自然とインフレに対処するわけではない」として、「金融政策の正常化を続ける必要がある」と説明しました。さらに、「われわれが定義する物価安定へとインフレを落ち着かせるよう、完全に決意していることを強く主張する」と述べています。
ユーロのレートについては、「一段のユーロの下落はインフレ圧力にとって有害となり得る。逆にユーロの下落が止まれば、インフレ退治にとって前向きな支援となる可能性がある。ここ最近の下落基調が近く反転することを望む」と語りました。その上で、ECBは為替レートを目標にしていないと改めて説明しています。
ECB政策委員会メンバーのナーゲル・ドイツ連銀総裁も、「インフレを抑制するためにECBは利上げを継続する」との見方を示しており、追加利上げがしばらく続く可能性はかなり高そうです。
日銀のレートチェック報道でドル/円が下落
日銀が市場参加者に為替水準を尋ねる「レートチェック」を実施したとの報道を受け、14日のドル/円は下落を見せました。日本時間早朝は予想を上回る8月の米CPIを受け、「FRBによるさらなる大幅利上げの可能性が高まる」との予測から、ドル/円は145円の心理的節目に近づいていました。しかし、神田真人財務官や鈴木俊一財務相の円安けん制発言に加えてレートチェックの報道が入り、ドル/円は一時142円台半ばまで下落しています。
とはいえ、15日と16日は目立った上昇や下落は見られず、円高の流れがこのまま続くかは不透明であると言えるでしょう。