FXの両建て手法|メリット・デメリットや注意点を解説

FXの両建て徹底解説

FX取引には様々な戦略がありますが、その中でも「両建て」という手法は投資家の間で興味深く議論されています。両建ては一見複雑に思えるかもしれませんが、そのメリットとデメリットをしっかりと理解すれば、投資家が直面する為替リスクを有効に管理する強力なツールとなり得ますが、うまく活用するには知識が必要です。本記事では、両建ての基本的な概念から、その利点と欠点、そして両建てを行う際の注意点までを詳しく解説していきます。

目次

FXにおける両建ての意味とは?

FXにおける両建て
両建てのイメージ

「両建て」とは、FXの中で用いられる戦略の一つで、その名前の通り「両方向に建てる」ことを指します。同一通貨ペアに対して買いと売りのポジションを同時に保有する行為を指し、それぞれを異なるタイミングで決済することで利益を得る狙いがあります。買いと売りのポジションが同一の通貨ペアに対して存在することで、市場の動きにより一方のポジションが損失を出した場合でも、もう一方のポジションでその損失を補うことが可能となります。

FXにおける両建てのメリット

FXにおける両建てのメリット
両建てのメリットを提示しているイメージ

次に、FXにおける両建ての具体的なメリットを確認していきましょう。

為替変動リスクの対策を打てる

FX取引における両建ての最大のメリットは、為替変動に対するリスクヘッジ能力にあります。為替市場は各国の経済指標、要人の発言、政策発表など、さまざまな要因によって動きます。これらの要素はしばしば予期しない動きを引き起こし、取引結果に大きな影響を与える可能性があります。

そのため、市場の動きを正確に予測し、それに基づいて取引を行うのは困難です。このような状況において、両建て戦略は非常に有用なツールとなり得ます。両建てにより、トレーダーは同一通貨ペアの買いと売りの両方向のポジションを同時に保有することができ、これにより為替変動のリスクから一定程度保護されます。

含み損を最小限にして長期取引を行える

FX取引における両建てのもう一つのメリットは、含み損を最小限に抑えつつ長期的な取引を行うことが可能となる点です。具体的なケースを挙げてこのメリットを説明しましょう。

例えば、1ドル=130円の時に1,000通貨分の買いポジションを持ったと仮定します。しかし、市場が予想外に動き、相場が1ドル=125円に下落してしまったとします。この状況では、1,000通貨分の買いポジションに対して5千円分の含み損が発生します。

しかし、両建て戦略を用いることで、この損失を最小限に抑えることが可能となります。仮に含み損が発生したタイミング、つまり1ドル=125円の時に同じ1,000通貨分の売りポジションを追加するとしましょう。

その後、市場がさらに動き、1ドル=120円まで下落したとします。この場合、買いポジションはさらなる含み損(1万円)を抱えますが、一方で新たに追加した売りポジションは含み益(5千円)を生じます。この結果、「買いポジションの含み損1万円 – 売りポジションの含み益5千円」= 含み損5千円となり、相場の大きな下落にも関わらず、含み損を抑えることが可能となります。

このように、両建て戦略を用いることで、予期しない市場の動きに対しても対応しやすく、潜在的なリスクを軽減することができます。また、これにより長期的な取引をより安心して行うことが可能となり、為替市場における持続可能な取引を実現します。

利益を翌年に持ち越して税金対策ができる

FX取引では、年内にポジションを決済するとその時点で利益が確定し、その利益が課税対象となります。したがって、節税対策として、利益を確定させずにポジションを翌年に持ち越すことが考えられます。

しかしこの手法には一つ欠点が存在します。利益を確定させずにポジションを持ち越すと、市場の変動によりせっかくの利益がなくなってしまう可能性があります。これを防ぐために、両建ての手法が用いられます。

具体的には、すでに保有しているポジションと逆のポジションを新たに開くことで両建てとし、含み益を確保しつつ年内にポジションを決済せず、利益を翌年に持ち越すことが可能になります。つまり、両建てを利用することで、節税とリスクヘッジの両方を達成することが可能となります。

FXにおける両建てのデメリット

FXにおける両建てのデメリット
両建てによって損失が拡大しているイメージ

両建てはFXにおいて効果的な手法ですが、下記のようなデメリットも存在します。

取引量・取引回数が増えるのでコストが増える

FX取引における両建て戦略は、その特性上、通常の単一方向の取引と比べて取引量および取引回数が増えるという特徴があります。その結果、スプレッドと呼ばれる取引コストも増加することになります

スプレッドとは、通貨の買値と売値の差のことであり、これは各取引においてポジションを持つたびに発生するコストです。

両建てを行う場合、買いと売りの2つの注文を行う必要があるため、結果としてスプレッドは2倍になります。そのため、両建てを多用する場合は、スプレッドが比較的小さいFX業者を選ぶとコストを抑えることができ、取引がより扱いやすくなるでしょう。

ただし、長期取引を主に行う場合は、売買回数がそれほど多くないため、スプレッドによるコストも相対的に少なくなります。そのため、スプレッドをあまり気にする必要はないかもしれません。

強制ロスカットのリスクが高まる

FX取引では、特に両建て戦略を利用する場合、強制ロスカットのリスクが高まる点に注意が必要です。両建て戦略では、ポジションを2重に持つため、その分、必要となる証拠金も増えます。このため、証拠金維持率が一定の水準を下回った場合、強制的にポジションが決済される「強制ロスカット」が発生しやすくなります

強制ロスカットは、取引に大きな損失をもたらす可能性があるため、そのリスクを適切に管理することが極めて重要となります。そのためには、必要な証拠金を常に多めに保持しておくことが求められます。両建て戦略を最大限に活用するためには、十分な証拠金維持率を維持することで強制ロスカットのリスクを防ぐことが重要となります。

マイナススワップ

FX市場では、通貨の金利差を利用してスワップポイントを獲得できますが、逆に両建てを行うことでスワップポイントがマイナスになり、損をする可能性があります。 買いと売りでスワップポイントが異なり、両建てで同量のポジションを同時に保有することで、合計のスワップポイントがマイナスになることもあります。

このように合計のスワップポイントがマイナスになると、長期で両建てポジションを保有した場合、マイナススワップでコストが発生します。

スワップとは

ポジションを翌取引日に持ち越し(ロールオーバー)した際に発生する金利。例えば、「ある通貨の金利が高く、もう一方の通貨の金利が低い」場合、高い金利の通貨を持っていると、その差額分の「利子」がもらえます。

FXで両建てを行う際の注意点

最後にFXで両建てを行う際の注意点を確認しておきましょう。

利用規約で両建てを禁止しているFX会社もある

FX取引における両建て戦略は、その取引のリスクを分散するというメリットがありますが、全てのFX会社がこの戦略を許可しているわけではありません。実際には、利用規約により両建てを禁止しているFX会社も存在します

このようなFX会社で両建てを行うと、規約違反となり口座が凍結される可能性があります。口座が凍結されると、一切の取引ができなくなるため、取引の自由度が大幅に制限され、潜在的なリスクも高まる可能性があります。

したがって、取引を開始する前には、必ず各FX会社の公式サイトに記載されている利用規約を確認することが重要です。特に、両建て戦略を採用する予定の場合には、その戦略が許可されているかどうかを確認する必要があります。

もし利用規約で確認が難しい場合や疑問点がある場合には、直接カスタマーサポートに問い合わせてみましょう。

MYFX Marketsでは同一口座内の両建ては可能ですが、口座間・業者間の両建ては禁止取引となります。

両建ては手法が複雑になるので難しい

FX取引における両建ては、その特性上、取引の手法が複雑になり、実行や管理が難しくなることがあります。特に、スワップポイントやスプレッドといった要素については、通常の取引よりもより細心の注意を払って考慮する必要があります。これらは取引の損益を大きく左右する要素であり、両建て戦略を用いることで、その影響は一層増す可能性があります。

加えて、両建てでは通常の取引よりも検討や判断すべき事項が増えます。具体的には、取引を開始するタイミング、どの通貨ペアを選択するか、どの程度の資金を投入するか、いつ取引を終了するか等、通常の取引では考えることのないような多くの要素を考慮する必要があります。

金利の変動に注意する

FX取引における両建てでは、スワップポイント(金利)の変動に特に注意が必要となります。メキシコペソやトルコリラなどの高金利通貨は、スワップポイント狙いの投資家に人気がありますが、それらの金利は国の経済状況により急激に変動することがあります。

両建て戦略を用いてスワップポイントを狙う場合、基本的にはポジションを放置してスワップポイントを積み重ねる戦略が一般的です。しかしこの方法のデメリットとして、放置しすぎるとスワップポイントの変動に気付かず、予期せぬ損失が発生する可能性があります。

そのため、両建てを行ったら、定期的にスワップポイントの状況を確認することが重要となります。そして、もしスワップポイントの変動によって利益が期待できない場合は、すぐに対応が求められます。他の通貨ペアに切り替えたり、戦略を変更するなどの対策を行いましょう。

FXの両建ては幅広いメリットを持つ手法

FX取引の世界において、「両建て」という手法は一見複雑に感じるかもしれませんが、本記事を通じてその理解を深め、そのメリットとデメリット、そして適用する際の注意点を理解できたことと思います。為替変動リスクの対策から税金対策まで、両建ては幅広い利点を持つ一方、取引コストの増加や強制ロスカットのリスクなど、把握すべきデメリットも存在します。FX取引は情報と知識がものを言う世界です。どんな戦略を選択するにせよ、それぞれのメリット・デメリットをしっかり理解した上で、自分自身の投資スタイルに合った方法を選ぶよう心がけましょう。

FXの両建て徹底解説

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次