概要
- パウエルFRB議長「前回会合以降に入手したデータは、金利の最終的な水準が従来の想定より高くなることを示唆している」
- 「早ければ次回、ないしその次の会合で利上げのペースを落とすのが適切となるかもしれない」
- 10月の米雇用統計は雇用が力強さを見せたが失業率は上昇
- 市場関係者「労働市場はなお非常にタイトで、失業率が中立水準付近になるにはまだ大きな調整が必要」
- 英中銀が0.75ポイント利上げ、過去33年で最大の利上げ幅
- ピーク金利については、金融市場が織り込んでいるよりも低くなる見通し
パウエル議長、ターミナルレートは予測よりも高くなるとの見方を示す
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、金融当局として利上げペースの減速を念頭に置きつつも、インフレ退治に必要なだけ金利を引き上げる用意があることを明確にするタカ派的な発言をおこないました。FOMCは市場予想通り4会合連続の0.75ポイントの利上げを決めましたが、パウエル議長は記者会見で「前回会合以降に入手したデータは、金利の最終的な水準が従来の想定より高くなることを示唆している」と述べています。
3月の利上げ開始前には0~0.25%だった政策金利は、今回の利上げで3.75〜4.0%となりました。しかしながら米国経済は底堅く、インフレ率は約40年ぶりの高水準で高止まりしている状況です。
パウエル議長は「十分に景気抑制的と考えられる金利水準に達するまでには、なお幾分か道のりが残されている」との見方を示しました。一方、「早ければ次回、ないしその次の会合で利上げのペースを落とすのが適切となるかもしれない」とも語っています。
つまり、ターミナルレート(金利の最終到達点)に近づくにつれて利上げのペースは落とすものの、ターミナルレート自体は9月時点の当局者予測よりも高くなるとの見方を示しました。これにより、投資家の間では従来の想定よりも高めのターミナルレートを織り込む動きが広がることになりました。
2023年の政策金利のピーク予想は、引き締めペース減速の可能性が示唆された後に瞬間的に5.00%を割り込んだものの、取引終了までには新たなピークは来年5月会合時の5.10%との見通しに転じています。今後の焦点は次回の利上げ幅から、政策金利がどこでピークに達して、ピークの水準にどの程度とどまるかに移ることになりそうです。
10月の米雇用統計は強弱入り交じる結果に
10月の米非農業部門雇用者数は市場予想が前月比19万3000人増、結果が26万1000人増となり、市場予想を上回りました。しかし失業率は市場予想3.6%、結果が3.7%となり、強弱が入り交じることになりました。
今回の雇用統計は速いペースでの利上げや景気見通し悪化にも関わらず、労働者に対する需要が引き続き強いことを示唆しています。レイオフ(一時的な解雇)は増えつつあるものの歴史的に見れば非常に低水準であり、極めて高水準の求人件数を背景とした人材獲得競争が賃金を押し上げているのが現状です。
労働需要は経済のエンジンである個人消費を支える上でプラスに働きます。とはいえ、インフレ沈静化を目指すFRBの取り組みを一層困難にさせ、この先何カ月にもわたり厳しい引き締めを継続することにつながるでしょう。FRBのパウエル議長は労働市場の状況について、「明白な形ではまだ軟化していない」と述べています。
しかし、雇用の増加ペースは鈍化しつつあり、10月の雇用者数の増加幅は市場予想を上回ったものの、伸びは前月比減少となった2020年12月以降で最小となりました。市場関係者は、「10月の雇用統計は労働市場についてまちまちなシグナルを送っている。雇用の伸びは力強かった一方で、失業率が大きく上昇したためだ。データのノイズを整理した上でのわれわれの結論は、労働市場はなお非常にタイトで、失業率が中立水準付近になるにはまだ大きな調整が必要ということだ」との見解を示しています。
雇用統計発表後にドルは全面安となり、ドル円は146円台半ばで取引を終えています。
英中銀が0.75ポイント利上げ、過去33年で最大
イングランド銀行(英中央銀行)が政策金利の0.75ポイント引き上げを発表しました。利上げ幅は市場予想通りですが、過去33年で最大となっています。
しかし、将来も大幅利上げが続くとの市場の予想は強く打ち消し、市場の予想通り金利が上昇すれば2年にわたるリセッションにつながると警告しました。ピーク金利については、「金融市場が織り込んでいるよりも低くなる」との見通しも示しています。
中銀が予測の前提とした市場のピーク金利予想は約5.25%ですが、金利を3%で維持した場合にはリセッションはより短期で緩やかなものになり、インフレ率は2年後にほぼ中銀の目標水準になるとしました。