環境認識という言葉は聞いたことがあっても、その具体的なやり方や手順についてはよくわからない、という人も多いかもしれません。本記事ではFX初心者でもすぐに実践できる2つの環境認識のやり方について詳しく解説します。
環境認識とは?
環境認識とは、読んで字のごとく相場全体の環境がどうなっているのかを認識することです。具体的には月足、週足、日足などの長めの時間足のチャートのテクニカル分析によって、相場の大きな動きを把握します。
環境認識の目的
- トレンドを見つける
- トレード戦略を決定する
トレンドを見つける
相場の環境には大きく分けて2つの種類があり、それらはトレンド相場とレンジ相場です。トレンド相場では相場に流れが出ていることから多くの参加者が相場に参加し、逆にレンジ相場では比較的参加者が少なく値幅も小さくなります。トレンドが出ている通貨ペアをトレードすることで勝ちやすい状況を作ることができます。
トレード戦略を決定する
トレンドが見つかればトレード戦略は半ば自動的に決まります。つまり、上昇トレンドであれば押し目買い、下降トレンドであれば戻り売りです。
環境認識に必要な基礎知識:ダウ理論
環境認識に欠かせない知識にダウ理論があります。特にダウ理論の中の以下の法則はもう一度ここで確認しておきましょう。
・トレンドは明確な転換サインが現れるまで継続する。
ダウ理論を環境認識に使う時のポイントは、どの時間足にトレンドが発生しているのかという点です。例えば月足に上昇トレンドが発生しているからと言って、5分足で押し目買いをしても上手く行かないことが多いのは、トレンド発生を認識した時間足とトレードしている時間足の間に時間軸の差がありすぎるからです。
トレンドが発生していると認識した環境とトレードしている時間足の環境をよく観察することが大切です。
環境認識のやり方
- 単一通貨ペアのチャートを使って環境認識を行う
- 複数通貨ペアのチャートを使って環境認識を行う
では、この2つの環境認識のやり方について詳しく見ていきましょう。
単一通貨ペアのチャートで環境認識
単一通貨ペアのチャートを使って環境認識を行う方法とは、例えばドル円ならドル円のチャートだけを使って環境認識を行うやり方です。環境認識をする通貨ペアは1種類だけですが、月足、週足、日足など複数の時間軸チャートを使います。
単一チャートで環境認識をする場合の手順
月足→週足→日足→4時間足→1時間足のチャートを順に見ていきます。実際のドル円チャートを使って環境認識をする具体的な手順を説明していきましょう。
手順① ドル円月足チャートを見る
月足では安値切り上げ、高値切り上げによって上昇トレンドが発生していることがわかります。
手順② ドル円週足チャートを見る
週足でも高値切り上げ、安値切り上げが確認できるため、上昇トレンドが発生していることがわかります。
手順③ ドル円日足チャートを見る
日足でも高値切り上げ、安値切り上げによって上昇トレンドが発生していることがわかります。
手順④ ドル円4時間足チャートを見る
4時間足では高値切り下げ、安値切り下げとなっていて下降トレンドが発生していることがわかります。月足、週足、日足までは上昇トレンドが確認できましたが、4時間足では下降トレンドが確認できるため、上昇トレンド中の押し目を形成している可能性があります。
手順⑤ ドル円1時間足チャートで確認
1時間足でも高値切り下げ、安値切り下げの下降トレンドが確認できます。
ドル円の環境認識
このときのドル円は月足、週足、日足では上昇トレンド、4時間足、1時間足では下降トレンドを形成しています。つまり、4時間足、1時間足では日足レベルの上昇トレンドの押し目を形成していると判断できます。
このことから、ドル円は長期的には上昇トレンド中でありながら、4時間足と1時間足では下降トレンドなので、15分足を使ったデイトレードでは4時間足と1時間足の下降トレンドに乗ってトレードすることに優位性があることがわかります。逆に言えば、4時間足の高値3や1時間足の高値2を上抜ける動きになった場合は、下降トレンドの転換が示唆されることから、4時間足、1時間足レベルでも上昇トレンドが発生し、長期上昇トレンド再開の可能性が出てくると判断できます。
複数通貨ペアのチャートで環境認識
次に複数の通貨ペアのチャートを使って環境認識をする方法を解説します。
複数通貨ペアのチャートで環境認識することのメリット
複数通貨ペアのチャートで環境認識をすることによって各通貨同士の強弱関係がわかります。つまり、もっとも強い通貨ともっとも弱い通貨を特定し、その通貨ペアをトレードすることで次のメリットが得られます。
どの通貨ペアのチャートを使うのか?
まず、トレードする通貨ペアは主要通貨同士の通貨ペアを選択します。主要通貨ペアをトレードすることで次のメリットが得られます。
通貨別取引量の多い通貨ランキング
世界決済銀行が発表している、世界で取引されているさまざまな通貨の取引量ランキングは以下の通りです。
- 米ドル 44%
- ユーロ 16%
- 日本円 8.4%
- 英ポンド 6.4%
- 豪ドル 3.4%
また取引量の多い通貨ペアのランキングは以下の通りです。
- ユーロ米ドル 24%
- 米ドル円 13%
- ポンド米ドル 10%
- 豪ドル米ドル 5%
- カナダドル米ドル 4%
上記のデータから、この5つの通貨ペアが世界の主要通貨同士の通貨ペアという事がわかり、特に上位の3つの通貨ペアである、ユーロドル、ドル円、ポンドドル(※全て米ドル)を抑えておけば、相場の大きな流れは把握できます。
番外編チャート ドルインデックス
ドルインデックスとはドル指数とも呼ばれ、他通貨に対する米ドルの強さを指数化したものです。ドルインデックスは他通貨に対して以下に示す通貨の重み付けで構成され、これらの通貨に対するドルの強さの推移をチャートで表示します。
- ユーロ 57.6%
- 日本円 13.6%
- 英ポンド 11.9%
- カナダドル 9.1%
- スウェーデンクローナ 4.2%
- スイスフラン 3.6%
データ参照元:https://www.theice.com/publicdocs/futures_us/ICE_Dollar_Index_FAQ.pdf
上記のデータからドルインデックスはユーロドルの影響を大きく受けていることがわかります。また、ドルインデックスチャートはリアルタイムで確認することができ、米ドルが強いのか弱いのかを早く知りたい時は、ドルインデックスを見ればすぐにわかるので便利です。
複数チャートで環境認識をする場合の手順
手順① 主要通貨ペアのチャートを確認
まず主要通貨のドル、ユーロ、日本円、英ポンドのチャートを確認します。通貨ペアはユーロドル、ドル円、ポンドドル、ユーロポンドの4ペアです。
下図はユーロドル、ドル円、ポンドドル、ユーロポンドの日足チャートを4枚同画面に表示させたものです。
ユーロドルとポンドドルが下落から上昇、ドル円が上昇から下落、ユーロポンドはほぼ横這いの動きとなっています。このことから相場はドルが主導しており、全体的にはドル買い相場からドル売り相場に転換していることがわかります。
手順② 通貨強弱を見極める
このように、複数の通貨ペアのチャートの環境認識によって、相場全体でどの通貨がもっとも活発に買われたり売られたりしているかを見極めることができます。そしてもっとも強いトレンドが出ている通貨ペアをトレードするという戦略が立てられます。
ドル以外の通貨が相場を主導した場合は?
以下にドル以外の通貨が相場を主導したときは、それぞれのチャートがどのような動きになるのかを説明します。
- ドル円:トレンドなし、もしくは弱いトレンド
- ユーロドル:強い上昇
- ポンドドル:トレンドなし、もしくは弱いトレンド
- ユーロポンド:強い上昇
この場合はユーロが強く買われている相場だということがわかります。
- ドル円:トレンドなし、もしくは弱いトレンド
- ユーロドル:トレンドなし、もしくは弱いトレンド
- ポンドドル:強い下落
- ユーロポンド:強い上昇
この場合は英ポンドに強い売りが発生している相場だということがわかります。
クロス円の環境認識は難しい?
クロス円はドルストレートに比べて値動きの予想が難しい通貨ペアです。クロス円は合成通貨なので、ユーロ円はドル円にユーロドル、ポンド円はドル円にポンドドルをかけ合わせて合成されます。例えば、強いドル買い相場の場合、ドル円は上昇し、ユーロドルやポンドドルは下落します。ユーロ円は強いドル円×弱いユーロドルによって不安定かつ不規則な動きになります。
クロス円が優位に取引できる環境は、強い円買いや円売りのような円が相場をリードしている相場と、ユーロ円なら強いユーロ主導相場、ポンド円なら強いポンド主導相場に限られます。したがって、どうしてもクロス円をトレードしたい場合は、ドル円とクロス円が同じ動きをしている時か、ユーロ円とユーロドル、ポンド円とポンドドルが同じ動きをしているときを狙うと良いでしょう。
まとめ
環境認識はトレード戦略を立てるためにとても有効に機能することが分かったと思います。また複数の通貨ペアを使って環境認識することで、もっとも強いトレンドが出ている通貨ペアを見極め、そのトレードの方向性も確認できます。1つの通貨ペアしかトレードしない人も、他の通貨ペアのチャートによって相場全体がどのように動いているのかを知っているのと知らないのとではトレード判断に大きな違いがでてくることがあるので、複数通貨ペアの環境認識を活用されることをおすすめします。