FXトレーダーの目標は、利益を上げて資産を増やすことですが、長期的な利益を得る人は例外なく適切なメンタル管理を実践しています。そこで、FXで利益を継続的に得るために必要な3つのメンタル管理の秘訣について詳しく解説します。
メンタル管理とは何か？
FXトレーダーにとってのメンタル管理とは、感情的なトレードを避けることです。ポジションを取る際は、根拠を複数持ち、感覚や感情に基づく判断を排除して適切な決断を下します。これにより、安定した成績が得られます。
しかし、人間は感情を持っており、その感情が少なからず正確な判断に影響を与えます。感情に左右されずにトレードするために、適切なコントロールを行うことが「メンタル管理」です。メンタル管理を行うためには、正しい方法と必要な知識を持つことが重要です。
まずは、トレーダーとして知っておくべき「プロスペクト理論」について解説します。
トレーダーに必要なプロスペクト理論とは？
プロスペクト理論は、行動経済学の基本理論で、人間が損失回避のために大きなリスクを取る傾向があることを示しています。
以下の例を考えてみましょう。
2つの選択があり、どちらかを選ばなければならないとします。
A 70％の確率で100万円がもらえる。（30％の確率で何ももらえない）
B 100％の確率で60万円がもらえる。
さて、どちらを選ぶ人が多いでしょうか？答えはBです。
では次の選択です。
C 70％の確率で100万円を失う。（30％の確率で何も失わない）
D 100％の確率で60万円を失う。
この場合はどうでしょうか？多くの人がCを選択します。
AとBではAの方が期待値が高い（より多くもらえる確率が高い）合理的な判断にも関わらず、多くの人が期待値の低いBを選択し、CとDの場合はDの方が期待値が高い（より少なく支払う確率が高い）にも関わらず多くの人がCを選択することから、人は利益は手堅く取り、損失はリスクを負ったとしてもギャンブルをする、つまり人は損得に関しては合理的な判断ができないことがわかります。
このことをトレードに当てはめると、含み益がある場合はすぐに利益を確定させ、含み損の場合はなかなか損切りしないという状況になります。これが繰り返されると、利益は小さく、損失は大きくなってしまい、高い勝率でも大きな損失が壊滅的なダメージにつながり、トータルでの利益を出すことが難しくなります。
こうしたメンタル管理の秘訣は、トレーダーとして成功するために大変重要です。適切な知識と方法を身につけて、感情に影響されず、戦略に基づいた判断を行うことで、FXで長期的な利益を獲得することが可能になります。
すぐに損失を取り返したいという強烈な衝動を抑える方法
プロスペクト理論では、人は損失を確定したがらない性質があることがわかります。しかし、損失を出した後の感情の動きはどうでしょうか？
多くの人が損失を「早く取り返したい」と考えます。トレードでの失敗を冷静に受け止められず、損失感情を早く解消したいと次の取引に急ぎます。これが損失を取り返すどころか、どんどん拡大させる結果になります。
勝ち続けるトレーダーの3つのメンタル管理の秘密
それでは具体的に3つのメンタル管理の秘密を順番に見ていきましょう。
【秘密その1】自分のトレードを分析しデータ化する
まず、次の質問に答えてください。
・今の自分のトレードの勝率は何パーセントですか？
・プロフィットファクターはいくつですか？
・売りトレードの勝率と買いトレードの勝率はそれぞれ何パーセントですか？
・どの時間帯の勝率が高く、どの時間帯の勝率が低いですか？
・どの通貨ペアの勝率が高く、どの通貨ペアの勝率が低いですか？
いかがですか？
いくつ正確に答えられましたか？あいまいにしか答えられない人も、全くわからない、という人もいることでしょう。
では次に、あなたは自分のトレードについて以下のトレードデータを知っているとします。
・ユーロドルの欧州相場の売りトレードの勝率は80％
・ドル円の東京時間の買いトレードの勝率は30％、売りトレードの勝率は35％
今、あなたは東京時間でドル円の買いトレードで損切したばかりです。さっそく、早く今の損失を取り返したいという衝動がわきあがってきました。
もしあなたが上記にある自分のトレードデータを把握していれば、東京時間のドル円の勝率が低いことはわかっていて、これ以上トレードしても損切を繰り返す可能性の方が高いので、東京時間はこれ以上トレードしないことが懸命だという判断ができるでしょう。そして欧州時間のユーロドルなら80％の確率で勝てるので、欧州時間にユーロドルの売りトレードでドル円の負けは取り返せるだろう、と考えるのではないでしょうか。
しかし、自分のトレードのデータを把握していなければ、早く損失を取り返そうとして「ポジポジ病」によって東京時間の勝率の低いドル円で新たな損失を出す確率はかなり高くなります。このように、自分のトレードデータを知っていれば、損切によって一時的に感情的になったとしてもその場で踏みとどまり、冷静に正しい判断ができます。これが勝ち続けているトレーダーが行っているメンタル管理の秘密その1です。
【秘密その2】トレードルールを作り、それを守る
メンタル管理の重要性を理解し、自分のトレードデータを把握することが大切であることがわかりました。この次は、そのデータを基にトレードルールを作成しましょう。
例えば
- 同じ通貨ペアで2連敗後、3連敗する確率が80％の場合、2連敗後は一時休止またはその通貨ペアをその日はトレードしない
- ドル円の勝率が30％、ユーロドルの勝率が80％、トータルの勝率が65％の場合、ドル円トレードをやめて全体の勝率を80％にする
- 買いトレードの勝率が40％、売りトレードの勝率が80％の場合、買いトレードをせず、売りトレードのみ実施
また、どのような手法の勝率が高いのかというデータも大切です。
例えば
- レンジブレイクの勝率が40％、トレンド中の押し目買いの勝率が90％の場合、レンジブレイクをやめてトレンド中の押し目買いだけを狙う
自分のトレードスタイルと実績を正確に把握することが、適切なルール作りの前提条件です。1トレードごとの結果をデータ化することは面倒ですが、その努力がメンタル管理に繋がります。
そして重要なのは、作成したトレードルールを常に守ることです。これが勝ち続けるトレーダーのメンタル管理の秘密その2です。
【秘密その3】長期的視野と資金計画
自分のトレードデータを把握し、トレードルールを作り、そのルールを守ってトレードすれば、資金が安定して増えることを経験できるでしょう。金額の大きさは問題ではなく、資金が安定して増えている事実が重要です。そして、安定した資金増加の事実に基づいて、そのペースでトレードを続けた場合の将来の金額を計算します。
複利運用の場合、毎日平均0.3％の利益を出せるトレーダーは、年間で資金を2倍にできます。例えば、10万円を証拠金としてトレードすれば、0.3％は300円です。100万円なら、3,000円の利益を複利で積み重ねれば1年後に資金は約2倍になります。毎日平均1％の利益を出せれば、1年後に資金は約12倍になります。
このような長期的な視点と資金管理があれば、一時的な感情によって何ヶ月も積み重ねた利益を、たった1回の感情的な損切りができなかったトレードで失うことの恐ろしさが理解できます。今自分が資金計画のどの位置にいるかを常に把握しておくことで、ルールを守り、大きな損失を出さないように注意を払うことに意識が向くでしょう。これが勝ち続けるトレーダーのメンタル管理の秘訣その3です。
まとめ
勝ち続けているトレーダーは自分のことを良く知っています。成績が安定していないトレーダーや負けているトレーダーは自分のことを知らない傾向があります。まず、自分のトレードを正確にデータで把握しましょう。そうすることで、メンタル管理が適切にできるようになります。また、プロスペクト理論にあるような人間として持っている自然な感情に流されたトレードは危険だということもしっかりと覚えておきましょう。
