FXは平日24時間取引が可能ですが、時間帯によって活発に取引される時間帯と値動きが静かな時間帯があり、その時間帯の特徴を掴むことによって効率よくトレードすることができます。それぞれの時間帯の特徴や動きの癖について順番に見ていきましょう。
FX取引が可能な時間
まずFXの取引時間を確認しましょう。
FXは株式市場のように取引所があるわけではないので、月曜日の朝から土曜日の朝まで休みなく連続して取引をすることができます。FX会社によって取引開始時刻と取引終了時刻は多少の違いはありますが、取引時間はおおむね以下の通りとなっています。
*夏時間(サマータイム):アメリカは毎年3月の第2日曜日から11月の第1日曜日までとなっています。本記事では冬時間(標準時間)を基準にしています。
この取引時間の中でオセアニア時間、東京時間、欧州時間、ニューヨーク時間(NY時間)と呼ばれる時間帯があり、同じようにオセアニア市場、東京市場、欧州市場、ニューヨーク市場と呼ばれることもあります。FX取引は各国の金融機関のネットワーク(インターバンク)で24時間継続して行われるため、取引時間の中のある一定の時間を東京時間や東京市場と呼んでいますが、各市場と市場の間の時間に明確な区切りはありません。
また欧州のメインになる市場はロンドン市場になるのでイギリスのロンドンの現地時間が意識され、ニューヨーク時間では米国のニューヨークの現地時間が意識されます。
各市場の時間帯はおおまかに以下のようになります。
土曜日、日曜日以外でFX市場が休場になる日は元日(1月1日)があり、クリスマス(12月25日)は日本時間のみ一部FX会社での取引が可能ですが、市場参加者が非常に少ないことからスプレッドも広く取引には不向きです。その他イギリスとアメリカの祝日はFX取引は可能ですが参加者が大きく減少することから値動きが荒くなったり、逆に動かなくなることがあり、特にアメリカのサンクスギビングデー(感謝祭、11月第4木曜日)はどの通貨ペアもほぼ値動きがなくなる場合があるので注意しましょう。
オセアニア時間
午前5時から午後4時くらいまで
この時間帯はオーストラリアとニュージーランドがメインの市場ですが、市場規模が小さく参加者も少ないため相場に大きな値動きはないことが多く、スプレッドも広い傾向があるので特段の理由がない限り取引には不向きな時間帯です。ただし、早朝に発表されるニュージーランドやオーストラリアの経済指標によってニュージーランドドルやオーストラリアドルが活発に動くこともあります。
東京時間
午前9時から午後5時くらいまで
東京の株式市場が開く午前9時前後から為替取引も活発に行われるようになります。特にドル円、クロス円が多く取引されます。日本の輸出企業や輸入企業も仲値(後述*)にドルの買いや売り注文を多く入れることから、午前10時くらいまではドル円やクロス円が活発に動きます。特に五十日(ごとうび)と呼ばれる5と10のつく日(5日、10日、15日、20日、25日、30日)は大手企業の為替決済のためのドルを買う注文が多く入ることが多いので、ドル円やクロス円が上昇する傾向があります。また月末日も同様にドル買い需要が多いことからドル円やクロス円が短期的に上昇することがあります。
特段材料がなく、午前10時前にドル円が上昇する場合は、仲値に向けたドル買い需要が多い傾向にあり、午前10時を過ぎるとドル買いが止まることがあるため、それまでの上昇は続かずに逆に下がってしまうな場合もありますので注意しましょう。東京市場の特徴はドルと円が活発に取引されますが、ユーロやポンドといった欧州通貨はそれほど活発な値動きにはならないことが多いので、ユーロドルやポンドドル、ユーロポンド、ドルスイスフランなどの欧米通貨同士の通貨ペアは大きく動かない傾向があります。
東京時間の終盤は株式の取引が終わる午後3時ころで、為替取引も欧州勢が参加してくるまではポジション調整がメインの動きとなり、短期的には新規のポジションを建てないトレーダーが多いため、午後2時すぎくらいからは比較的値動きの少ない時間帯になります。
*仲値:仲値とは銀行がその日の為替取引に使う各通貨の為替レートを決めることで、午前9時55分の為替レートが使用されます。
欧州時間
午後5時から午前3時くらいまで
欧州市場のメインはロンドンで、ロンドン証券取引所が開く午後5時くらいからは欧州勢が為替取引を開始します。欧州時間には欧州通貨ペアの取引が活発に行われるため、ユーロドル、ポンドドルといった通貨ペアの値動きが大きくなり、欧州時間に発表されるイギリスやドイツ、ユーロ圏の経済指標の結果を受けた値動きも活発になります。東京時間は狭いレンジで推移していた欧米通貨ペアが勢いよく動き出すタイミングは短期売買のチャンスでもあります。ユーロドルやポンドドルなどの主要通貨ペアをトレードする場合は欧州時間の初動は非常にわかりやすく、短期売買の場合は東京時間のレンジをブレイクする動きを捉える手法などによって効率よく利益を出せることもあります。
また日本時間の午後7時はロンドンの現地時間では昼食時間で、ニューヨーク勢が参入してくる午後10時までの1時間は相場が動かなくなることもよくあります。この時間帯は欧州勢もニューヨーク勢が参入してくるまでに短期のポジションを整理したり新しいポジションは取らないようにする傾向があるためです。ただし、相場に材料があって勢いよく動いている場合はこのような時間帯でも活発に相場も動きますから、ロンドンの昼休みだからといって動かないわけではないので注意しましょう。
ニューヨーク時間
午後10時から午前7時くらいまで
ロンドンの昼食時間が終わる午後10時になるとニューヨークの現地時間も午前9時になり、ニューヨーク勢が為替取引に参入してきます。ロンドン勢に加えてニューヨーク勢も取引に参加することによって相場は1日の中でもっとも活発に動き、値幅も大きくなる傾向があります。午後10時30分にはアメリカの重要経済指標が発表されることが多く、その結果を受けて更に相場が活気づく時間帯です。また、午前0時のニューヨークオプションカットや午前1時のロンドンフィキシングにも相場が大きく動くことがあります。
ニューヨークオプションカットとはニューヨーク市場の通貨オプションの権利行使期限で、オプションがある場合はそのオプションの大きさにもよりますが、オプションを設定したレート前後を巡って活発な売り買いが発生します。午前0時前に急激に相場が動き出した場合はニューヨークオプションカットに絡んだ動きを疑い、オプション設定時刻を過ぎるとそれまでの動きは一気に沈静化することが多いので、午前0時まで勢いよく買われていたからといって飛び乗って午前0時を過ぎると今度は動かなくなったり、逆に下がってしまうこともあるので注意しましょう。
午前1時のロンドンフィキシングとはロンドン市場で金の取引価格を決めることをいい、金はドル建てで取引されるため、為替市場にも大きな影響を出し、特にドルストレートの動きに影響する場合があります。
各市場の取引時間帯別の取引の注意点
下図はユーロドルの1日の値動きと各時間帯の関係です。
ユーロドルは世界で最も取引量が多い通貨ペアですが、欧米通貨ペアのため、オセアニア時間と東京時間では狭い範囲でレンジで推移する傾向にあります。欧州時間が始まると、東京時間のレンジをブレイクして動き出し、欧州時間からニューヨーク時間にかけて値幅がどんどん大きくなり、活発に取引されていることがわかります。ドル円も東京時間にある程度動きますが、やはり欧州時間やニューヨーク時間の方が値幅が大きく勢いが強い傾向があるため、特にデイトレードでは欧州時間やニューヨーク時間にトレードすることで効率よく利益を上げることができることもあります。
各市場の時間帯の取引に関する注意点は以下の通りです。
オセアニア時間
- ニュージーランドドル、オーストラリアドルが主に取引される。
- スプレッドが広い場合があるので取引前にスプレッドを確認する。
- 特に月曜日のオセアニア時間は相場参加者が非常に少ないため、値動きがなかったりスプレッドが非常に広い場合があるので注意する。
東京時間
- ドル円とクロス円がメインに取引される。
- 仲値に向けたドル買いを活用する、もしくは注意する。
- 東京時間終盤は欧州勢が参入してくるまでにポジションを手仕舞ったり軽くする動きが増えるため値動きが不安定になりやすいので注意する。
欧州時間
- ドルストレート、欧州通貨同士の通貨ペアの取引量が一気に大きくなる。
- 欧米通貨ペアの東京時間のレンジブレイクに注意する。
- 欧州時間の欧州各国の経済指標の発表を受けた流れに注意する。
- ニューヨーク時間開始1時間前はニューヨーク勢が参入してくるまでにポジションを手仕舞ったり軽くする動きが増え、ロンドン時間の昼休みも重なるため不安定な値動きに注意する。
ニューヨーク時間
- すべての通貨ペアで取引チャンスがある。
- 短期売買の場合はニューヨークオプションカット、ロンドンフィキシングに向けた大きく勢いのある動きに乗る、もしくは注意する。
- ニューヨーク時間の午後になると欧州勢がいなくなり値動きが少なくなる傾向があるので注意する。
- 特に金曜日のニューヨーク時間の午後(日本時間の土曜日早朝)は週末に向けて相場参加者が極端に少なくなり、値動きも小さくなることに注意する。
まとめ
FXは平日24時間いつでも取引ができますが、時間帯によって活発に動く時と動きが少ない時があることが理解できたと思います。特に短期取引の場合は、値幅を伴って勢いよく動く時間帯が効率よく利益を出せるチャンスなので、取引する時間帯や通貨ペアを適切に選ぶことに留意しましょう。