初心者トレーダーはトレード手法や、どこで売ったり買ったりしたら良いのかという情報に意識が行きがちです。決してそれは間違ったことではありませんが、勝てるトレーダーになるためには正しいトレーダーマインドを作ることがトレード手法と同じくらい、あるいはそれ以上に重要です。
逆に言えば、このトレードマインドが正しく作られていれば、大きく負けることを未然に防ぐこともできます。本記事では勝つための正しいトレードマインドと、よくある負けトレードの時のマインドについて詳しく解説していきます。
【超重要!】プロスペクト理論
プロスペクト理論は行動経済学の基礎の理論で、人間は直面している現実に対する期待値によって正しく判断するわけではなく、自分にとって都合の良いような期待に大きなウエイトを置いて判断してしまう性質がある、というものです。同時に人間は損失を回避しようとする心理が強く働くことから、損失を回避するためには大きなリスクも受け入れてしまうこともわかっています。
具体的に説明しましょう。AとBの二つの選択があります。
A 100%の確率で100万円もらえる
B 50%の確率で200万円もらえるが、50%の確率で何ももらえない
AとBの選択があった場合、多くの人がAを選ぶと思います。
では次の場合はどうでしょうか?
A 100%の確率で200万円の借金が半分になる
B 50%の確率で200万円の借金が0になるが、50%の確率で200万円の借金はそのまま残る
この場合は多くの人がBを選択すると思います。
つまり、人間の自然な心理として利益は確実に手に入れ、損失はリスクを負ってでも回避しようとするのです。これはほとんどすべての人に当てはまり、人間が持って生まれた性質なのだと理解することが大切です。特にトレーダーはこのことをいやというほど実際のトレードで体験します。
トレードを例にとって説明しましょう。
トレーダーAはドル円を売ります。
トレーダーAは雇用統計が悪いのだからドル円は売られるに違いないと思い込み、含み損など気にせずナンピンしてさらに売ります。
トレーダーAは含み損がどんどん大きくなっていくのに、損切という判断をせず、今損切したらもったいないので損失が確定させたくない、と考えて損切しないで相場を見守ります。
含み損が大きくなりすぎてトレーダーAの思考は止まってしまい、証拠金が0になってトレード終了となりました。
あそこで損切していれば・・・と後から見ればわかることが、そのときには損切という判断はできず、もしくはわかっていても行動できない典型的なパターンで、この心理がプロスペクト理論の「損失回避のためには大きなリスクを平気で受け入れる」ということです。損切りができない心理は人間の自然な心理なので、心理のままトレードするとどこかで大きな損失を出すことになります。
トレーダーの心理(マインド)によって発生する大きな損失を回避するためには、さまざまな方法を具体的に実行する必要があります。まずここでは人間には損失を回避するためにリスクを犯してしまう強い心理が誰にでも働くということを理解しておきましょう。
では次に初心者トレーダーが覚えておくと良いトレーダーのマインドについて解説します。
デモトレードとリアルトレードでは天と地ほどの差がある
デモトレードでは勝てるのに、リアルトレードでは勝てないという話はよくあります。これは金銭感覚がトレードに影響していることが原因です。
デモトレードでは勝っても負けても実際にお金は動きませんから、平常心でいられます。つまりゲームと同じ感覚です。また、資金に対して非常に大きなポジションをとったとしても何も感じませんから、多少の負けなら大きなポジションの一か八かのようなトレードで運が良ければすぐに取り返す、という経験もすると思います。
ところがリアルトレードでは自分のお金が増えたり減ったりしますからプロスペクト理論が働きます。
- 少しでも利益がでた時点で利益確定をしてしまい、なかなか利益が伸ばせない
- 損切すると損が確定してしまうので、含み損がなくなるまで待ってしまい、とんでもない損失になってしまう
これはすべてプロスペクト理論の損失回避の心理のあらわれです。このようなパターンを回避するためには、トレードルールを作ることです。ポジションを取る前に適切なポジションサイズを計算し、損切りの位置と利益確定の位置を定めてからエントリーすることで、小さな利益確定と大きな損切は回避できます。他にも、どのようなルール作りが必要なのか、簡単に実践できるものをご紹介します。
簡単に実践できる「勝てるマインド」作り
一度は一通りの失敗を少額のリアルトレードで経験するべき
プロスペクト理論を理解していても、実際の相場でポジションを取ると誰でも冷静に正しい判断をすることは難しいものです。
したがって、一度は間違いを経験するのも一つの方法です。損失回避の心理とはどのようなものか、どう感情が動いて、自分はどう考えて、どう行動するのかをリアルトレードで体験するのです。大きな金額ではなく、少額のリアルトレードで経験することで、小さなリスクで実際の自分の心理を客観的に体験し、それを回避する方法も体験して、正しいトレードマインドを理解して行動できるようにします。
また、損失回避の心理は金額が大きくなればなるほど強く働くということも覚えておきましょう。
負けをすぐに取り返そうとしない
トレードで負けると、その損失をすぐに取り返したいという衝動にかられます。損切の直後に感情的にポジションを取ったり、ポジションサイズを大きくして早く取り返そうとしたりして、結局もう一回負けてしまい、さらに大きな損失を出してしまうことがあります。
こういう負けた時のマインドは一呼吸置くことで冷静になり、早く取り返したいという衝動を抑えることができます。連敗する理由は、トレード手法が相場に合っていないか、そもそも勝ちにくい相場でトレードしているかのいずれかの場合が多いです。したがって、難しい相場で平常心を失ったトレーダーがトレードすれば、連敗と大損が待っています。これを回避するために、連敗したらしばらく休むというルールを作り、それを守ることが大切です。
SNSの人の成績を気にしない
SNSで「私はFXで昨日100万円稼ぎました」とか、「昨日150pips取りました」というような投稿をよく見かけます。このような他人のトレードを目にすると、「私は昨日勝てなかった」とか「私は10pipsしか取れなかった」と自分と比べてしまいます。
このように人のトレードと自分のトレードを比較することによって、自信を無くしてしまうことが初心者の場合は特によくあります。そしてもっと稼がなければと焦りが出てしまい、慣れないことをやったりその人のマネをしたりして結局負けてしまうことが多いと思います。
したがって、他人のトレードと自分のトレードを比べることは意味がありません。それよりも自分のトレードスタイルを確立し、自分流の勝ちパターンを作ることのほうがはるかに大切です。
金銭感覚とトレードを切り離す 「いくら」ではなく、「何パーセント」
トレードしているときに金銭感覚とトレードを切り離すことは非常に難しいことです。しかし、金銭感覚でトレードすると感情的になって冷静にトレード判断ができなくなります。1万円勝った、2万円負けたとお金の計算をしながらトレードするのではなく、3%勝った、2%損切した、とパーセンテージでトレードと資金を管理することが大切です。
トレード中にいくら利益が出ているか、いくら含み損があるかを見ると金銭感覚が働いてしまう場合は、画面から「いくら」というお金が見えないようにして、何pips利益が出ているのか、何pips損失が出ているのかだけが見えるようにすると冷静さを保つことができるでしょう。
資金は指数関数的に増えていくので、早くお金を増やそうと焦らないこと
トレードマインドを正しく保つことができるようになると、トレードの成績も安定してきます。そしてFXトレードでは資金は指数関数的に増やすことができる可能性があります。
資金量に関わらずいつでも同じポジションでトレードをする場合は、資金量に対して常に利益が1だとすると、
1+1=2
2+1=3
3+1=4
9+1=10
となりますが、資金が増えるにしたがってポジションサイズを資金が増えるのと同じ比率で増やしていけば
1+1=2
2+2=4
4+4=8
256+256=512
となります。このように最初はゆっくりに見えますが後には大きな差がつきます。はじめから大きく稼ごうと焦ったり、負けを早くとりかえそうとせず、資金の増えていくペースを全体的にとらえて今自分はどこにいるのかを理解して、冷静に1回1回のトレードに向かうことが最終的に大きな利益を手に入れるための一番の近道です。
まとめ
トレーダーは正しいトレードマインドを理解してそれを維持することがとても大切だということが理解できたと思います。また、そのためにはプロスペクト理論を理解し、トレード中に正しいトレードマインドに基づいた思考と行動を実行する必要があります。
トレードマインドが正しくセットできてはじめて勝てるトレーダーの基礎ができますから、毎日のトレードで自分のトレードマインドがどうなっているのかを確認しながらトレードに臨むようにしましょう。