概要
- ブラード総裁「政策金利を最低でも5〜5.25%に引き上げるべき」
- 「政策金利については5〜7%程度になる可能性がある」
- 市場では12月に0.5ポイント利上げし、来年に政策金利は5%前後でピークを付けると予想されている
- 10月の英CPIは前年同月比11.1%上昇と、41年ぶりの高さに
- トラス前首相が電気・ガス代の上限を設定していなければ、CPIは前年比13.8%上昇していたと試算される
- 米国の長期金利低下と円高が進み、「市場からの圧力が低下している時期こそ日銀が大規模金融緩和の修正に踏み切るチャンス」との声が市場関係者の一部から出ている
相次ぐ米要人のタカ派的発言
この一週間は米国の要人発言が多くありましたが、タカ派的な発言が相次ぎました。中でもセントルイス連銀のブラード総裁は、「インフレを鈍化させるため、金融当局は政策金利を最低でも5〜5.25%に引き上げるべきだ」とタカ派的な姿勢を強く示しています。この発言によってドル円は一時140円台後半まで上昇することになりました。
ブラード総裁は「私は以前、4.75〜5%との見解を示していた」とした上で、「今日のこの分析にもとづけば、5〜5.25%ということになるだろう。それは最低水準だ。この分析によれば、その水準なら少なくとも(十分抑制的と見なされる)領域に達する」と述べています。つまり、「十分抑制的な政策にする」という金融当局の目標を達成するには、政策金利の水準をより高くする必要があり、今後も一層の利上げが必要になるということです。ブラード総裁は「そうした寛容な想定の下であっても、政策金利はまだ十分抑制的と見なされる領域にはない」とし、「十分抑制的な水準に達するためには、政策金利はさらに引き上げられる必要がある」と語っています。
また、ブラード総裁は「十分抑制的な政策金利については5〜7%程度になる可能性がある」との見方を示しました。現在の政策金利は3.75〜4%であり、もし7%まで利上げをおこなうとすればまだまだ長い道のりになりそうです。
ブラード総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)での投票権を持っていますが、12月の会合で0.5、0.75ポイントの利上げを支持するかどうかには言及せず、方向性を設定するのはパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長だとしています。市場では12月に0.5ポイント利上げし、来年に政策金利は5%前後でピークを付けると予想されています。
ブラード総裁は「高インフレの持続を招いた1970年代の金融政策の失敗を繰り返さないように、当局は長期にわたり政策金利を高水準に維持する」との見解を示しました。さらに、「インフレ率が目標に向かって意味のある形で鈍化する明らかな証拠を目にする必要がある」としています。
他の要人からもタカ派的な発言が相次ぎ、ドルを下支えする要因となりました。
英国のインフレ率が41年ぶりの高さに
10月の英国のインフレ率は前年同月比11.1%上昇と、41年ぶりの高さになりました。イングランド銀行(英中銀)が利上げを続ける根拠が強まったと言えます。
10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比11.1%上昇と、市場予想の10.7%を上回ることになりました。食品とエネルギーが物価高の中心になっています。10月はトラス前首相が電気・ガス代を上限設定した月ですが、それでもCPIは前月比で2.0%上昇となってしまいました。食料品については1977年以来45年ぶりの高騰になっています。
もしトラス前首相が電気・ガス代の上限を設定していなければ、CPIは前年比13.8%上昇となっていたと試算されており、来月も0.5ポイントの大幅利上げをおこなうことになりそうです。
進む円高で日銀は金融緩和修正のチャンスか
米国の長期金利低下と円高が進み、日銀が大規模金融緩和の修正をするとの予想が後退しています。しかしながら、「市場からの圧力が低下している時期こそ修正に踏み切るチャンス」との声が市場関係者の一部から出ています。
10月の米消費者物価指数(CPI)は伸びが鈍化し、利上げ継続観測が後退することになりました。米長期金利は4%を割り、152円近くまで上昇したドル円は、一時137円台まで下落しました。
円安阻止の必要性が薄まるとの見方から日銀の政策修正期待は後退していますが、「緩和修正観測後退のタイミングで日銀がYCC(長期金利に目標を設定し、その目標を達成するために必要なだけ国債の売り買いをおこなうこと)柔軟化を検討する可能性は捨てきれない」とする市場関係者もいます。
日銀の黒田東彦総裁は、大規模緩和の副作用の一つとして国債市場の機能低下を国会で示していました。