FRB議長が利上げ停止を示唆、日本のCPIが約42年振りの水準に

FXマーケット分析。2023年5月22日
目次

概要

  • パウエルFRB議長がハト派的な発言、6月の利上げ停止を示唆
  • 市場は6月の利上げ停止を8割以上の確率で織り込み、11月には利下げを予測
  • 米4月小売売上高が前月比で3か月ぶりに増加、消費が堅調であることを示唆
  • コア小売売上高は結果が予想を上回り、基調の強さを感じさせた
  • 4月の全国消費者物価指数は、コアコアCPIが約42年の高水準に
  • 日銀による早期の金融政策修正観測が強まれば、円買いの動きにつながる可能性

パウエルFRB議長が6月の利上げ停止を示唆


パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、FRB本部で開かれた会議で6月の利上げ停止を示唆しました。今までより明確なサインとなっており、ドルの売り圧力につながりそうです。

パウエル議長は、「政策引き締めを長く続けてきた。いまや政策姿勢は景気抑制的で、これまでの引き締めによる遅延効果や、最近の銀行業界のストレスによる信用引き締まりの度合いを巡る不透明性に直面している」との見解を示しました。さらに、「ここまで政策を進めてきたため、データや変わりつつある見通しを注視して慎重に分析する余裕がわれわれにはある」とハト派的な考えを語っています。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁やミネアポリス連銀のカシュカリ総裁、ジェファーソンFRB理事もハト派的な発言をしていることから、6月の利上げ停止はかなり確率が高いと言えそうです。

市場関係者は「パウエル議長の発言は、入手データを評価するため6月に利上げを休止するというのが基本的な見解であることを示唆している」と説明しました。現在、市場は6月の利上げ停止を8割以上の確率で織り込み、11月には利下げを予測しています。

米小売売上高が3か月ぶりの増加

米4月小売売上高は市場予想が前月比0.8%増、結果が0.4%増となり、結果が市場予想を下回りました。ただし、前月比で3か月ぶりに増加し、インフレや高い借り入れコストといった逆風の中でも、消費が堅調であることが示唆されています。

先日発表された雇用統計では、相変わらず低い失業率と力強い賃金の伸びが示されましたが、これらが消費者のモノへの需要を支えていることが明らかになりました。積極的な金融引き締めや債務上限を巡る懸念の中でも、消費はしっかりと持ちこたえているようです。

自動車、ガソリン、建築資材、外食を除くコア小売売上高は0.7%増となり、市場予想の0.3%を上回る伸びを見せました。総合では結果が予想を下回りましたが、逆にコアでは結果が予想を上回ったことで、基調の強さを感じさせます。

市場関係者は「個人消費は縮小しておらず、逆に緩やかな経済成長の継続を支えているとの安心感を市場に広める手助けになる」と説明しました。また、別の市場関係者は「リベンジ消費や余剰貯蓄、堅調な所得増が続いているため、予測されているリセッション入りは後ずれする可能性がある」との見解を示しています。

米経済は現在雇用や賃金、消費が堅調ですが、米連邦準備理事会(FRB)による利上げの累積的な効果や米地銀破綻による貸し渋りなどが、夏から秋にかけてどこまで影響してくるかには注意したいところです。

日本のコアコアCPIが約42年振りの水準に

4月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIが市場予想前年同月比4.2%上昇、結果が4.1%上昇となり、結果が予想を下回りました。ただし、コアコアCPIは約1年もの間伸び続けており、4.1%という数値は1981年9月以来、41年7カ月振りの高水準です。

生鮮食品を除くコアCPIは市場予想前年同月比3.4%上昇、結果も3.4%上昇となり、結果と市場予想が一致しました。ただ、前月の3.1%上昇からは伸びが拡大しています。伸び率が前月を上回るのは3か月ぶりです。

コアCPIとコアコアCPIの上昇は、原材料価格の上昇などを価格転嫁する動きが食料品を中心に続いていることを示唆しています。基調的な物価上昇圧力の強さが示されたことにより、日銀による早期の金融政策修正観測が強まれば、円買いの動きにつながるかもしれません。

4月は生鮮食品を除く食料が前年同月比で実に9%も上昇し、1976年5月以来、47年振りの高い伸びとなりました。宿泊料も8.1%上昇と7カ月ぶりにプラスに転じ、観光需要の回復に強さが見られます。

市場関係者は、「思ったより物価上昇が続いているという認識は、日銀も少しずつ共有していくだろう」との見方を示しました。予想以上の物価上昇は日銀の金融政策修正を連想させますが、植田総裁は「拙速な政策転換により、ようやく見えてきた2%の物価目標達成の芽を摘んでしまう場合のコストは極めて大きい」と述べており、粘り強く金融緩和を継続する方針を強調しています。

FXマーケット分析。2023年5月22日

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