7月の米雇用者数、予想を大幅に上回る結果で利上げ圧力上昇

目次

概要

  • 米国の7月の非農業部門雇用者数は、市場予想の2倍を超える大幅な増加となった
  • FRBが積極的な金融引き締めを継続する理由となる可能性
  • ドル/円は2円程度の上昇を見せたが、今後節目の135円をしっかりと超えるかに注目
  • サマーズ元米財務長官が「インフレを長続きさせた1970年代のような状況になる危険性もある」と指摘
  • BOEのベイリー総裁が「BOEの物価対策が遅過ぎた」との批判に反論
  • ジョンソン首相の後任候補であるトラス外相が、BOEの責務を見直す方針を表明

7月の米雇用者数、予想を大幅に上回る結果に

米国の7月の非農業部門雇用者数は、市場予想が25万人増に対して、結果は52.8万人増と市場予想の2倍を超える大幅な増加となりました。宿泊および飲食サービス、ヘルスケアなど広範囲で雇用が伸びています。

今回の好調な結果は数十年ぶりの高いインフレ率に悩むFRB(米連邦準備制度理事会)が、積極的な金融引き締めを継続する理由になるかもしれません。実際、FRBのパウエル議長は、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利上げ幅は「データ次第」だと述べています。そして、3回連続となる0.75ポイントの利上げの可能性にも含みを残していました。

市場関係者は「金融引き締めが影響し、労働市場は今後数カ月で減速するとみられる。しかし今のところ、労働市場は引き続き非常に好調であり、リセッション(景気後退)懸念を和らげるだろう」との見解を示しています。

さらに、平均時給も前月比0.5%増と市場予想の0.3%増を上回る伸びとなりました。また、6月分の平均時給は速報値の0.3%増から0.4%増に上方修正されましたが、それでも7月分の数字は6月分を上回っています。

別の市場関係者は「0.75ポイントの利上げは確実に次回会合で検討されるだろう」と指摘しました。さらに、「労働市場の強さだけでなく、賃金が上方修正された前月以上に加速したことが重要だ」とも話しています。

ドル/円も2円程度の上昇を見せて135円付近で取引を終えましたが、節目の135円をしっかりと超えてくるかに注目が集まりそうです。加えて、10日に発表される米消費者物価指数(CPI)が、前回の9.1%という結果と比べてどうなるかにも注意すべきでしょう。

サマーズ元米財務長官が長期間インフレ継続の可能性を指摘

サマーズ元米財務長官は「総合インフレが今後鈍化した場合、さらなる行動が必要であるタイミングにもかかわらず、FRBが政策が成功していると結論付けるのではないか」と懸念を示しました。

サマーズ氏は「ノンコアインフレの面で、いくつかの良いニュースが出てくることを私は心配している」と語っています。加えて、「状況は制御できていると米連邦準備制度が考える恐れがある」との認識を示しました。10日に発表される7月の米CPIは、ガソリンの値下がりを主な要因としてインフレ率の鈍化が予想されています。

また、「7月の雇用や賃金の統計が示すように、米経済はなお過熱気味だ」とサマーズ氏は指摘しました。「熱を帯びる労働市場は、持続的なインフレ、または物価上昇の加速」も意味するだろうと述べています。

「インフレ抑制に向けた行動が十分ではなく、インフレを長続きさせた1970年代のような状況になる危険性もある」とも語っており、FRBが1970年代の過ちを再現してしまう可能性について警鐘を鳴らしました。

ベイリー英中銀総裁、インフレ対応への批判に反論

イングランド銀行(BOE)のベイリー総裁は、「BOEの物価対策が遅過ぎ、制御不能なインフレを招いた」との批判に、「1年前に利上げに踏み切っていたなら新型コロナウイルス禍からの回復を損ねていただろう」と反論しました。また、「早期の行動はリセッションのリスクをもたらしたか」という問いに対して、「その通りだ」と語りました。

しかし、イギリスのインフレ率は40年ぶりの高水準となっており、今後数カ月はさらに上昇する見通しであることから、与党保守党はBOEに対する不満を強めています。ジョンソン首相の後任を決める保守党党首選で決選投票に臨むトラス外相はすでに、BOEの責務を見直す方針の表明をおこないました。

ベイリー総裁はインフレが加速した理由について、必要な人材確保の難しさや企業が値上げの必要性を感じている点に触れています。さらに、「政策当局は賃金のスパイラル的な上昇がインフレをあおることを防ぐために行動する必要がある」と指摘しています。

BOEは4日に27年ぶりとなる0.5ポイントの大幅な利上げをおこない、1年超のリセッションに向かいつつあると警告しました。ベイリー総裁は「インフレが定着し、想定通りに低下しないという実質的なリスクにわれわれは対応している」とも語り、「企業は現段階において値上げに抵抗感がないと話す。これが続いてはならない」との認識を示しています。

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