米雇用統計は39万人増、ドル/円は131台付近まで上昇
5月の米雇用統計は予想が前月比約32万人、対して結果は39万人と強さを見せました。雇用統計の発表を受け、米ドルと国債利回りは急伸です。
雇用統計の強さを受けて米ドルや米国債利回りが急上昇したということは、経済が強ければ急激な利上げが必要になるという観測が市場に広まっていることを示しているでしょう。実際、今後5回のFOMCで約200ベーシスポイント(2.0%)の追加利上げがあるとの見方を、市場は織り込んだようです。
さらに、利上げに関してはFOMCで議決権を持つクリーブランド連銀のメスター総裁が、「6月と7月にそれぞれ政策金利の0.5ポイントの引き上げを支持し、その後もインフレが沈静化しなければ9月に0.5ポイントの追加利上げを支持するだろう」と述べています。
加えて、ブレイナードFRB副議長も「市場が6月と7月の0.5ポイントの利上げを織り込んでいるのは妥当な道筋に思える」と発言しています。9月の利上げを休止する可能性が非常に低いとの考えも示しており、要職にある人物達から利上げ支持の発言が相次いでいることは重要なポイントになるでしょう。
目立ったNZドルと豪ドルの下げ
今回、米ドルは主要10通貨に対して全面高になりましたが、NZドルや豪ドルの下げが目立ちました。これは今後のトレードのヒントになるかもしれません。NZドル/米ドル(NZD/USD)、豪ドル/米ドル(AUD/USD)の今後の値動きに注目してみるのもよいでしょう。
米ISM製造業景況指数は21年2月以来の低水準、拡大が鈍化
5月の非製造業総合景況指数は前月から低下し、21年2月以来の低水準となりました。予想56.5に対して結果は55.9と前月の57.1から拡大が鈍化。この結果に対し、目立った米ドル売りはおこらず、米10年債利回りも2.95%付近で横ばいであったことは市場の米ドル買いのセンチメントを示していると言えそうです。
また、ウクライナ問題などの影響による物価高騰の逆風の中でも、消費支出はこれまでのところ持ちこたえています。ただし、ガソリン価格の最高値更新などにともなうインフレの進行が金利の上昇と重なり、今後数カ月以内に消費者が支出を抑え始める可能性があるでしょう。
とはいえ、景気の拡大と後退の分岐点である50を超えていることには留意が必要と言えます。
ドル/円は直近高値をテストする展開か、ユーロドルは下落も
ドル/円はもし130円台に定着することができれば、直近高値の131.35付近をテストする可能性がありそうです。米長期金利が2.9%台で推移するなど日米の金利差拡大が意識されやすくなっており、地合いとしては円安ドル高方向に振れやすいでしょう。ただし、131円台前半には強いレジスタンスゾーンがあるとみられ、利益確定売りに押される可能性があるため注意が必要です。
クロス円でも金融政策の方向性の違い(日銀の緩和継続姿勢)やリスク選好の流れから、幅広い通貨に対して円安傾向となっています。中でも、ユーロ圏の5月消費者物価指数速報値が市場予想を上回り、ECB(欧州中央銀行)の年内大幅利上げ観測が市場に浮上したことから、ユーロ買い・円売りの動きが目立っています。さらに、ユーロ/円は心理的な節目となる140円を突破しており、これによりドル/円でも上昇圧力が強まりそうです。
また、ユーロ/ドルは直近高値の1.078ドル台をテストして超えられなければ、押し戻されて下落する可能性があることから注意が必要でしょう。しかし、対円や対ポンドでは堅調に推移しやすいと思われます。
なお、9日のECB(欧州中央銀行)理事会では、現行の緩和的な政策が維持される公算が大きいでしょう。ただし、ユーロ圏のインフレ進行を受け、ラガルド総裁の記者会見で7月利上げについてより前向きな見解の発言があった場合、市場のセンチメントがリスクオンに傾き、ユーロ買い・米ドル売りを誘発するかもしれません。
そして、米雇用統計でNZドルと共に下げが目立った豪ドルですが、7日にRBA(オーストラリア準備銀行)が政策金利を発表するため、豪ドル/米ドル(AUD/USD)の値動きにも注目です。
ドル/円テクニカル分析
ドル/円はまず130円台の維持が焦点になるでしょう。チャート上に青線で示した130円付近は、5月上旬にサポートラインやレジスタンスラインとして機能していました。130円付近が再びサポートラインとして相場を下支えする場合は、上値トライを意識する局面が続くと予想できます。
次に、チャート上に赤線で示した131円のテストやブレイクにも注目です。6月3日の終値は5月11日の高値130.8円付近であり、131円のテストは十分に想定できるでしょう。もしドル円が131円台へ上昇する場合は、今年最高値である131.35付近のテストが次の焦点になりそうです。