FX取引では、アメリカの経済指標が市場に与える影響は計り知れません。特に、米ドルの基軸通貨としての地位は、世界経済において中心的な役割を果たしています。本記事では、FXトレードにおいて重要な「雇用統計」や「GDP」などの主要指標を一覧で紹介し、それぞれの指標がどのように市場に影響を与えるのかを深く掘り下げていきます。
FXではアメリカの経済指標が重視される
FX市場は、世界中の経済動向に敏感に反応する場所です。その中でも、アメリカ経済指標は特に重要な役割を果たしています。アメリカは世界最大の経済大国であり、その経済動向は世界中の市場に影響を与えるため、FXトレーダーはアメリカの経済指標に注目します。
アメリカの経済動向は他国にも大きな影響を及ぼす
アメリカ合衆国は、世界最大のGDPを持つ経済大国であり、その経済動向は世界経済に大きな影響を与えます。特に、基軸通貨である米ドルの価値変動は、国際市場において重要な役割を果たしています。
2008年のリーマンショックのようなアメリカ発の経済危機が世界中に波及した事例は、アメリカ経済の動向が世界経済に与える影響の大きさを示したものと言えるでしょう。
アメリカの経済動向は単に一国の問題に留まらず、世界経済全体に影響を及ぼす重要な要素です。アメリカ経済の健全な発展は、世界経済の安定にとってもかかせません。そのため、アメリカ経済動向には常に注目が集まっています。
米ドルが基軸通貨としての地位を確立している
2019年の国際決済銀行（BIS）のデータによると、米ドルは取引高の約半分を占め、基軸通貨としての地位を確立しています。外国為替市場では、米ドルを含む通貨ペアの取引量が多く、アメリカの経済指標に大きく影響されます。
外国為替市場（FX市場）においても、米ドルの重要性は顕著です。ユーロ/米ドルや米ドル/円などの通貨ペア（ドルストレート）は、取引量が豊富で、市場参加者も非常に多いのが特徴です。ドルストレートに分類される通貨ペアは米ドルが直接絡むため、アメリカの経済指標によって特に大きな影響を受けます。
さらに、米ドルが直接絡まない通貨ペア、例えばユーロ円などのクロス円も、実質的にはユーロ/米ドルと米ドル/円の組み合わせによって形成されています。このため、米ドルと無関係ではなく、米ドルの強弱がこれらの通貨ペアにも影響を及ぼすことも少なくありません。
米雇用統計やFOMCの政策金利発表時には為替市場が特に活発になることもアメリカ経済指標の重要性を示唆するものと言えるでしょう。
FXでよく使用される主要指標一覧
FXでよく使用される主要な指標は主にアメリカのものです。「どの指標を見れば良いかわからない」場合、アメリカの指標を中心に分析しましょう。アメリカの経済指標は下記の通り、消費関連、雇用関連、企業活動関連など様々な分野が存在します。
| ジャンル | 経済指標 | 説明 |
|---|---|---|
| 雇用関連 | 米国雇用統計 | アメリカの労働省労働統計局（BLS）が毎月発表する雇用情勢を示す指標で重要度が高い |
| ADP雇用統計 | アメリカで給与計算代行サービスを運営するADP社が毎月発表する民間部門の雇用者数に関する指標 | |
| 金融政策 | FOMC声明/議事録 | 連邦公開市場委員会（FOMC）終了後に委員会全体の見解が声明文として示され、3週間後に話し合われた内容など詳細が議事録として公表される |
| フェデラル・ファンド金利（FF金利） | 連邦準備理事会（FRB）がFOMCで発表する金融政策の誘導目標とする金利で、実質的な米国の政策金利にあたる | |
| 景気関連 | 国内総生産(GDP) | 米商務省の経済分析局（BEA）が四半期ごとに発表し、速報値、改定値、確報値に分けて公表される |
| ISM製造業景況指数 | 米供給管理協会が企業の購買担当者のアンケート結果を基に毎月算出する景況感を示す指標 | |
| 貿易関連 | 貿易収支 | 米商務省の経済分析局（BEA）が毎月発表する貿易統計(通関ベース)で示される貿易における輸出額と輸入額の差額で経常収支の項目の一つ |
| 物価関連 | 消費者物価指数(CPI) | アメリカの労働省労働統計局（BLS）が毎月発表するインフレ率を示す指標 |
| 消費関連 | 小売売上高 | アメリカの商務省調査（センサス）局が毎月発表する様々な形態の小売店の売上高を示す指標 |
| 個人消費支出(PCE) | 米商務省の経済分析局（BEA）が毎月発表する個人が消費した財やサービスの支出を示す指標 | |
| 消費者信頼感指数 | 米国の民間調査会社がアンケート調査をもとに毎月発表する個人消費の先行きを示す指標 | |
| 製造業関連 | 鉱工業生産指数 | 米連邦準備制度理事会（FRB）が毎月発表する主に鉱業や製造業の生産動向を示す指標 |
| 住宅関連 | 住宅着工件数 | 米商務省が毎月発表する建設開始となった新築住宅の件数で景気の先行きを示す指標 |
| 中古住宅販売件数 | 全米不動産協会が毎月発表する中古住宅の販売成立件数で景気の先行きを示す指標 |
金融市場では「雇用統計」が最も注目される指標
「雇用統計」とは、失業率や就業者数など、雇用に関連する経済指標のことです。金融市場では、特に米国労働省労働統計局（BLS）によって毎月発表される「米雇用統計」（Employment Situation）が最も有名で注目されています。
米国は世界最大の経済大国であり、労働者を柔軟に解雇できる政策を採用しているため、経済状況の変化に応じて雇用者数が大きく変動しやすいのが特徴です。このため、米雇用統計の結果が市場予想と大きく異なる場合、為替相場に大きな動きをもたらします。
米雇用統計は、労働市場の状態を示す10項目のデータの総称で、中でも下記3つが特に注目されています。
- 非農業部門雇用者数（NFP）
- 失業率
- 平均時給
上記の指標は、米国の経済状況を反映する重要なバロメーターであり、金融市場においては、これらのデータに基づいて投資家が判断を下すための重要な情報源となっています。
非農業部門雇用者数（NFP）とは？
非農業部門雇用者数（Nonfarm Payroll、NFP）は、農業を除く全ての産業における雇用者数の変化を示します。非農業部門雇用者数は、米国労働省労働統計局（BLS）によって毎月発表され、その数値は前月比で計算されます。
非農業部門雇用者数は、製造業、建設業、サービス業など、農業以外のほぼ全ての産業セクターの雇用状況を反映した数値です。
非農業部門雇用者数はアメリカ経済の健全さや成長の度合いを測る上で非常に重要な指標とされています。
NFPの発表は、為替市場や株式市場を含む金融市場に大きな影響を与えることが多く、特に数字が市場予想と大きく異なる場合、為替レートや株価に顕著な動きを引き起こすことがあります。投資家や市場アナリストは、この指標を通じて米国経済の動向を分析し、将来の金融政策や経済の方向性を予測するための重要な手がかりとすることも少なくありません。
失業率とは？
失業率は、労働力人口（就業している人と就業を希望しているが仕事がない人の合計）に占める失業者の割合を示す経済指標です。失業率は以下の計算式で算出されます。
失業率=失業者数÷労働力人口×100
※失業者数：仕事を探しているが見つけられていない人々の数
※労働力人口：就業している人々と失業者を合わせた数
失業率が高いと、経済が不況にあることを示唆することが多く、低い失業率は経済が活況であることを示します。ただし、失業率だけでは労働市場の全体像を把握することはできず、就業者数、労働参加率、長期失業者の割合など、他の指標と併せて考慮しなくてはなりません。
失業率の変動は、消費者の信頼感や市場のセンチメントにも影響を及ぼすため、経済全体に影響を与えることがあります。
平均時給とは？
平均時給は、労働市場の経済指標の一つで、特定の期間における労働者の平均的な時給を示します。平均時給の計算で使う式は下記の通りです。
平均時給=総賃金÷総労働時間
※総賃金：対象となる労働者全体がその期間に稼いだ賃金の合計
※総労働時間：その期間に労働者が働いた総時間
平均時給の変動は、労働市場の状態や経済の健全性を示す重要な指標です。例えば、平均時給が上昇すると、それは労働市場が強く、労働者の賃金交渉力が高まっていることを示唆し、平均時給の低下は、労働市場の弱さや賃金圧力の低下を示す可能性があります。
平均時給は、消費者の購買力や生活水準に直接影響を与えるます。インフレ率や金融政策の方向性を予測する上でも重要で、中央銀行や政策立案者が注目する指標の一つです。
FXではGDPについての理解も重要
GDP（国内総生産）は、ある国の経済活動における全ての商品やサービスの総価値を表す指標で、その国の経済規模と健全性を測る基本的な指標です。FX（外国為替市場）とGDPの関係は直接的な関係はありませんが、国の経済状況を反映する指標として間接的に互いに影響を及ぼすことがあります。
GDPが健全に成長している国では、経済の安定と投資の魅力が増すことで、その国の通貨に対する需要が高まり、通貨価値の上昇が期待されます。逆に、GDPの成長が鈍化または減少する状況では、通貨価値が下落することが多いです。
通貨価値の変動は輸出入にも影響を及ぼし、通貨が強まると輸出品が割高になり、これがGDPの成長に悪影響を与えることもあります。
中央銀行の金融政策は、通貨価値に大きな影響を与え、金利の引き上げは通常、その国の通貨を強化し、逆に金利の引き下げは通貨を弱める傾向があります。金融政策はGDPの成長を促進または抑制するために用いられるものです。よって、間接的にFX市場に影響を及ぼします。さらに、経済の健全性を示すGDPのデータは、投資家のセンチメントに影響を与え、FX市場における通貨の取引に影響を及ぼすことも少なくありません。
このような観点からFXではGDPについて理解しておくことも重要です。雇用統計だけでなく、GDPを確認しておくことで、より明確に経済の状況を見通せるようになるでしょう。
指標を理解しFXトレードに活かそう！
FX取引において、アメリカの経済指標の理解は不可欠です。特に、米ドルの基軸通貨としての地位や雇用統計、GDPなどの指標は市場に大きな影響を与えます。本記事では、これらの主要指標を詳しく解説しました。非農業部門雇用者数（NFP）、失業率、平均時給などの指標の意味とその影響を理解することで、より洞察力のあるFXトレード戦略を立てることが可能です。これらの知識を活用し、効果的なFX取引を目指しましょう。
