概要
- 11月の米PPIは前月比と前年同月比共に市場予想を上回った
- 前年同月比では過去18カ月で最も低い伸び
- サービスの価格は前月比0.4%上昇と3カ月ぶりの高い伸び
- 政策金利のピークの市場予想は4.75〜5%と5〜5.25%が拮抗、13日夜のCPIの結果によって大きく変動も
- 中国政府がゼロコロナ政策におけるロックダウンなどの従来の方針を緩和
- 李克強首相「中国の経済成長は引き続き回復する見通しだ」
- 感染者の急増で死者が200万人を超えるとの予測も
- アジア株の上昇やリスク選好のクロス円上昇につながったが、今後どうなるかは不透明
- ECBレーン理事「追加利上げが見込まれるが、消費者物価の上昇率はおそらくピークに近い」
- 「23年中にインフレ率が6〜7%に下がるか」との問いに「現在の高水準からの当初の低下はそんなところだが、その後も低下が続くだろう」
11月の米生産者物価指数は予想を上回る伸び
11月の米生産者物価指数(PPI)は市場予想が前月比0.2%上昇 、結果が0.3%上昇と市場予想を上回りました。前年同月比でも市場予想が7.2%上昇、結果が7.4%上昇とこちらも市場予想を上回っています。特に、サービスの価格は前月比0.4%上昇と3カ月ぶりの高い伸びを見せました。
10月のPPIは伸びが予想以上に鈍化していたものの、今回の結果は相変わらずの強いインフレ圧力を示していて、今後のFRBの利上げを後押しするものになりそうです。しかしながら、前年同月比では過去18カ月で最も低い伸びにとどまっており、伸び率の減速傾向は継続しています。このまま減速傾向が続けば、市場の予想通りにFRBが来年に利上げを一時停止する可能性は高まっていくでしょう。
日本時間13日夜には11月の消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、CPIも引き続き高い伸び率ながら減速が見込まれています。今年のデータを見ると、PPIはCPIに先行して下がってきているため、11月のCPIもPPIと同じく前年同月比では低い伸びにとどまるのではないかという予想ができそうです。
市場関係者はこの日発表された予想より強い統計を受け、「FRBが来週に0.75ポイントの利上げを継続する可能性は低いが、インフレ面で悪いニュースが出れば、FRBと投資家の両方にとって頭痛の種になる」と語っています。政策金利のピークの市場予想は4.75〜5%と5〜5.25%が拮抗しており、CPIの結果によって大幅な変動が見られるかもしれません。
中国がゼロコロナ政策を緩和、経済成長回復する見通し
中国政府がゼロコロナ政策における広範なロックダウン(都市封鎖)や集団隔離といった従来の方針を緩和させたことで、「中国の経済成長は引き続き回復する見通しだ」と李克強首相が国際機関トップとの会合で語りました。「中国は新型コロナ規制と経済発展をより良く連携させ、国民の健康を守るとともに通常の生産を維持する方針」としていますが、一方で一連の緩和策で生じる爆発的な感染拡大への対応に備える時間はほとんどなく、感染者の急増で死者が200万人を超えるとの予測もあります。
中国政府のゼロコロナ政策の緩和はアジア株の上昇やリスク選好のクロス円上昇につながりましたが、今後どうなるかは不透明であると言えそうです。
ECBレーン理事「インフレおそらくピークに近い」
欧州中央銀行(ECB)のチーフエコノミストであるレーン理事は、「追加利上げが見込まれるが、消費者物価の上昇率はおそらくピークに近い」との見方を示しました。レーン理事の発言はかなりハト派的な発言であると言えます。
レーン理事はインフレ率がピークに達しつつあるかどうかについて、「その判断をおこなうのは多分時期尚早だが、ピークインフレに近い可能性が高いとかなり自信を持って言えそうだ」と語りました。加えて、「今が既にピークか2023年初めに到達するかはまだ不確かだ」とも述べています。
レーン理事は政策金利の利上げ幅について、「追加利上げが必要になると我々は考えているが、既に200ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利上げしており、これまでにおこなった規模を考慮すべきだ」と指摘しました。ユーロ圏の政策金利は現在2%となっています。
消費者物価については「来年の序盤に一定のインフレ加速がある可能性を排除できない」としながらも、「2023年の最初の数カ月が過ぎ、春か夏になればインフレ率は大きく低下するだろう」との見方を示しました。具体的な数値については、「23年中にインフレ率が6〜7%に下がるか」との問いに「現在の高水準からの当初の低下はそんなところだが、その後も低下が続くだろう」と語っています。