概要
- 米国が政策金利を0.5ポイント引き上げ、前回までは4会合連続で0.75ポイント
- パウエル議長、次回のFOMCでの利上げ幅は「今後入手するデータ次第だ」
- 11月の米CPIは総合、コア共に市場予想を下回る
- サマーズ元米財務長官、予想されるリセッションについて「やや時間的に先送りされた様子だ」
- ECBが0.5ポイントの利上げ、前回までは2回連続の0.75ポイント
FOMC利上げペース減速もパウエル議長はタカ派的発言
米連邦公開市場委員会(FOMC)は13日から14日にかけて開催した定例会合で、政策金利を0.5ポイント引き上げることを決めました。前回までは4会合連続で0.75ポイントの利上げをおこなってきましたが、今回はそのペースを減速させています。
今回の利上げで政策金利は4.25〜4.5%となりました。FOMC参加者の金利予測の中央値では、政策金利は来年末に5.1%、24年には4.1%に低下するとの見通しが示され、いずれも9月時点での予測から引き上げられています。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、FOMCの声明発表後の記者会見で、「なお幾分か道のりは残っている」と述べました。来年1月31日〜2月1日にかけて開かれる次回のFOMC会合での利上げ幅については、「今後入手するデータ次第だ」とも語っています。今後の利上げペースについては0.5ポイント継続と0.25ポイントへの減速両方の可能性が残ることになりました。
また、FOMCの声明には「委員会はインフレ率を時間とともに2%に戻すべく十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するためには、継続的な誘導目標レンジ引き上げが適切になると見込む」と記載されていました。市場が現在予想している2023年後半からの利下げについては、少々楽観的な見方であると言えるかもしれません。
FOMCの政策決定を受けてドル円は136円付近まで上昇を見せたものの、その後は135円台でもみ合う場面を見せました。
11月の米CPIは総合、コア共に市場予想を下回る
11月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比が予想7.3%上昇、結果が7.1%上昇と市場予想を下回りました。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIも前年同月比が予想6.1%上昇、結果が6%上昇とこちらも市場予想を下回っています。
コアCPIは前月比でも0.2%上昇と、過去1年余りで最も低い伸びにとどまりました。これはインフレのピークが過ぎた可能性が高いことを示唆していると言えるでしょう。
パウエル議長が最近、「物価見通しの判断に最も重要である可能性がある」と指摘したエネルギーサービスと家賃を除いたサービス価格についても、前月に続き鈍化して0.1%上昇にとどまりました。この結果を重視するのであれば、FRBは来年の早い時期に利上げ休止を検討する可能性がありそうです。
とはいえ、パウエル議長はインフレを当局目標である2%に戻すことへのコミットメントと見通しを巡る不確実性の両方をこれまで強調してきています。今回の結果を受けて、ハト派の当局者による一段の引き締めペース減速とその後の政策金利維持を主張する声が強まることが予想され、ブラックアウト(中央銀行の政策メンバーが政策決定会合の前後の時期に金融政策に関して踏み込んだ発言をおこなうことを禁じたルール)期間も終わったことで今後の要人発言に注目が集まります。
市場関係者は「私自身、来年2月にもう1回0.5ポイントの利上げがあると想定していたが、これからハト派の当局者は0.25ポイントを強く主張するだろう。今日の発表でハト派の論拠が強まったのは確実だ」と語りました。サマーズ元米財務長官は「自分が考えていたより現在の状態は良好だ。良い数字だと思う」と発言しました。また、予想されるリセッションについては「やや時間的に先送りされた様子だ」との見方を示しています。しかしながら、「リセッションが訪れれば、とりわけ労働市場の急激な悪化と株式市場の急落に政策担当者は向き合うことになるだろう」との見解を示しました。
ECBが0.5ポイント利上げ、大幅利上げは継続
欧州中央銀行(ECB)が0.5ポイントの利上げを発表しました。ECBのラガルド総裁はユーロ開始以来最悪のインフレの沈静化に向け、同様の利上げがしばらく続くと投資家に警告しています。
利上げ幅は市場予想と同じ0.5ポイントではありましたが、2回連続の0.75ポイントに続く今回の利上げで、政策金利は一気に2%まで上昇しました。ECBはさらに「大幅に金利を引き上げる」と表明しています。加えて、約5兆ユーロにも上る保有債券のポートフォリオ圧縮を来年3月に開始することも発表しました。
ラガルド総裁は「利用可能な情報にしたがうと、2月とおそらく3月にも0.5ポイントの利上げが示唆される」と述べています。