概要
- FOMC議事要旨は市場へのフラストレーションを示唆
- 議事要旨「正当な根拠のない金融状況の緩和は、物価安定を回復する委員会の取り組みを複雑化」
- 12月の米雇用統計は平均時給が市場予想を下回り、前回と比べて伸びが鈍化
- テクノロジーや不動産などでは労働市場の弱さが目立ち始めている
- 12月のユーロ圏CPI速報値は5か月ぶりに1桁台に低下
FOMC議事要旨、市場へのフラストレーションを示唆
米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が発表され、FRBが市場の予想よりタカ派的な姿勢であることが改めて示されました。市場は2023年後半の利下げを織り込んでおり、現在もそれは変わっていませんが、こうした市場の動きが「物価抑制に向けたFRBの取り組みを損なっている」というフラストレーションが議事要旨で示唆されていると言えます。
議事要旨には「正当な根拠のない金融状況の緩和は、特に委員会の対応に関する世間一般の誤解にもとづくものである場合、物価安定を回復する委員会の取り組みを複雑化させる」との認識を参加者が示したと記載されていました。市場関係者は「今年下期までに利下げがおこなわれる可能性を市場が織り込みつつあることが、FRBのこのメッセージにおける最大の懸念材料だ」と説明しています。さらに、「FRBは引き締め過ぎのリスクは受け入れて我慢しなければならないものだということを認識している」と語りました。
12月会合では政策金利は0.5ポイント引き上げとし、それまでの4会合連続での0.75ポイントからペースを減速させました。しかし、FRBのドットプロット(金利予測分布図)では2023年末の政策金利を5%と予測している人数が一番多く、市場予想の4.75%を上回っています。議事要旨ではFRBによる政策金利見通しが「市場が予想する軌道を著しく上回っている」ことを強調していました。
ドル円はFOMC議事要旨のタカ派的な内容に反応し、132円台後半まで上昇を見せています。
12月の米雇用統計は平均時給の伸びが鈍化
12月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想前月比20万3000人増、結果が22万3000人増となり、市場予想を上回りました。また、失業率は市場予想が3.7%、結果は50年ぶりの低水準となる3.5%となり、こちらも市場予想より強い結果となっています。平均時給は市場予想が前月比0.4%増、結果が0.3%増となり、市場予想を下回った上、前回の0.6%増と比べて伸びが鈍化しました。
今回の雇用統計では雇用者数が引き続き力強い伸びを示したものの、平均時給の伸びが鈍化しています。これはリセッション(景気後退)入りをする可能性を減らし、FRBに利上げペースを減速させる余地を与えたと言えそうです。
FRBはインフレ率を目標の2%に戻す上で、特にサービス業の賃金圧力が大きな障害になっているとみています。そのため、平均時給の伸びが鈍化したことはFRBに歓迎されることになるでしょう。
市場関係者は「12月の非農業部門の統計は、熱過ぎず冷た過ぎないゴルディロックス的(適温)な内容のようだ。労働力人口が増える中でも雇用が力強かったため、失業率を押し下げたが、賃金の伸びは鈍化した。労働市場の勢いは昨年末にかけて若干弱まったが、再び加速している可能性がある」との見解を示しました。
全般的に求人件数は高水準を維持していてレイオフ数は低いものの、テクノロジーや不動産などの一部のセクターでは労働市場の弱さが目立ち始めています。アマゾン・ドット・コムは従業員1万8000人強をレイオフする計画を明らかにし、不動産仲介会社コンパスも追加のレイオフを発表しました。
雇用統計で賃金の伸びが予想以上に鈍化し、ISM非製造業指数も弱い内容となったことから、米利上げペースがさらに減速するとの見方が強まり、ドル円は一時132円付近まで下落しています。
ユーロ圏CPIが5か月振りの1けた台に
12月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は市場予想が前年同月比9.5%上昇、結果が9.2%上昇となり、市場予想を下回りました。また、去年8月以来5か月ぶりに1桁台に低下しています。
今回の結果は、「ユーロ圏の過去最悪のインフレはピークを付けた」との期待を強めることになりました。しかしながら、エネルギーや食料品などの変動の大きい項目を除くコアCPIは前年同月比5.2%上昇と過去最高となっています。
エネルギーコストの伸びが鈍化したことがインフレを押し下げた唯一の要因となっており、積極的に利上げを進めている欧州中央銀行(ECB)は、コアCPIに注目する可能性が高いと見られます。
ECB政策委員会メンバーのセンテノ・ポルトガル銀行(中銀)総裁は、CPIの内容を「非常に前向き」と述べつつも、「さらなる利上げが必要だ」との認識を示しました。