米CPIは伸びの鈍化が続く、英GDPは予想外のプラス

FXマーケット分析2023年1月16日
目次

概要

  • 12月の米CPIは伸びの鈍化が継続された
  • FRBが利上げペースをさらに落とす余地が生まれたと言える
  • 11月の英GDPは予想外のプラス
  • 食品・飲料部門が、サッカーW杯効果で2.2%増加
  • 長期金利が日銀の許容上限を超え、一時0.545%まで上昇
  • 政策金利発表や黒田総裁の記者会見ではドル円の急落リスクに警戒

伸びの鈍化が続く米CPI、2月は利上げ減速か

12月の米消費者物価指数(CPI)が発表され、総合CPIは市場予想が前年同月比6.5%上昇、結果は同じになりました。また、コアCPIは市場予想が前年同月比5.7%上昇、こちらも結果は同じとなっています。総合CPIは2021年10月以降で最も低い伸びに、コアCPIは2021年12月以降で最も低い伸びになりました。

今回のCPIの結果からインフレ率の鈍化が続いていることは明らかであり、物価上昇圧力はすでにピークに達したのではないかと考えられます。FRBが次回1月31〜2月1日にかけて開催する連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げペースをさらに落とす余地が生まれたと言え、前回の0.5ポイントから0.25ポイントへの減速があるのかどうか注目されています。

市場関係者は「12月のCPIがおおむね良好な内容だったことから、FRBとしては次回のFOMC会合で利上げ幅をさらに縮小する余地が生まれる。我々はフェデラルファンド(FF)金利が3月に5%でピークに達し、年内は同水準で据え置かれると予想している」との認識を示しました。

ただし、住居費などサービス分野を中心に消費者の需要は根強く、労働市場も依然としてタイトであり、物価上昇圧力が続く可能性も考えておいた方がよいかもしれません。労働市場の需給不均衡は、賃金の伸びと消費を下支えしています。

ドル円はCPIの発表直後に下落し、一時は上昇したものの、結局下落を再開する荒っぽい動きが見られました。発表直後に130円の心理的な節目を下回り、数時間後には128円台を付けています。

11月の英GDPは予想外のプラスも厳しい見通し

英国の11月の国内総生産(GDP)は市場予想が前月比0.2%減、結果は0.1%増となり、昨年終盤に景気後退(リセッション)入りしていた可能性は低下しました。とはいえ、今年の景気見通しは明るくありません。

7〜9月(第3四半期)のGDPはマイナス成長であり、10〜12月(第4四半期)もマイナス成長となれば、景気後退に突入したことになります。欧州においては、実質GDP成長率が2四半期連続でマイナスになると「テクニカルリセッション入り」とされ、リセッションのサインとしてとらえられるからです。

英国立統計局(ONS)は「11月の英経済は小幅に成長した。通信・コンピュータープログラミングの増加が寄与した。ワールドカップの放映でパブ、バーも好調だった」としています。統計に修正がないと仮定した場合、第4四半期がマイナス成長となってテクニカルリセッション入りするには、12月のGDPが0.5%前後減少する必要があります。

11月のGDPを押し上げた主な要因はサービス業であり、鉄道・郵便のストライキがあったにもかかわらず0.2%増加しました。さらに、食品・飲料部門が、サッカーW杯効果で2.2%増加しています。

しかしながら、市場関係者は「英経済は11月にプラス成長となったものの、非常に厳しい1年となる見通しは変わらない」との見方を示しました。別の市場関係者は「今のところリセッションは回避する可能性がある。ただ12月はさまざまな業種のストライキがあり、景況感調査の結果も低調だった」と述べました。

11月のGDPはパンデミック前を0.3%下回っています。加えて、英国政府は11月に、2023年のGDPが1.4%減少するとの予想を示しました。

GDPの発表後、ポンドドルは1.22ドル台半ばまで上昇する場面が見られましたが、その後は下落しています。

長期金利が日銀の上限超え、政策修正観測

新発10年国債利回りが日本銀行の許容上限である0.5%を超え、一時0.545%まで上昇しました。17〜18日にかけて開催される日銀金融政策決定会合で金融政策を修正するとの観測が主な要因となりました。

市場関係者は「日銀がYCCの変動幅拡大や撤廃に踏み切っても、もはや0.5%は維持できないとの見方を市場は強めている」と語っています。昨年12月にサプライズの政策修正をおこなったことで、毎回の金融政策決定会合において政策変更を警戒せざるを得ない状況になっているようです。

18日の日銀の政策金利発表や黒田総裁の記者会見は、大きな注目を集めることになるでしょう。読売新聞社による「日銀が金融政策決定会合で大規模金融緩和の副作用を点検する」との観測報道もあったことから、サプライズによるドル円の急落リスクには警戒が必要です。

FXマーケット分析2023年1月16日

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