概要
- 日銀は金融政策決定会合で金融緩和策の現状維持を決定
- ドル円は128円台半ばから一時131円台まで上昇
- 日本の全国コアCPIが41年ぶりとなる4%台に
- 市場関係者は金融政策への影響について「一番鍵を握るのは賃金の上昇」
- ブレイナードFRB副議長「金利を高い状態でしばらく維持する必要がある」
- 市場では相変わらず今年後半の利下げが見込まれている
日銀が金融緩和策の現状維持を決定
日銀は金融政策決定会合で、長短金利を操作するイールドカーブコントロール(YCC)政策を軸とした大規模な金融緩和策の現状維持を決めました。ただし、日銀は金融調節の円滑化を図るため、国債などを担保に金融機関に低利で資金を貸し出す「共通担保資金供給オペ」を拡充します。
また、生鮮食品を除くコア消費者物価指数(CPI)の前年度比の上昇率の見通しは、2022年度が3.0%と従来の2.9%から上方修正されました。24年度のコアCPIの予想も前年度比1.8%と、1.6%から上方修正されています。
市場ではサプライズとなった昨年12月の政策修正に引き続き、長期金利の変動幅の再拡大やYCC政策の廃止など追加の政策修正があるのではないかという観測が浮上していました。日銀の決定を受けてドル円は上昇を見せ、128円台半ばから一時131円台まで円安が進んでいます。
市場関係者は「この決定を受けてイールドカーブのゆがみが修正されずに残れば、マーケットの利上げバイアスが継続することになる」との認識を示しました。加えて、「企業の決算期に当たる3月での政策変更をせずに、現在の政策を維持して次期総裁での体制にバトンタッチという可能性が高まった」と述べています。
日銀の黒田総裁は金融政策決定会合後の記者会見で「現行のYCC政策は存続が可能」とした上で、長期金利の変動幅のさらなる拡大には否定的な見解を示しました。物価の見通しについては「2%の物価安定目標の実現にはなお時間が必要」とし、「現段階では目標を持続的・安定的に達成できる状況は見通せない」との見方を示しています。
日本の全国コアCPIが41年ぶりの4%台に
昨年12月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は予想が前年同月比4.0%上昇、結果も4.0%上昇となり、第2次石油ショック時の1981年12月以来、41年ぶりとなる4%台に達しました。原材料の高騰や円安の影響で価格転嫁が進む食料の伸びが拡大した上、電気代や都市ガス代を中心にエネルギーも上昇したことが主因となっています。
日銀が物価安定目標に掲げる2%を上回るのは9カ月連続となり、日銀が物価の基調的な動きとして重視している生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは同3.0%上昇と1991年8月以来の高い伸びとなりました。一部の市場関係者からは「デフレを脱却したのではないか」とする声が出ています。
また、日銀の黒田東彦総裁は「2%の安定的・持続的達成が見通せる状況にない」としていますが、市場では4月の黒田総裁の任期満了後に発足する新体制もにらみ、今後政策修正をおこなうのではないかという見方も根強いです。市場関係者は金融政策への影響について、「一番鍵を握るのは賃金の上昇。それがサービス価格を中心に物価にどう反映されていくのかということに尽きる」との見解を示しています。
ブレイナードFRB副議長「高金利はしばらく必要」
米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長が、「インフレには減速の兆しが見られるがなお高過ぎる」とのタカ派的な認識を示しました。加えて、「これをさらに抑制するには金利を高い状態でしばらく維持する必要がある」としています。
1月31日から2月1日にかけて開催される次回の連邦公開市場委員会(FOMC)にて、利上げ幅を0.25ポイントに縮小するかについては言及されませんでした。加えて、政策金利が今年どこまで引き上げられるのかについても同じく言及していません。
ただし、12月のFOMCで利上げ幅がそれまでの0.75ポイントから0.50ポイントに減速したことについて、「政策金利は十分に抑制的な水準に近づいており、われわれの2大責務に関連したリスクを考慮すると、減速はより多くのデータを評価することを可能にする」と述べました。ここ数ヶ月間の米国の経済指標からは、インフレが減速しつつある様子がうかがわれます。
また、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁もブレイナード副議長と同じく、タカ派的な認識を示しています。ウィリアムズ総裁は「根強い物価圧力を抑制するための積極的な引き締め策はまだ完了していない」としています。ウィリアムズ総裁もFOMCでの利上げ幅や今年の政策金利がどこまで引き上げられるのかについては具体的に語っていません。
ブレイナード副議長やウィリアムズ総裁からタカ派的な発言が見られたものの、市場では相変わらず今年後半の利下げが見込まれています。