概要
- 12月の米PCEは総合、コア共に12月も減速
- サマーズ元米財務長官「次回FOMCでは0.25ポイントの利上げになる」
- 米GDPの第4四半期速報値は2.9%増となり、前期からはやや鈍化
- 個人消費の減速が急速に悪化した場合は、2023年中の利下げがあり得るか
- ラガルド総裁を始めとするECB関係者のタカ派的な発言が相次いだ
- エコノミストの予想ではECBは今年5月まで利上げ継続
米PCEが12月も減速、0.25ポイント利上げ観測を後押し
昨年12月の米個人消費支出(PCE)は市場予想が前年同月比5%上昇、結果も5%上昇となり、市場予想と結果が一致しました。11月の結果は5.5%上昇であり、減速が続いています。
また、食品とエネルギーを除くコアPCEは市場予想が前年同月比4.4%上昇、結果も4.4%上昇となり、こちらも市場予想と結果が一致しました。11月の結果は4.7%上昇であり、12月も減速が継続しています。
総合とコア共に前年同月比ベースで一段と鈍化し、過去1年余りで最も低い伸びとなりました。今回の結果は米連邦準備制度理事会(FRB)が次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げペースをさらに減速させるとの見通しを後押しするものになっています。
FRBのパウエル議長はコアPCEについて、「インフレの動向を測る上でより正確な指標だ」と公言しており、FRBが利上げ幅を決める上で重視している指標です。さらに、PCEの他に消費者物価指数(CPI)も鈍化し続けています。
サマーズ元米財務長官は、「次回のFOMCでは政策金利が0.25ポイントの利上げになる」との見解を示しました。ただし、市場関係者は「12月のPCEデフレーター(名目PCEを実質PCEで割ったもの、物価上昇圧力を測る尺度)は表面的には弱い数字だが、家賃を除くコアのサービス分野のインフレは依然として極めて高水準だ。」と指摘しています。加えて、「持続性あるインフレ要素が鈍化しているとの証拠がなく、議長は金利をより高い水準でより長くとどめるとのタカ派的メッセージを維持するだろう」と述べました。
米GDPの第4四半期速報値は2.9%増、前期からは鈍化
昨年10〜12月(第4四半期)の米実質国内総生産(GDP)速報値は市場予想が前期比年率2.6%増、結果が2.9%増となり、結果が市場予想を上回りました。しかし、7〜9月(第3四半期)の3.2%増からはやや鈍化しています。
米経済の最大部分を占める個人消費は市場予想が2.9%増、結果が2.1%増となり、結果が市場予想を下回りました。7〜9月は2.3%増であり、今回の結果は減速が見られます。
市場関係者は「 米経済の屋台骨である消費者の動向を見ると、失速が明らかだ」と説明しました。さらに、「消費者が満足し健全でないと、単純にプラス成長は維持できない」とし、「昨年末のような力強い成長はなおさらだ」と述べています。
別の市場関係者は「第4四半期はサービス分野の個人消費が力強い成長を導いたが、良いニュースはそこまでだ。」とし、「純輸出と在庫、政府支出など振れが大きい要因を除いた基調的な経済活動を示す2つの指標は、かなりの景気減速を示唆している」と説明しました。エコノミストの予想の多くは、米経済が第2、第3四半期に縮小するといったものになっており、年内にリセッション入りするかに今後注目が集まりそうです。
利上げによる借入コストの上昇が生活に影響を及ぼし始めるまでには通常数カ月かかると言われ、FRBの利上げは今年家計に大きな影響を与えると考えられます。複数の要人が「インフレに打ち勝つまで年内は高金利の維持が必要」との認識を示していますが、もし個人消費の減速が急速に悪化した場合、2023年中の利下げがあり得るかもしれません。
ECB関係者の利上げに関するタカ派的な発言相次ぐ
欧州中央銀行(ECB)関係者の利上げに関するタカ派的な発言が相次いでいます。ECBのラガルド総裁が「インフレを目標に戻すためにあらゆる必要な行動を取る」とし、「向こう数回の会合で大幅な利上げがさらにあること」を示唆しました。
「2%を超えるインフレ率が経済に定着しないようにすることが重要だ」との認識も示していますが、ユーロ圏の12月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比9.2%上昇であり、まだまだ長い道のりになりそうです。
また、政策委員会メンバーのカジミール・スロバキア中銀総裁も、「今後2回の政策決定で0.5ポイントずつの利上げを支持する」としています。加えて、ナーゲル・ドイツ連邦銀行総裁が「インフレを抑え込まなければならない。われわれの仕事はまだ終わっていない」と述べました。
エコノミストの予想では今年5月まで利上げが続き、その後約1年にわたって政策金利を据え置き、景気悪化にともなって2024年6月から0.25ポイントの利下げが続くという見通しになっています。