概要
- 米国の政策金利の引き上げ幅が減速し、0.25ポイントに
- パウエル議長「あと2回程度の利上げで景気抑制的と考えられる適切な水準に達するだろう」
- 米国の非農業部門雇用者数が予想を大きく上回る結果に
- 賃金の強い伸びが維持され、さらなるインフレ率上昇につながる可能性
- ユーロ圏の政策金利は0.5ポイントの引き上げを継続、3月も0.5ポイントの意向
- 政策金利は2.5%となり、2008年以来となる15年ぶりの高水準
米国の政策金利の引き上げ幅が0.25ポイントに減速
米連邦公開市場委員会(FOMC)は1月31日から2月1日にかけて開催した定例会合で、政策金利を0.25ポイント引き上げることを決めました。インフレ抑制に向けて政策金利を上げ続けていますが、今回はそのペースを減速させています。しかし、「今後さらに複数回の利上げが適切になる」との見方も示しました。
FOMCでは4会合連続で政策金利を0.75ポイント引き上げた後、昨年12月の会合では0.5ポイント引き上げています。今回の利上げで政策金利の誘導目標レンジは4.5〜4.75%となり、昨年1月の政策金利である0〜0.25%から4.5%もの利上げを急ピッチでおこなったことになります。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、FOMC声明発表後の記者会見で「われわれは大きく進展したと考えている」と語りました。しかしながら、「それでも、さらなる仕事が残されている」とも述べています。
FOMCが会合後に発表した声明では、「継続的な誘導目標レンジ引き上げが適切になると見込む」としつつ、「利上げサイクルの終了が視野に入っている可能性がある」ということも示唆しています。記者会見でパウエル議長は「これまで金利を4.5ポイント引き上げてきた。あと2回程度の利上げで景気抑制的と考えられる適切な水準に達するだろう」との見解を示しました。
ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツ創業者のレイ・ダリオ氏は金利の方向性について、「金融緩和はないだろうと考える。これは恐らく最も容易で、安全な賭けの一つだろう。それが起こることはない」と語っています。しかしながら、市場は依然として今年後半の利下げを予想しており、現在0.5ポイントの利下げが見込まれている状況です。
FOMCでドル円は上昇して一時129円台後半を付けたものの、パウエル議長の記者会見が警戒された以上にタカ派的とはならなかったことで128円台半ばまで下落しました。
米雇用者数が予想を大きく上回る51.7万人増に
米国の1月の雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数は市場予想が前月比18万8000人増、結果が51万7000人増となり、予想を大きく上回る結果になりました。失業率は市場予想が3.6%、結果が3.4%とこちらも強さを見せています。
平均時給も市場予想が前年同月比4.3%、結果が4.4%となり、特に失業率は1969年5月以来となる53年ぶりの低水準です。今回の結果を受け、FRBに対する利上げ継続を求める圧力が強まっています。ただし、家計調査のデータには人口統計の年次更新が反映されているため、失業率の数字が前月と直接比較できない点は注意が必要です。
今回の雇用統計では金利の上昇による借り入れコストの上昇や消費需要の後退、景気見通しに対する全体的な不透明感にも関わらず、雇用の力強さが保たれていることが示されました。労働力の需要が引き続き供給を上回ることで、賃金の強い伸びが維持され、さらなるインフレ率上昇につながる可能性があります。
市場関係者は「驚異的に強い雇用統計のために、リセッション不安とこの春にも利上げサイクルが終了するとの見方は実に疑わしくなった」との見方を示しました。ドル円は雇用統計の結果を受けて128円台半ばから130円台前半まで上昇、その後も上昇して131円台前半で取引を終えています。
ユーロ圏の政策金利は0.5ポイント引き上げ、3月も0.5ポイントの意向
欧州中央銀行(ECB)が政策金利の0.5ポイント引き上げを発表し、さらに3月も0.5ポイントの利上げを続ける意向を示しました。その後はインフレを抑え込むためにどこまでの利上げが必要かを検証するとしています。
ECBは市場の予想通り0.5ポイントの利上げを決定し、これで政策金利は2.5%となりました。政策金利は2008年以来となる15年ぶりの高水準です。しかしながら、「ECBの歴史で最も積極的な利上げサイクルはまだ終わっていない」としています。
政策委員会は声明で、「次回3月の政策決定会合で再び0.5ポイントの利上げを実施する意向」だとし、利上げの継続を実質的に確定しました。ラガルド総裁は「非常に極端な展開以外で、3月の0.5ポイント利上げが起こらないシナリオというのは考えられない」と述べています。