次期日銀総裁がYCCの見直しに言及、米PCEは市場予想を上回る

FXマーケット分析2023年2月27日
目次

概要

  • 次期日銀総裁植田氏「基調的な物価見通しの改善が進めば、YCC政策の正常化が必要」
  • 市場関係者「中立的な発言は今のボラティリティーが過ぎ去れば、円の下落トレンドが再開する可能性をうかがわせる」
  • 米1月PCEは市場予想を上回る伸びを見せた
  • メスター総裁「インフレ率押し下げに向け、FRBは政策金利を巡りもう少し行動する必要があるという事実と合致」
  • ユーロ圏の1月CPI改定値はコア指数が過去最高に
  • ナーゲル独連銀総裁「ECBは3月以降も大幅な利上げが必要になる可能性がある」

植田次期日銀総裁がYCC政策の見直しに言及

次期日銀総裁で経済学者の植田和男元審議委員が、衆院議院運営委員会で所信聴取と質疑に応じました。植田氏は「基調的な物価見通しの改善が進めば、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の正常化が必要になる」との見方を示しています。

今後の政策展開については経済や物価情勢次第とし、特に物価の基調的な動きを重視している姿勢を鮮明にしました。足元の金融政策運営は現在の政策継続が望ましいとしつつ、YCC政策の見直しについても言及しています。

現行の日銀の大規模金融緩和は2%の物価安定目標の実現に「必要かつ適切な手法」とし、「今後とも情報、情勢に応じて工夫を凝らしながら、金融緩和を継続することが適切」との認識を示しました。日本の1月全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除くコアCPIが前年同月比4.2%と約40年ぶりの水準にまで達していますが、「輸入物価上昇によるコストプッシュが主因であり、来年度半ばにかけて2%を下回る水準に低下していく」と述べました。

世界的なインフレ率上昇を受け、米連邦準備制度理事会(FRB)などの主要中央銀行は昨年から金融緩和から引き締めに転じており、日銀はマイナス金利政策とYCC政策を続ける唯一の主要中央銀行になっています。市場関係者は「市場のタカ派観測に反する中立的な発言は、世界的な利回り上昇と相まって、今のボラティリティーが過ぎ去れば、円の下落トレンドが再開する可能性をうかがわせる。」と語りました。

米PCEが市場予想を上回る伸びに

FRBがインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)は、1月分が総合指数および食品とエネルギーを除くコア指数共に市場予想を上回る伸びとなりました。消費者物価指数(CPI)だけでなくPCEも結果が市場予想を上回ったことで、FRBに対する利上げ継続の圧力が増すことになりそうです。

PCE総合指数は市場予想が前年同月比5%上昇、結果が5.4%上昇となり、結果が市場予想を大きく上回りました。コア指数は市場予想が前年同月比4.3%上昇、結果が4.7%上昇となり、こちらも結果が市場予想を上回っています。

昨年11、12月は伸びが鈍化していましたが、今回は加速することになりました。個人消費の底堅さと労働市場の異例の強さが重なり、FRBの目標であるインフレ率2%の達成は一段と困難になりそうです。

クリーブランド連銀のメスター総裁は今回の結果について、「インフレ率押し下げに向け、FRBは政策金利を巡りもう少し行動する必要があるという事実と合致するものだ」との認識を示しました。市場関係者は「サプライチェーンのボトルネックがほぼ解消されたことで、最近のインフレは需要主導型となっている。この傾向が続けば、FRBは5.25%を超える水準への利上げを余儀なくされるかもしれない」と述べています。現在、市場では利上げのピークが5.25〜5.5%、年内は利下げ無しと予想されています。

ユーロ圏のコアインフレ率が過去最高に

ユーロ圏の1月消費者物価指数(CPI)改定値は市場予想が前年同月比8.6%上昇、結果も8.6%上昇と同じになりました。しかしながら、コア指数は市場予想が前年同月比5.2%上昇、結果は5.3%上昇となり、過去最高に達しています。

欧州中央銀行(ECB)は来月に0.5ポイントの追加利上げをおこなう意向を示していますが、今回のCPIの結果からほぼ確実になったと言えそうです。ドイツのCPIが、速報値で使用した推計値を上回ったことが大きな要因になりました。

ECB理事会メンバーのナーゲル独連銀総裁は、「インフレ率、特に基調的な物価上昇率が高すぎると」とした上で、「ECBは3月以降も大幅な利上げが必要になる可能性がある」との見解を示しています。ECB理事会には「中銀預金金利は既に景気を抑制する水準に達している」とするビルロワドガロー・仏銀(中銀)総裁のようなハト派のメンバーもいます。

とはいえ、今回の結果はロシアのウクライナ侵攻が引き起こしたエネルギー高による深刻な物価上昇がまだ続いていることを示しており、タカ派メンバーの立場がいっそう強まりそうです。

FXマーケット分析2023年2月27日

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