概要
- 2月のISM非製造業景況指数は、新規受注の指数が21年11月以来の高水準に
- 雇用の指数も1年超ぶりの高水準
- ユーロ圏のコアCPIが、また過去最高を更新
- ラガルド総裁「3月の利上げは必要であり、極めて可能性が高い」
- 2月の東京都区部のコアCPIは、大幅に伸びが鈍化
- エネルギーの伸びが前月から大きく鈍化したことが大きな要因に
ISM非製造業景況指数は需要の強さを示す
2月の米ISM非製造業景況指数は市場予想が54.5、結果は55.1となり、結果が市場予想を上回りました。1月の55.2からはわずかに低下しているものの、1月は2020年半ば以来の大幅上昇となっていたため、「弱い結果」としてとらえる必要はないでしょう。
2月は新規受注の指数が1月の結果から2ポイント余り上昇して62.6となっており、これは21年11月以来の高水準であり、米経済の需要の強さを示しています。雇用の指数も4ポイント上昇の54となっていて、1年超ぶりの高水準です。
ISM非製造業景況調査委員会のアンソニー・ニエベス委員長は、「業況については総じて前向きであることが示された」としています。仕入れ価格指数は65.6に減速したものの、製造業の仕入れ価格指数と比べて大幅に高い水準であり、インフレ圧力が依然として強いことが分かります。
製造業の仕入れ価格指数は51.3と2か月連続で上昇し、昨年9月以降初めて拡大と縮小の境目を示す50を上回ってコスト上昇を示しました。製造業景況指数の市場予想は48.0、結果が47.7となり、こちらは結果が市場予想を下回っています。
非製造業景況指数の強い結果については、「利上げの影響が景気に表れるのは遅くなる傾向があるためだ」との見方もあります。ただし、足元の雇用関連指標では労働市場の強さが示唆され、米連邦準備制度理事会(FRB)への金融引き締め圧力は継続されそうです。
市場は現在、政策金利のピークを5.25〜5.5%、2024年3月にようやく0.25%の利下げがあると見込んでいます。
ユーロ圏のコアインフレ率がまた過去最高を更新
2月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は欧州中央銀行(ECB)が注目するコアが前年同月比で市場予想5.3%、結果が5.6%となり、結果が市場予想を上回りました。前月の5.3%からさらに加速し、過去最高をまた更新しています。
総合は前年同月比で市場予想が8.3%、結果は8.5%となり、こちらも結果が市場予想を上回りました。前月の8.6%からはわずかに低下しています。総合は前月より低下したものの、コアが過去最高をまた更新してしまったことで、「ECBはさらに高い水準へ金利を引き上げる」との観測が強まることになりました。
ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇は、暖冬のおかげで2月も緩和していますが、ECBが注目しているのは、変動の大きいエネルギーなどを除いたコアCPIです。ECBが3月に0.5ポイントの利上げをおこなうのは、ほぼ確実と言える状況になっています。
2月の政策委員会の議事要旨でも、「『引き締め過ぎ』の懸念は時期尚早だという感覚が広くあった」との見解が示されています。ECBのラガルド総裁も今月、「3月の利上げは必要であり、極めて可能性が高い」とした上で、「ユーロ圏のインフレ率を2%に戻すためにECBは必要なあらゆる措置を取る」と述べました。
今後もインフレ率の上昇が続き、ECBが大幅な利上げを継続する見通しが強まれば、ユーロ買いの動きにつながりそうです。
東京都区部コアCPIの伸びが大きく鈍化
全国の物価の先行指標となる、2月の東京都区部の生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)は市場予想が前年同月比3.3%上昇、結果も3.3%上昇と同じになりました。前月の4.3%上昇から大幅に伸びが鈍化しています。
1%という下げ幅は、消費増税の影響がはく落した2015年4月以来8年ぶりとなる大きさです。コアCPIの前年同月比上昇率が前月を下回るのは、実に13か月ぶりのことになります。
エネルギー価格高騰に対する政府支援策の効果が表れ、エネルギーは前月の26%上昇から5.3%上昇まで大きく下げました。ただし、生鮮食品を除く食料は前月の7.4%上昇から7.8%上昇となり、46年6カ月ぶりの高水準となっています。
生鮮食品を除く食料とエネルギーを除いたコアコアCPIは、前月の3.0%上昇から3.2%上昇となり、こちらも伸びが加速しました。次期日銀総裁の植田氏は、「現在の物価上昇はコストプッシュが主因で、2%の物価目標の達成には時間を要する」としています。
東京都区部のCPIは全国のCPIの先行指標になるため、2月の全国コアCPIは大幅に伸びが減速すると予想されます。しかしながら、日銀が物価の基調的な動きとして重視しているのはコアコアCPIであり、こちらも注視すべきでしょう。